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成り損ない勇者の異世界銃奏乱舞  作者: ディンキー
第二章
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第十四話 例のあの人からの手紙、空、そして王都へ

お待たせしました!

しばらく見ないうちに累計PV数やユニークがどえらいことに……。

今回は少し長いですが、どうぞお楽しみください!

 買い物を終えて大通りに出ると日が沈み魔鉱石の光が通りを照らし始める。


 「ヨシヒサ! 今日は楽しかったですよ!また一緒にお買い物しましょうね?」


 リースは店を出て以来、ずっと上機嫌になっている。他の二人も機嫌が良いようでずっとにまにまとした顔になっている。


 ただまぁ、俺も久し振りに楽しい時間が過ごせたと思う。それに周りの視線が痛いが両腕に花、だしね。


「ちっ、あの男……あんな美人の女の子を二人も侍らせるだけじゃ飽きたらずエルフまで囲ってるだぁ? この世は不条理だ!」

「落ち着けハンセン、俺達だって冒険者として名を上げることができればあんな風に毎日がウハウハだぜ!」

「今の俺なら嫉妬で人が殺せる……!」

「俺、このクエスト終えたら幼馴染と婚約するんだ……。もう花束と指輪と家も用意してたり」


「「「……!?お前、消えるのか……?」」」


「今から東街の高級娼館行こうぜ……。親友の旅立ちの日なんだ今日は俺のおごりだぁ!」


 何故か俺を恨めしそうな顔で睨んでいた冒険者四人組、大丈夫だ。君たちにもいつか春は来るさ……。一人だけ不穏な事を言っていたが、大丈夫だよな?


 そういえば冒険者……なんだろう、なにか重要な事を忘れているような……まぁいいか。明日にでも想い出すだろうし。


 その後は特に何事も無く宿に戻りシェフが腕によりをかけた月影亭名物特製ビーフシチューを食べ、部屋に持って来てもらったお湯で体を拭いて就寝した。


 そこそこ大きいベッドだったので三人で寝ることにしたのだが密着してくるために全身に三人の柔らかい部分が当たって意識が落ちるまで理性と本能が殴り合いをしながら悶々と過ごすはめになった。


 うう……首が痛い……


 朝起きると目の前には美しい双丘が六つ、無論ベッドで寝ているお嬢様方三人のものだ。しかし、この張りと艶は見ているだけでもすばらしい!


 感動に打ち震え、手を伸ばそうとすると"コンコンコン"とドアがノックされた。


 チィッ! いいところだったのに!ロクでもない要件だったら12ゲージのゴム弾を腹にぶち込んでやる!


 首に巻き付いたリースとアリシアの腕をなんとかほどいて扉を開けると昨日のウサ耳受付嬢が部屋の前にいた。何故ここに滞在していると分かったんだ?


「おはようございますぅ~。ヨシヒサさんにお手紙ですよぉ~」

「おはようございます。手紙ですか……誰からですか?」


 受付嬢―もとい兎耳族のルミナさんは腰にかけている鞄から黄色の封筒を一通出して渡してくれた。


 受け取った封筒の表には俺の名前が、裏にはここ最近完全に忘れていた人であったラシエルの名前が書かれていた。やべぇ、完全に忘れてた……。


 と言うかなんで俺がこのギルノディアに居るって知ってるんだよ……。


 転移魔法が発動する直前に約束していた『街に行ったらすぐに手紙を出す』という約束のことを完璧に忘れていたのを思い出し、改めて封筒を見るとなんとなくだが殺気が感じられる。正直この封筒は開けたくないのだが。


 意を決して封筒を開け、中の便箋びんせんを取り出す。そして丁寧に折りたたまれた三枚の便箋を開き内容を読むと……


 要約すると滅茶苦茶怒ってた。それはもう文章だけでラシエルのマジギレ顔と背後に般若……ではないが何故か血の滴ったトゲトゲのついた棍棒を持つ鬼の顔が見えた。


「はっ、ははははははははは……」


 なんでだろう、ただ事件後の報告と何故すぐに手紙を出さなかったのかを問い詰められているだけなのに乾いた笑い声しか出ないし冷や汗と震えが止まらないんだが……。これ王都に帰ったら本当に死ぬんじゃないだろうか……。


 最後の一文は『は や く か え っ て き て ね ?』と太字で何度も繰り返しなぞられて迫力満点で書かれていたので早急に王城へ帰ることにしようと決めた。


 震える手で便箋を封筒に戻し、着替えや予備の弾薬にメンテナンスキットを仕舞っているマルチカム迷彩のザックの一番奥の隙間に封印し未だにベットで熟睡しているお嬢様方をみて溜息をつく。


「あの、ル、ルミナさん……?この後すぐに手紙の返事を書くのですぐに届けてもらうことって可能ですか?」


 またぼーっとしていたルミナさんに尋ねる。大丈夫かな?


