第十九話 買い物、王都と事件 中編
続きます。
※ 今回は残酷な描写及び拷問をする描写がありますのでご注意ください。
腹に2発被弾している革鎧の男をポーチから出したジップタイと呼ばれる結束バンドで手首を後ろに縛り両膝をつかせ跪かせる。
「素直にしゃべらない場合目の前の三人を一人ずつ殺す、良いな?正直に答えろ」
男の目の前に並べた三人の一人の後頭部に銃口を押し付ける。
「では質問だ。お前たちは何者だ。そして何故彼女達を狙いどこへ連れて行った」
「だ、誰が答えるか!」
男は憎悪に満ちた表情で俺を睨む。
「残念だ。どうやら目の前の君の仲間は君を見捨てたらしい」
自分でも驚くほど無感情で冷たい声が出る。
男の後頭部に突き付けていたHK45のトリガーを躊躇なく引く。
後頭部を撃ち抜かれた男は一瞬ビクリと震えそのまま動かなくなった。
「て、テメェ! よ、よくも! 殺してやる! 絶対ぶっ殺してやる!」
喚く革鎧の男の声を聞きながら俺は頭を撃ち抜かれ動かなくなった男の無造作に放り捨て隣の男の後頭部に再び銃口を押し付ける。
「もう一度だ。お前たちは何者で何故彼女達を狙いどこへ連れて行った」
「くっ……! 死ね! この狂人が!」
「はぁ……残念だ」
銃声が響き力を失った男が地面に放り捨てられる。
「――!――!――!」
革鎧の男はまた何か喚いているが雑音にしか聞こえない。答えてくれないなら同じことを何度でもするだけだ。
「こいつでお前の仲間の生き残りは最後だ。よく考えて言葉を選び答えろ」
「誰が答えるか!テメェみたいな狂人に!」
再び響く銃声、ヨシヒサは死んだ男を放り捨て革鎧の男のところへ歩く。
仕方がない、親父直伝の拷問法でやるか。
革鎧の男をうつ伏せに寝かせ、太ももの部分に銃口を押し付ける。
「何をする気だ!」
「質問した内容を答えろ」
「い、イヤだね!」
引き金を引く
「ぐあああああ!?」
「答えろ」
「い、いや」
二回の銃声
男の太腿の最初に撃ち込んだ場所に何度も弾を撃ち込む
「答えろ」
「断―」
三回目の銃声
「答えろ」
「うぐうぅぅぅ」
四度目の銃声、男の太ももの肉は既にズタズタに引き裂かれていて大きく抉れていた。
「もう一度問う、質問に答えろ」
「あっ……が……ぐ……」
五度目との銃声の後、弾が切れスライドが後退した状態でストップする。
サイラスに装着しているハンドガン用マガジンポーチからマガジンを出して再装填しスライドストップレバーを押す。
HK45をホルスターに直して腰の鞘からニムラバスを引き抜く。
あの後、ナイフで足の筋を切ったり肉をえぐるなどの十数分の拷問で鎧の男は情報の全て吐いた。
止血はしたし死にはしないだろう。ま、多少の後遺症は残るだろうが。
「はぁ……」
ため息を付きふと周りを見ると日が沈み始め薄暗くなった道には死体の山ができていた。
幸い王都の城門を守る衛兵はここと門までは結構距離があるためか気がついた様子はない。道も他の人間が通ることはなかったことが幸いだった。
自分の手を見ると返り血で真っ赤に染まり生臭さと鉄錆の匂いが辺りに立ち込め猛烈な吐き気に襲われた。
「うっ、おぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
道端の草むらで胃の中の物すべてを吐き出しインベント取りからペットボトルのミネラルウォーターを取り出し封を開けて口をゆすぐ。
返り血の付いたHK45をタオルで綺麗に拭いてホルスターに戻し返り血で悲惨なことになったサイラスをはじめとする服やズボン、ブーツなどの装備品を外して新しいのに再装備し直し、この後のエレノアとラシエルの救出プランを考える。
草と布が擦れる音がし、振り返るとリースとアリシアが後ろに立っていた。
「リース……アリシア……」
俺は二人に目を合わすことが出来なかった。
自分は何をしたのかを理解していた。人として踏み越えてはいけない一線を超えたことを。
「……いつから起きていた」
俺が口を開くと二人は何も言わず俺に近寄り――抱きしめた。
「なっ……!?」
俺はてっきり全身に返り血を浴び両手が血塗られた俺のことを怯え、拒絶されると思っていた。
何しろ俺は20人近い人間を殺し、悪党とはいえ重症の人間を嬲り拷問した男だ。そんな男を何も言わず抱きしめてくれる人なんているのだろうか。
だが、抱きしめてくる二人の暖かさで氷のように凍りついていた心と感情が溶け出し涙が溢れてきた。
「ヨシヒサ……辛いことがあったら泣いてもいいんです。一人で抱え込んだり背負わないでください。あなたが例えどんな事をしようともどんな風になろうとも私達が側で支えますから。それに、彼らは犯罪者です。あなたは何も悪く無いのです」
