夢?いえいえ、現実です。
気づいたら暗いお墓にいた。
いや、何を言ってるかはわからなくてもいいけど信じてはもらいたい。
学校帰りに趣味である中古品のマイナーゲームの買い漁りをした後、そのまま家に帰りそのゲームの山を順々にクリアして回ってたことまでは覚えている…
「って、こんな墓見たことないぞ…」
墓の奥の方には古い洋館のようなものがそびえ立ってる。周りはまるで中世ヨーロッパの雰囲気だ。何処だよここ…
他に周りを見渡すが暗くて、霧も出ていてよく見えない。空を見上げるが雲はない、不気味なほどに明るく大きな月が一つ、闇の中に浮かんでいる。嫌な雰囲気が漂っているのがひしひしと伝わってくる。えーと、こういう時は………
「やっほぉーーーーー!!!」
とりあえず場違いな叫びをあげてみることにした。俺がホラーゲームをクリアするために編み出した戦術の一つ。《雰囲気破壊》だ。ホラーゲームは別に苦手ではないが怖いものは普通に怖い。どうしてもゲームを進めるのが怖くなった時に活用する必殺スキルである!
「っと、心の中で解説するまでがこのスキルなんだよな…デメリットは一人でいたたまれなくなることだけど…」
そんなことを言いながら、少し落ち着いてあたりを見回すと一つの墓石に目が止まる。
その手前には淡く光る懐中電灯が落ちていた。
「なんか本当にホラーゲームみたいだな…」
おれはその懐中電灯を拾うために、墓石に近づき腰をかがめる。
ささっ……
視界の端を何かが横切る。パッとそちらを見るが何もいない。
「………」
流石に怖くなり、懐中電灯を持って出口を探す。しかし、そもそも自分の居場所がわからない上に墓場自体は相当に大きい。
「これがホラーゲームなら洋館の方へ向かうのが正しいんだろうけど…」
出口を探すなら、とりあえず洋館とは逆の方向が正解だろう…
そう思って歩きだそうとしたそのとき…
「ぅ……ぁ……ぁぁ……」
何か背後から声がした。ばっと振り向く……が、
「誰もいない……?」
背筋に氷を流し入れられるような感覚に襲われる。
「夢かなんかなら、そろそろ冷めて欲しいんだが…」
懐中電灯を持っていない方の手で、自分の頬をつねるが目が覚める様子はない。
不気味なほどにリアルな雰囲気が夢でないことを伝えてきている。
「ぅら………ぇ…し…ぁ〜」
また声がする。今度は前からである。暗い前方に目を凝らす。暗闇にぽつん、ぽつんと青白い光が舞っている。
足が勝手に後ずさりし、冷や汗が流れるのがわかる。
心が純粋に強いという感情に支配される。
だんだんと、青白い光で白い服と長い髪のシルエットが映し出されてきたかと思うと…
「うらめしやぁ〜〜」
「ぎゃぁぁぁぁーーーーーーーーー」
髪の長い女が両手をだらんと肩の高さまであげてこちらに向かってきた。咄嗟に後ろを向いて逃げようとすると…
「ま…てぇ…ーーー」
「ぎゃぁぁぁぁーーーーーーーーー」
首だけの男がこちらにふわりふわりと浮かびながら向かってくる。咄嗟に道から外れ、逃げようとするが足が何かに引っかかって動かない。恐る恐る下を見ると
ギシっ
しっかりと足を掴まれている。あっ、もう無理だ。頭の許容メモリを超えそう。そう、諦める俺へトドメの一撃が下される。
「あっ、あぶなぁあぃ〜〜ごめんなさい〜〜〜」
後ろから頭に硬い何かがあたり、俺は暗い意識の闇へ沈められた。、