第七話 古代竜族、お宝と祝福と新たなトラブル
怒涛の連続投稿最終回、お楽しみください。
「ほえーこのダンジョンを攻略する男の人が出ちゃいましたかぁ……それに人が来るのは数百年ぶりですねぇ」
そう言いながら近づいてくるのはブレザーのような服を着た茶色がかった髪でショートボブカットの15~6歳の女の子だった。
「えっとあなたは誰なのですか? そこの壁が開いて出てきたように見えたんですけど……」
恐る恐る聞いてみると、女の子はにっこりとした笑顔になりあっさり自己紹介をしてくれた。
「はい! 私はこのダンジョンを運営・管理をしている古代竜族のアリシアと言います。よろしくおねがいしますね! それで……もしよければ踏破者さんのお名前を聞かせてもらえますか?」
気になるワードがあったが、割りと元気な子だった。自己紹介を求められたので簡潔に行う。
「俺はヨシヒサ、年は18で実戦訓練のためにこのダンジョンに来てた。それとこちらはリース・フォン・アステリア第二王女殿下と護衛の近衛騎士の方々」
事前にリースと近衛騎士の人には身分を明かすことを許可してもらっているのでスラスラと話す。
「第二王女……もしかしてヨシヒサさんは王子様? それとも騎士様?」
まぁ、普通ならさっきの説明で王子か護衛の騎士と勘違いするだろう。
だが、あまり本来の身分である異世界から召喚されたこと、成り損ない勇者ということはあまり公にはしたくない。とういことで嘘をつくことにした。
「いや、俺はただの雇われの護衛さ。王女殿下に見込まれて護衛のお仕事をさせていただいているのさ」
よくもまぁ、こんな嘘っぱちのことがスラスラと言えたもんである。自分でも時々ゾッとする。
一方アリシアさん? は笑顔だがあの目は絶対信じていない目だ。確実にバレたか感づいている。
「それではヨシヒサさん。踏破成功ボーナスとしてあなたのその腰と背中にあるナイフ二振りにドラゴンの祝福を与えさせてもらいますね。あ、他にも世界中から集めた宝石や何百年も貯めこんできた金貨や銀貨、白金貨に黒金貨、白黒金貨などがザックザクあるので全部持って行ってくださいね! あと私はアリシアと呼んでください!」
取り敢えずもらえるものはもらっておこう思考で腰と背中のナイフを出してアリシアに手渡す。
アリシアはナイフの先で少し親指を刺して刃の部分に血を垂らすと、一瞬CKSURGが青色に、ニムラバスが赤色に光った。
儀式を終えたアリシアはとても驚いた顔で刃の部分を何度も見返していた。だが、刃の部分は相変わらず反射防止のために為に貼られた皮膜の色のグレーだ。
「どうしたんですか? そんなに見つめて……」
「ああ、いえ……私はドラゴンの祝福を与えたつもりなのですが、どうやら竜神様と女神様が祝福を与えてしまったようです。つまり……ドラゴンも倒せる力と魔王や神でさえ倒せてしまう力がこのナイフに宿ってしまったみたいですね……一体あなたは何者なのですか?」
えーとつまりは、俗にいう聖剣(神すら殺せる性能)とドラゴンスレイヤーみたいな性能が備わったナイフができたわけ? なにそれ怖い。あの女神様は一体何を考えてるんだ……。
「ありがとうございます。正体は後ほどということで」
お礼を述べて適当にごまかし、アリシア先導のもと、ご褒美のお宝回収タイムに入った。
結果から言うと、今回の収穫は莫大だった。
内容はまず銅貨・大銅貨は5000枚、銀貨・大銀貨3200枚、金貨1500枚、白金貨が1200枚、黄金貨250枚、黒金貨と白黒金貨合わせて1000枚とそれから名前の分からない宝石や金属の延べ棒が無数に、しかも中にはオリハルコンやヒヒイロカネといったレア物も含んでいた。
