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成り損ない勇者の異世界銃奏乱舞  作者: ディンキー
第二章
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第十三話 お嬢様達のお買い物、お仕置きと伝説の合金(仮)

お待たせしました。


 最近芳久くん達のイラストを描きたいなと思ってますが私に絵心がないために断念前体屈をしています。想像するだけなら自信はあるんですけどねぇ……。

 俺達はエレノア(本人に呼び捨てで呼んで欲しいと言われた)を仲間に加え再び人の波に揉まれながらなんとか市場を出る。


 ふと空を見上げると日はだいぶ傾いていて市場やその周りの露天は更に活気づいていた。


「エレノア、大丈夫か?」


 また人酔いをしかけているアリシアに水を飲ませ、さっきから一言も話さないエレノアに声をかける。


「はい旦那様。私は大丈夫です。旦那様はお優しいのですね、私のような奴隷にも気を使ってくれるなんて」

「そうか?大丈夫なら良かった。それに、女の子には優しくしろって母親に徹底的に仕込まれてたからな。そのせいかもな」


 因みに手首の紋様は奴隷側が何かしらの違反行為、ロボット三原則のような感じの内容を破ると紋様から手首に激痛を出す魔法が起動するとのことだ。最悪、痛みでショック死したり手首を切り落としたりする奴隷も少なくないらしい。


 乗合馬車はかなり人が並んでいたので諦めて宿まで歩くことにした。


 まぁ、露天での買い食いや衝動買いがメインになるだろう。もっとも、少し行きたい店もあるのだが。三人に普段着で新しい服も買ってやりたいし。


 途中で買食いした露天には串焼きやなんと唐揚げまでありしかもその殆どが銅貨5枚程度で売られていた。ホクホク笑顔で咀嚼していると、少しこじんまりしているが、上品そうな衣料品店があった。


「リース、アリシア、エレノア、悪いがここの店に入るぞ。入る前にその手に持ってる食べ物をインベントリにしまうからその後消臭魔法をかけてくれ」


「お安い御用ですヨシヒサ」


 因みにインベントリは中に収納している間は収容物の時間が止まるらしく、朝炊いたご飯が次の日の夜でもホカホカで食べられるということだ。しかもナマモノだろうが生き物だろうが容量無限で収納できるので超便利。


 各人の食べ物をインベントリに収納し、リースの消臭魔法を受けた俺達は店の中に入る。


 店の中は比較的明るく、パッと見た感じでは女性物が多いようだ。男性用もあることはあるのだが、やはり女性物ほどバリエーションは多くない。


「いらっしゃいませー」


 カウンターからフワフワした感じの女性の店員さんが出てきた。犬耳の。犬・耳!猫も好きだが超犬派の俺としてはダックスのようにさらさらとした毛で垂れた耳に釘付けになってしまう。


「あ、あのお客様?私の耳がどうかしましたか……?」


 あ、やべ……つい興奮してしまった……。


「すみません。ついあなたの耳に見とれてしまいまして……これは失礼を」

「えっ……? あわわわわ……」


 俺が謝罪すると店員さんは顔が真っ赤になった。女性の耳に見とれて興奮するとか俺は変態か?とにかく気を取り直して店の中に入り、服を物色しようとする。

 

 だが、最初の一歩を踏み出そうとすると右肩を誰かががっしり掴んできた。


「ヨシヒサ? 少しお話があります。抵抗は無駄ですよ」

「ヨシヒサさん……流石にここで言うべきではありませんでしたね……フフッ」

「旦那様は耳がお好き……耳が好きなのであれば私の耳で良ければいつでも……はっ! 私は何を一体!」


 マズイ。


 これは大ピンチどころじゃない。笑顔だが声の温度が氷点下になり、俺の肩を片手で掴んでいる王女様、目から光が消えて微笑んでいる古代竜様、何故か耳まで真っ赤になりながら軽く取り乱しているエルフ様……この三人に共通しているのは殺気がかなり出ていることだ。


 とにかく逃げるか説得せねば命に関わる!


「ま、待て三人共! 落ち着け! さっきのはあくまで社交辞令で……あの、リースさん? その手に持っていらっしゃる氷の槍はいったい……?」


「ふふふ……私達の目の前で女を口説くなんていい度胸ですねぇ……これは少し『教育』をして差し上げなければいけませんね!」

「よ、よせ! やめ……!?」


 結果、リース、アリシア、エレノアに物理的・魔法的『教育』を受けた俺はボロボロになりながら女神様からもらった能力のおかげで死なずにすんだ。


 彼女達には好きな服10着を買うことでなんとか機嫌を直してもらった。三人が山のように抱えてきた服の総額なんと金貨25枚である。さすが高級衣料品店……俺の財布は悲しみを背負っているよ……トホホ……。


 あ、でも店員のお姉さんから男物の焦げ茶色の革のコートをサービスでもらえました。ヤッタネ!