「だから安心してください。ずっとずっと私たちはあなたの側に居ますから。崩れそうになったりしたら私達を頼ってください。ヨシヒサさん」
「うっ……うわあああああああああああ!」
二人の言葉と頭を撫でる手で感情と涙が決壊し二人に抱きしめられながら泣き続けた。
「落ち着きましたかヨシヒサ?」
「ヨシヒサさん……」
今俺は草原に身を横たえ二人に膝枕をされている。流石に現場は血生臭すぎて少し風上に移動した。
「ああ……。ありがとう」
体を起こして二人にお礼を言う。この二人がいなかったら恐らく俺は壊れていただろう。
「それでどうするのヨシヒサ?情報は全部手に入れたんでしょ?」
城門まで歩きながらプランを練る。
「ああ、MAPでも二人の位置を確認した。この先にある山の麓に洞窟があって連中はそこを根城にしているらしい。連中は盗賊兼人攫いだな。王都やその周辺で誘拐した人を一旦外に連れ出して違法な隷属魔法を掛けて反抗できないようにしてこれまた違法な奴隷商人に売り払っている」
「違法奴隷商人……名前は?」
「モズドーク奴隷商会。表向きは健全そのものだが、裏では違法奴隷や所持自他が禁止されている魔道具などを扱っている。真っ黒だな」
「連れ去られそうになった時につけれられた首輪もですか?」
「そう、あれは服従隷属の首輪というらしく本来は公的機関が犯罪者用に使う代物らしい。恐らく横流しだな」
「くっ……」
リースは横流しという単語を聞いて歯噛みし顔をしかめる。
門の篝火が見え、衛兵の青年にあったことをすべて説明する。
「なるほど……分かりました。すぐに責任者にお伝えします」
そう言うと衛兵の青年は詰め所の方へ走っていく。
30分ほど経ち、先ほどの衛兵の青年はヒョロッとした30代ぐらいの多少やつれているが金属鎧を着込んだおじさんを連れてきた。
「私が王都第一城壁の南門の責任者です。お話は伺いまして部下が現場の確認をしたところ、生存していた盗賊を捕縛し尋問したところお話になられた内容と合致しました。えー、連れ去られた二人の女性ですが、捜索と救出部隊編成まで一週間は待ってください」
なっ!?一週間!?ふざけんてんのかこいつ!
「一週間ですか!?」
「はい。来週から勤務が変わって別の者が責任者になるのでそれまでお待ち下さい」
おじさんは面倒くさそうに言い、それでは、と言うとさっさと詰め所に戻ってしまった。
「……王都騎士団は当てに出来そうにないな」
「ごめんなさいヨシヒサ……。王都騎士団がこんなに弛んでいるなんて思っていませんでした」
「来週まで待てって……話になりませんね」
騎士団が使えない以上自分たちでやるしかないようだ。
「リース、悪いがそこの宿の部屋を借りて今日中に助けに行くぞ。幸い場所判明しているから救出計画と装備を整える。新しい奴も使うからそれのレクチャーもやる。詰め込むから覚悟してくれ」
俺達三人は門前の宿に一泊で部屋を一部屋とり、机を囲んで計画を話す。今回は人質救出作戦となるわけで現実世界と同じく繊細かつ迅速な行動が要求される。そこで俺が提案するのはこのメンバーだからこそ行える作戦だ。
それは高々度からHALO(高高度降下低高度開傘)降下して連中のアジトを強襲する作戦だ。
空へはドラゴン形態になったアリシアに運んでもらう。服や装備品は変身する際に保存されるらしくパラシュートや装備品を装着した状態でも問題はないらしい。
そして今回新しく使用するのは召喚された日にタブレットで召喚してそのままスキル『武器庫』の肥やしになっていたHK416A5、口径は5.56mmだ。更にHK416の7.62mm版であるHK417もついでに召喚する。
アクセサリーも共通でサプレッサー、フラッシュライト内臓のフォアグリップ、レーザー照準器、洞窟や森林地帯での戦闘が予想されるのでホロサイトとブースターを装着する。
HK416A5はリースに、HK417はアリシアに使ってもらう。バレルの長さは416と417は16.5インチと16インチのアサルトライフル仕様、俺のSCAR-Hも普段のショートバレルからスタンダードバレルに、本体も改良型のGen3に変更した。
服や装備品は基本的に俺と同じのマルチカム迷彩の戦闘服にベージュのブーツ、サイラス、FASTヘルメットを装備させル予定だ。
その他にも高々度からから降下するため、防寒具や酸素マスク、パラシュートを出して銃の扱い方と平行してレクチャーする。その後、食事を取り、最終確認をして仮眠をとる。作戦開始は深夜だ。
心理描写難しいです……もうちょっとうまいこと表現できなかったのかと自分自身に小一時間問い詰めたいところです。
そして連れ去られた二人に安否はいかに……?