多分、鍛冶屋さんが見たら卒倒ものだろう。
あとはゴーレムと各階層の守護者から回収した人間の頭サイズの魔鉱石と雑魚の小さな魔鉱石が多数。
ゴーレムの魔鉱石は粉々になったはずだがいつの間にか足元に転がっていた。ダンジョンは不思議でいっぱいだ。
リースたちはさっきから黙って頭を抱えている。それそうだろう、国家予算数十年分の財貨が目の前に溢れだしもすれば誰でもそうなる。
もっとも、リースや近衛騎士の人達にも分配しようとしたが全員に拒否されたため仕方がなくインベントリに全て放り込んだ。
「さて、アリシアさん。祝福とこれだけの財貨・財宝をいただきありがとうございました。ではそろそろ我々はこの辺でお暇を」
「あ、待ってくださいヨシヒサさん。最後に大事なお話がありますので……」
いかん、更なる厄介ごとやトラブルの香りがぷんぷんとしてきたぞ。
「えとですね、私達ドラゴン……特に古代竜族は強い者と婚姻を結ぶことが義務付けられているのです。特に私はダンジョンの運営・管理を任されているので強い者、つまりダンジョン踏破者の男性と婚姻を結ぶ必要があるのです」
これはまずい……非常にマズイ。
つまりダンジョンを踏破した人間が男だった場合この子はそいつと婚姻を結ばなければいけない……そして今回の場合男は俺しか居ないので対象は俺だ。
しかも恐らく拒否権はない。それだけなら説得の余地はあるが後ろに立つ王女様がとてつもなく凍えるような視線を俺に向けてきている。
「それで、ヨシヒサさんは受けるのですか? その婚姻の申し込みを」
ああ……言葉まで氷点下を下回っていらっしゃる。
しかも軽く剣の柄に手をかけながら近づいてくるもんだから更に怖い。
「残念ね、彼は私のものです。例え古代竜族でもこれだけは譲ることはできません」
このお姫様、初っ端から喧嘩腰である。
と言うか腕にしがみついた状態で睨み合うのはやめてほしい。アリシアもさっきとは違い殺気がこもった目になり無言でリースを睨み始める。
これは大変心臓によろしくない。本当に。
「二人共落ち着けよ……取り敢えずお茶でも飲んで―」
最後の言葉を言う前に背後の扉が突然開いた。そこから出てきたのは豪奢な白銀の重鎧を着込んだイケメン君と見知った顔数十人に護衛の近衛騎士、後ろの方に軽鎧を着たラシエルも見えた。
「……君がこれをやったのかい?」
仰向けに倒れた首なしゴーレムくんの残骸(サイズ的に消えるのには時間がかかるらしい)とホコリまみれになった俺達を交互に見て確認を取ってきた。
隠す必要もないので正直に話すとしよう。
「そうだ。だが、俺だけじゃなくリース王女殿下と近衛騎士の方々の助力があって倒せた。俺一人の力じゃないさ」
それを告げると勇者組はざわわっと騒がしくなり中にはアリシアの方を指してヒソヒソ話をする奴も居る。
「なるほど、ではそこにいる女の子は誰かな?もしかしてダンジョン内でパーティーメンバーとはぐれたのかい? もしよければ僕達が地上の入り口まで送っていこう」
おーおー、イケメン君よ。頑張って悩殺爽やかボイスと顔でアリシアに手を差し出してるけど本人は冷ややかな目と笑顔でお断りの雰囲気を出してるぞー。
因みにリースとリースを護衛する近衛騎士の人達も顔をしかめるか興味のないと言った風で自身の剣や鎧に不備がないかチェックしている。
しつこく手を差し出し、一緒に行こうと説得と言うかナンパの口上を続けるイケメン君、対してアリシアは笑顔無口で動かない。
説得内容が俺の罵倒になり始めた頃にアリシアは動いた。
「せっかくのお誘いですがお断りさせていただきます。私はヨシヒサさんと共に行くことを決めましたので。改めてお断りさせていただきます。それに……あなたは私の好みではないのですもの」
