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成り損ない勇者の異世界銃奏乱舞  作者: ディンキー
第四章
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番外編 魔法ギルド、パーティー登録

初の番外編です。

「それではパーティーとそちらの方の登録を行いますので少々お待ち下さい」


 受付のお姉さんはそう言うとカウンターの奥にある机の方へ行ってしまった。パーティー登録……パーティー登録……なんか引っかかるな……なんだろ?


「ヨシヒサ様、本当によろしいのですか?」


 ナタリア王女がそう聞いてくるが俺としてはまぁ、いつかやろうと思っていたことだし問題はない。ルミナさんにバレたら少々怖いが。


「別に大丈夫ですよ。気にしないでください」

「そうですか……ありがとうございます」

「ナタリアー!こっちに来てー!」


 うちのお嬢様方ともすっかり仲良くなったナタリア王女がラシエルたちの方へ駆けて行くのを見送り、俺はスマホモードの端末に表示されているインベントリの収納リストをスクロールする。便利なことにこのリストはカテゴリー分けをされていて画面とにらめっこしないで済む。


 少し下にスクロールをしていると書類関係の分類に入った。入っているのはアステリアの王城いた時に書き写しておいたいろんな国の文化をまとめた紙の束やリース達の身分を保証する国王直筆のサイン入り保証書、俺達が散々な目に遭いメルダと出会うきかっけになった誘拐事件に関する王立軍情報部の報告書と懐かしきギルノディアの一時滞在許可書などがある。


 更に下へ下へとスクロールすると"ギルド"と題されたタブがあった。そこをタップするとなんと、パーティー登録の申請書が出てきたのだ。それを見ると同時に頭の片隅に引っかかっていたことが解け、取り敢えずはすっきりした。


「あのーすいませーん」

「はーい」


 奥に行っていた受付のお姉さんが来たのでインベントリから取り出した申請書をお姉さんに見せる。


「どうやら前に冒険者ギルドの方で申請を書いていたようなんですがこれで登録は可能ですか?」


 申請書を受け取ったお姉さんは目をものすごい速さで左右に動かしチェックをする。


「そうですね、現状は仮登録のままなのでこちらで登録は可能です。新しいメンバーの方が加入しているのでしたら名前欄に書き加えて再度提出をしてください」

「分かりました。ありがとうございます」


 お姉さんから返してもらった申請書を受け取り、ラシエル達を呼ぶ。


「ラシエル、エレノア、メルダ、ナタリア様。ちょっとこっちに来てください!」


 俺が呼ぶとすぐに四人はやって来た。


「どうしたのヨシヒサ?」

「えーとだな呼んだのはこれに名前を書いて欲しいんだよ。ナタリア様はこっちの紙にもお願いします」

「はい」

「えーと、なになに……パーティー登録ね。フルネームで良いのかしら?」

「ああ。もし嫌なら偽名とか一部だけでも構わないそうだ」


 そう言うと四人は羽ペンをインクに浸してさらさらと欄に名前を書いてしまう。


「これでいいのかしら?」

「んー……大丈夫だと思う。取り敢えず出してくる。あ、ナタリア様は個人の方の登録もするので一緒に来てください」

「分かりました」


 再びカウンターに向かい受付のお姉さんにパーティー登録の申請書とギルドメンバーの登録申請の書類を渡すとまたすごい速さで書類を精査していく。さすがプロだ。


「パーティー登録の申請書は問題ありません。続いてメンバー登録の書類ですが……えっ?」


 ナタリア王女の書いたメンバー登録申請書を精査していたお姉さんはピシリッと固まり、同じ部分を何度も見返してからナタリア王女の顔と書類を行ったり来たりさせている。


「えと……何か不備でも……?」

「えええっとですね……大変失礼ですが、そちらのお方の名前はナタリア・ムルト・ファムデル様で合っていますでしょうか……?」


 何故かナタリア王女の名前を脂汗を浮かべ真っ青な顔で聞き返してくるお姉さんに疑問を浮かべつつナタリアはしっかりと答える。


「ええ、そうですよ。私はナタリア・ムルト・ファムデルです」

「ヒェッ!?」


 普通、王族はギルドなどには登録などはしない。当然ながらギルド職員である前に帝国臣民である受付のお姉さんは目の前に皇族がいるこでとっても慌てていた。だが、そこは長年魔法ギルドというある意味冒険者ギルドよりも濃く奇抜な人間が集まる職場で受付係を務めていた彼女は直ぐ様スイッチを切り替え王女だろうとプロとして失礼のないように対応し始めた。


「申し訳ありません。では、このままでご登録させて頂いも構いませんか?」

「ええ、お願いします」


 内心ではなんでこんなところに王女殿下が来ているのだとかなんで今日に限って私なの!?とか色々思いつつもマニュアルにそって登録用の魔道具に個人用の申請書とパーティー登録申請を通し、紫色の特殊な金属で出来たプレートタイプのギルドカードに情報を打ち込む。