 「まだ普通に余裕があるからいいけど、この調子で浪費してたらいつか金欠しそう……」


 大幅減量に成功した財布を腰のポーチに戻して目の前で上機嫌な三人を見ると少しだけほっこりしたような気がしないでもない。


 「ヨシヒサ! もうすぐ店につきますよ!」


 店で買った白のワンピースを着てはしゃぐリース。その横には藍色の長ズボンに半袖のシャツを着たエレノアとアリシアがいる。エレノアは普段奴隷商店で着ている地味な貫頭着しかなかった(紹介されたときに着ていた服は薄すぎるため即鞄へしまわれた)ので美人が更に美人になった。


 そして俺達は最後の目的地、武具店に向かう。これは俺の強い希望で、普段装備しているマルチカム迷彩のボディーアーマーはここでは結構目立つので変装用……というわけではないがあまり目立たないように皮鎧か金属なら軽鎧と片手剣辺りを購入しようと考えている。


 まぁ、そんなに着る機会はないと思うが念のためだ。


 そして、冒険者ギルド聞いた話では最近ドワーフの鍛冶職人がこの城塞商業都市に引っ越してきたらしく、武具や防具などを買うにはその店がオススメらしい。


 ドルネケイル防武具店と看板に書かれた店に入ると中は棚だらけで、その棚一つ一つに剣や鎧、弓や魔法杖などが置いてある。中にはミスリル製もあり見ているだけでも結構楽しい。実際、リース達も剣や杖の場所に行き手に取ったりしている。


「すみませーん」


 店の奥の方へ声をかけると身長150cmぐらいの立派な髭をたくわえたおじさんが出てきた。


「おう坊主。なんの用だ」


 結構タメ口で親しみやすい店主が出てきてに欲しい武具や防具の場所を条件などをつけて聞くと予想外の答えが帰ってきた。


「ふむ……その条件に叶うやつはオーダーメイドになっちまうな。少なくとも店売りはしていないな。剣はともかく特に鎧はその体格に合わせて作るからな……。材料があればいけるが、如何せん最近はミスリルやヒヒイロカネの需要が増えたせいで材料も不足気味だしな」

「そうか……」


 材料か……どこかにあったけ?


 材料がないかスマホサイズになっているタブレットを取り出してインベントリを探すとインフェルニエダンジョンでの一件以来完全に忘れ去られていた数々の財貨と無数の金属のインゴット……その中には無論大量のミスリルやヒヒイロカネ、果てはオリハルコンのインゴットが存在した。


「お、材料ならミスリルとヒヒイロカネの両方がたくさんあるぞ」


 そう言いながら俺はインベントリからヒヒイロカネとミスリルのインゴットを取り出して店主に見せる。


「ほう、これは高品質なインゴットだな……坊主、これをどこで手に入れた?この辺で入手はできないはずだ」


 正直に言う訳にもいかないのでここでサラッと嘘をつく。


「これは偶然ダンジョンで手に入れた物なんだよ。知り合いに鍛冶職人がいなくてな、でずっともて余してたんだよ。そんでもって今回はミスリルとヒヒイロカネを組み合わせた合金にしてもらいたい」


「ふん。そういうことにしといてやるか…・。取り敢えず採寸と剣とかの武具の要求仕様をこの紙に書いといてくれ。代金は注文時に半分、完成して引き渡すときに半分だ。合金の方は安心しろ、ドワーフの鍛冶師ナメんなよ?」

「了承した」


 店主にもらった紙と万年筆のようなペンを借りて三人の要望を聞きに行く。


 かなり遠慮されたがなんとか話術で丸め込み、三人の要望を聞くことが出来た。


 そしてリース、アリシア、エレノアの三人に念願のドレスアーマーを着せることが出来た。素材は無論ミスリルとヒヒイロカネの合金で軽量かつ高魔導性に優れ、防御力もミスリルやヒヒイロカネ単体より優れており、唯一の欠点は錬成と加工にかなり手間が掛かり難しいことだ。


 店主は合金の話をするとかなり難しい顔をしたができるとのことなので無理を言ってお願いしておいた。


「ほう、剣も鎧も全て合金か……こんな素材の量と質を揃えるには王族でも中々出来ないな。お前さん、本当に王族とか大貴族のボンボンじゃないんだろうな?」


「まさか。俺は運の良い冒険者だよ」


 のらりくらりかわしながら採寸も終わり、前払いの代金である白金貨4枚を渡す。日本円にして4千万円……総額白金貨8枚で8千万円である。金遣いが荒いとかそんなレベルじゃねえぞ!


 完成は4日後ということで帯剣用のベルトや解体用の小さめのナイフを購入して店を出た。ぐへへへ……遂に悲願であった伝説のドレスアーマーをあの三人に……笑いが止まらん……!


 よしひさは ねんがんの ドレスアーマー を てにいれた!


 芳久くんが受けた『教育』という名のお仕置きの内容は皆さんのご想像にお任せします。敢えて言うなら普通の騎士がこのお仕置きを受けるとトラウマになるぐらいですね。

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