「そうですねぇ~少し配達料は掛かりますけどワイバーン便なら当日中に配達出来ますねぇ~。ただし午前中までですけど~」


 気怠そうに間延びした感じで教えてもらいふと部屋の壁に備え付けられている精霊機構というなんともまぁファンタジーな機構で動く時計を見ると針は11時を少し回ったところだった。


「げ!もう11時かよ!急いで返事書かないと……!すみません、したのラウンジで待っててもらえませんか?お茶代は出すんで!」

「はぃ~わかりましたぁいいですよぉ~。下で待ってますねぇ~」


 なんとか承諾してもらいお茶代として銀貨数枚を渡し、俺は早速タブレットでボールペンと便箋数枚と封筒を召喚し備え付けの机にかじりつく。内容は簡潔に転移後の行動と何故手紙を出せなかったかを嘘4割真実6割で混ぜて書いた。


「……よし。これで良い筈……後は封を閉じれば」

「ヨーシヒサ!何をしているんですか?あら、これは一体?」

「うぉわっ!リ、リース!?起きてたのか……。あっ、それは」


 既に起きていたらしいリースに背後から抱きしめられ、封筒を没収される。


 幸いにしてザックの奥に封印されているラシエルの呪いの手紙は気が付かれておらず事なきを得た。


「ふむ……なるほど。ヨシヒサもヘタレなところもあるんですね。まぁ、そこもいいんですけどね……」

「ヨシヒサさん。この内容から察するに今日明日にもここを出発するんですね?」

「旦那様、ならば早めに日用雑貨などを購入いたしましょう」


 リース達から封筒と便箋を取り返し、封をして着替えて階下に行きラウンジにいるルミナさんに手渡す。


「すみません。お待たせしました……これが返信になります。それで料金は」

「はぃ~確かに受け取りましたぁ~。ではワイバーン便でよろしいですねぇ~?」


 早いことに越したことはない。俺はそれでお願いしますと言っておく。


「それでは~宛先はアステリア王国王都オーエン、王城のラシエル様ですね~」


 ルミナさんは懐から出したペンで封筒に何かを書き込み封筒が黄色く光った。


「それでは料金は銀貨8枚になります~」


 即座に腰のポーチの財布から銀貨を8枚取り出してルミナさんに手渡す。


「丁度ですね~。それでは私はこれで失礼ます~」


 フロントのお姉さんに今日中にチェックアウトし更新はしないことを伝えていると我らがお嬢様方が荷物を背負って階段を降りてきた。


「ヨシヒサ、部屋のチェックは終わりましたよ。はい鍵」

「おう。ありがとう」


 お姉さんに鍵を返して足元においてあるザックを背負い、宿を出る。……そこのお嬢様方三人、お姉さんと顔を赤らめながら何話してんの……。


 そしてグッバイ柔らかいベッドとお風呂……


 大通りは相変わらず人でごった返していてぶつからずに歩くのも一苦労といったところだ。アリシアは人酔いを完全に克服したらしく俺が昨日あげたメモ帳とペンで買うべき必需品をエレノアと一緒にメモしていた。


 その後、エレノアを購入した奴隷商店がある超でかい例の市場や商店が立ち並ぶ通りでタオルや手袋、予備の服や外套、保存の効く食料に道中のおやつとして何故異世界にあるのかは不明だが三ツ◯サイダー味の飴がキロ単位で売られていたので10キロ程購入して9㎏はインベントリに放り込み、残り1㎏はポーチに入れて小出しに出してずっと4人で舐めてたりしながら買い物をした。(因みに1㎏大銅貨20枚)


 いやぁ、今回のお買い物はインベントリ先生が大活躍でした。


 そりゃもうね普通なら馬車数台分の荷物を容量制限無しで運べるもんだから自由になったら輸送商人になるのも良いかもしれない。


 鎧や剣などを発注したドルネケイル防武具店のドワーフ店主、ドルネのおっさん(ケイルは嫁さんの名前らしい)にアステリア王国の王都まで至急行く必要が出たことを伝え、後払いの白金貨4枚を払い、なるべく早く取りに来ることを約束した。


 ドルネのおっさんは「最高のモノにしてやるから楽しみにしていろ!」と大笑いしていたからかなり期待はできる。ついでに追加でヒヒイロカネとミスリルのインゴットを30本ほど渡しておいた。