「なっ……」
はっきり言うなぁこのお嬢様は……。
しかし、イケメン君は普段ならばどんな女性もイチコロの爽やかフェイスと声で攻めてみたものの、あっさりお断りされたことが受け入れられないようで絶句したまま固まっている。
「なっ、何を言っているんだ君は! 君はその男に騙されているんだぞ! そいつは畜生以下の屑野郎なんだぞ!」
畜生以下はひどくない? 屑野郎の部分は若干自覚あるけどさ。
そこで更にこの場で怒らせたら一番不味い人筆頭の我らがリース王女が目を細め、剣の柄に手をかけようとしたその時、リースの足元に青紫の魔法陣が展開された。
俺は直感的にヤバイ! と感じてリースを突き飛ばして身代わりになろうとした。
団長のおっさんとの約束もあるしな。
だが、肝心のリースはあろうことか突き飛ばした腕にしがみついて一緒に魔法陣の中に入ってしまった。
しかも、何故かアリシアまでしれっと俺の側にいる。誰が魔法陣を起動させたのか勇者組の方を見ると最前列の右側にいたブクブクに太った体重150kg位ありそうな近衛騎士が笑い始めた。
「あっはははははは! 無様ですな王女殿下! それに出来損ない!貴様らはあの方の計画の邪魔なのでここで死んでいただきますよ。しかし、こんなにも簡単に始末できるとは考えても見ませんでしたよ!」
堂々とした自白をどうもありがとう。
すでに仕掛け人の豚騎士はリースの近衛騎士の人達に拘束され、縛り上げられていた。俺も加わろうとしたが足が縫い付けられたように動かない。
「それは囚人輸送用の転移魔法、転移先はランダムに設定しているから発動まで動けないし消耗しているあなた達では転移先でも生き残れないでしょうなぁ! これは愉快だ!! あっはははぐげぇっ!?」
舐めたマネしてくれちゃってまぁ……腕も動かないのでタブレットも取り出せない。どん詰まりだな。そうこうしている間にも魔法陣の輝きは強くなっていく。
「……っ! このブタ野郎! さっさとヨシヒサと姫殿下と女の子を解放しなさい!」
豚騎士の笑い声が途切れたので視線を戻すとラシエルが俺があげた爪先にに鉄板が入っているコンバットブーツで豚騎士を罵りながら腹に数発蹴りを入れていた。正直アレは痛そうだ・・・。
「グフフフ……あれは発動すれば解除コードを唱えなければ解除は不可能、そしてそのコードは私には知らされていないのだ! 無駄だ! ぐげぇぇぇぇ!?」
ラシエルの渾身の蹴りが豚騎士の腹部に命中、そして白目をむいて転がる。あ、あれは完全に落ちたな。
「大丈夫だ! 王女殿下は俺がしっかり守るし俺自身もこんなところで死ぬつもりはないから安心しろ! 転移先が海でもなきゃ街を見つけて連絡する!」
駆け寄ってくるラシエルが手を伸ばすが届くその寸前に更に一層輝きが強くなった魔法陣の魔法が発動した。
そして魔法陣の中にいた俺達三人の意識は真っ白に染まった。
さて、いかがだったでしょうか。いやぁ、ヨシヒサ君はモテモテですねぇ・・・私としてはかなり羨ましいですよ。そして哀れイケメン君・・・。
そして、ここでお知らせです。この話をもって現在書き溜めていた分は全て投稿したことになりました。怒涛の連続投稿でしたが楽しんでいただけましたか?
これにて始まりの物語は終了となります。次章からパーティーアトラスの本格的な冒険は始まります。ご期待ください!
次回の更新は未定ですが、なるべく早く投稿できるように、そして読者の方々に面白い!と思ってもらうために頑張りたいと思います。
追記 ナイフを一部変更しました
※1/18 黄金貨を追加しました
※2/13 指摘を受け一部セリフを変更しました