 魔法ギルドでは個人登録の時とパーティー登録の際には登録者本人とリーダーとなる人物の魔力紋を登録させる必要があるので登録用水晶を机の下から取り出し台座の下にある石版にカードを挿入する。


「では先にナタリア様から登録させていただきますのでこちらの水晶に両手を置いて少し強めに魔力を流し込んでください」

「分かりました」


 ナタリア王女が透明な水晶に両手を置くと水晶の中が青く光り渦を巻き始めた。これが魔力紋というものらしい。魔法ギルドにおいてあったパンフレットによれば魔力紋は個人個人で違い、同じ形のものはないらしい。くいわば魔力の指紋といったところか。実際、鍵型の魔道具を使うときや犯罪捜査ではよく使われるらしい。


「はい、結構です。ギルドカードに魔力紋を登録しましたので紛失した際には不正使用を防ぐための処理と再発行をしますのですぐに魔法ギルドに来てください。ただし、再発行には金貨3枚が必要なのでなくさないように注意してください」


 実はこの魔力紋の登録は魔力量の検査も兼ねていて、水晶をろくに光らせなかった場合は登録を拒否されてしまう。冒険者ギルドのように実技で試験をすると大規模な魔法の破壊力から野外演習場などが必要になってしまうため魔道具や水晶などで魔法の量を検査するがそこから才能をどう伸ばすかは本人次第ということだ。


「ありがとうございます。フフ~ンこれがギルドカード♪ これがギルドカード♪あ、登録するんでしたね。はい、どうぞ」

「あ、どうも」


 受付のお姉さんからカードを受け取ったナタリア王女はヨシヒサに自分のカードを手渡し鼻歌を歌いながらラシエルたちの方へ走ってゆく。


「それでは続いてパーティー登録の方を行います。貴方がパーティーのリーダーということでよろしいですね?」

「はい」

「分かりました。それでは先程の方と同じくこの水晶に両手を置いて少し強めに魔力を流し込んでください」


 俺はお姉さんに促され両手を水晶の上に置く。水晶は少々ひんやりしていたがナタリア王女の手の温度が少し残っていてさほど冷たいわけではなかった。さて、流し込む魔力は少し強め……ね。


 ヨシヒサが魔力を流し込むと同時に水晶はナタリアとは違い様々な色に変化し、段々と光が強くなる。そしてバギン!と音を立てて水晶は真っ二つに割れた。


「えーっと……その、割ってしまってすいません」


 ヨシヒサは謝罪の言葉を目の前で唖然とした顔で固まる受付のお姉さんにかけるが、また真っ二つに割れた水晶を眺めていた。


 ああ……やっちまった! ちょっと強めに流しこんだだけでまさか水晶が真っ二つに割れるなんて予想してなかったぞ……。これ、弁償しないと駄目だよな?幾らだろ……白金貨は確実だろうしってうわぁ……奥の方にいた魔法ギルドの職員さんめっちゃこっち見てるし取り敢えずお姉さんには再起動してもらわないと。


「あの、すいません。大丈夫ですか?」

「……はっ!も、申し訳ありません!直ぐに登録を完了させていただきますね!」


 お姉さんはどうやらなんとか再起動し手続きを続けてくれた。すると奥から男性職員の方が出てきてお姉さんに耳打ちをする。ちょっと嫌な予感がする。


「あのですね、当魔法ギルドの支部長があなたにお会いしたいと言っているのですが……」


 嫌な予感が大命中だ。面倒くさいことに巻き込まれそうなのでお断りさせていただく。


「すみません。自分はこれから少し予定があるので……申し訳ないですが」

「そ、そうですか。ダメな場合は暇な時に来て欲しいとのことなのでよろしくお願いします」


 お姉さんはそう言うと台座の下の石版から全員分のカードを取り出してヨシヒサに渡す。


「では、パーティー名アトラスを正式に魔法ギルドにて正式に登録させていただきます」


 そしてナタリアにしていた同じ説明をして営業スマイルとでも言うべきにっこり笑顔で申請書に登録完了の判子を押した。

 初の番外編はどうだったでしょうか?普段の主人公たちがぶっ飛んでるせいで普通の人を書くのに少々苦労しました……。


 余談ですが今回ヨシヒサがぶっ壊した水晶は完全受注生産品でお値段なんと白金貨20枚もする代物でした。ヨシヒサは弁償モノかと焦っていましたが今回は事故として処理されたのでご安心ください。


 次回はここまで登場した人物の紹介か本編かはわかりませんがなるべく早く更新するので気長にお待ち下さい。

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