 買い物をしたり冒険者ギルドでこのギルノディアからアステリア王国の王都オーエンまで馬車でどれくらい掛かるのかを聞くと、普通の馬車だと大体一ヶ月から二ヶ月。ギルドで購入した地図とタクニカルマップを照らし合せてみると直線距離で250km前後ととんでもなく遠いことが判明した。


 ここからアステリア王国に行くだけでも最低4つ山と3つの関所を超える必要があり、途中で盗賊や野盗などのトラブルに巻き込まれると下手すをれば3日程プラスされるらしい。(死体の始末や最寄りの街や村、検問の騎士や衛兵などに報告する義務があるため)


 流石にあの怒り狂ったラシエル嬢をひと月もふた月待たせるつもりはないので俺自身のために今回はかなり目立つが背に腹は代えられないので"空"で行くことにする。


 本当はかなり目立つから嫌なんだけどね。


 日もだいぶ傾き現在時刻午後6半だ。(暦や時間は地球とほぼ同じ)


 都市の入り口にある門で例の衛兵のおっさんに滞在許可証を返却して城壁外に出る。


「それじゃあ今から新しい乗り物を出すから少し下がってて」

「わかりました」

「はーい」

「承知いたしました旦那様」


 三者三様の返事を聞き、俺は手元のサイズを戻したタブレットの『召喚』のアプリを起こし『航空機』のタブから『ヘリコプター』の欄にあるアメリカの汎用ヘリコプターUH-1Yベノムを召喚する。


 (因みにこの機体は双子でもう一つはAH-1Zという攻撃ヘリなのだが、改修という名の魔改造が施されていて機体の95%が新造という見た目は"ほぼ"元の機体だが中身は別物状態)


 光の粒子に包まれ、草原に姿を現す灰色の異世界の乗り物、俺はさっさとヘリに駆け寄りキャビンのドアを開けて唖然として固まっているエレノアと少し驚いてたもののすぐに荷物を担いでやって来るリースとアリシアに声をかける。


「おーい!このキャビンに荷物をおいてくれ!置いたらベルトで荷物を固定してくれ!」

「わかりましたヨシヒサ」

「はーい。これで本当に飛べるのかな?」

「なっなっなっ……!?」


 未だに目を見開いてワナワナしているエレノアの腕を引っ張りアリシアの豪腕でキャビンに入れて椅子に座らせ、シートベルトを装着することが出来た。まぁ、それが普通の反応だよね。


「そんじゃコックピットの左の席にはリースが座ってくれ、何も触るなよ。キャビンはエレノアが錯乱しないようにアリシア、頼んだ」

「わかりましたヨシヒサ。でも、少し狭いですね……この棒や鏡のようなものは一体……」

「ヨシヒサさん、この耳あてみたいな奴はつけますか?」


 アリシアは天井にぶら下がっている機内通話用のヘッドセットを持っていた。


「ああ、それはつけといてくれあとエレノアにもな。飛ぶときはかなりうるさいからな。あとリースはこのヘルメットな」


 リースにパイロット用のヘルメットを被せて俺もFASTヘルメットを脱いでねずみ色のずんぐりしたヘルメットを被る。


 エレノアは未だに放心状態のようだ。そのうち再起動するだろうし大丈夫だな。


 レバーやスイッチ類を操作してエンジンとモニター類を起こす。


 甲高い音をたてながらとエンジンとローターが回転数を上げ、どんどんと音は大きくなる。


「よし、メイン・テールロータ回転数、計器類の数値オールグリーン、エンジン内温度も異常なしっと。それじゃあ離陸するぞ!」


 

 爆音を上げ四枚のブレードと強力なエンジンが放つ強烈なダウンウォッシュで周辺の草をなぎ倒しながら日が傾き薄暗くなってきているファンタジーな異世界の空へ、ヘリが飛び立つ。


 

 後日談だが離陸した場所が割りと城壁の近くで爆音と飛び去るヘリの姿を見た衛兵や領軍や住民がドラゴンか野生のワイバーンの襲撃かと大騒ぎし、冒険者達が完全武装で離陸場所まで大挙して押し寄せたことを彼らは知る由もない。

最近、一気に寒くなりましたね。この物語の世界では現在を春と夏の間を設定してますので羨ましさ爆発ですね……。

因みに兵器類は米軍・ロシア軍系が多くなるかもしれません。要望があればどこかで登場しちゃうかも?

そして、多数のブックマークなど本当にありがとうございます。また、感想・評価・誤字脱字報告・要望など待ってます!

PV16000、ユニーク3000超え……恐ろしあ……。


追記 一部内容を変更しました

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