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名もなき物語  作者: 白カギ
《解決の物語》
76/85

Part.15 六花 4

 次の日、いの一番に学校の教室に来た彼女は一樹を待っていたのだ。


 流石にネックレスは付けていない。是非とも付けてきたかったが、取り上げられては元も子もない……そう思って、ランドセルに潜ませるだけに押さえている。

 早く彼と話がしたい。気分が高揚している六花は、机に座りながら扉の方をじっと見つめていた。


 一人、二人と続々と入ってくる。いつもはゆっくりと登校する六花を見て驚いている同級生も多かったが、その目はすぐに無関心に変わる。いつも一樹は来るのが遅いのだが、すぐに来てくれるという期待が六花の心を占めているのだろう、1人入ってくる度に目を輝かせて六花は一樹を待っていた。


 始業の時間が近づいてくる。それでも彼は入ってこなかった。昨日の様子を思い返す限り、体調不良になっていたようには思えない。どうして来ないのだろう? そう考えていたら担任が入ってきた。


「おはようございます!」


 先生の大声が聞こえてくる。それでも、一樹は入ってこなかった。隣の空席を見ながら、六花はふと首を傾げる。


 一樹は机の中に色鉛筆やらはさみやら色々と道具を入れっぱなしにしている。しかし、ふと見えた机の隙間には一切の道具が入っていなかったのだ。


 まるで最初から彼などいなかったかのように、その机の中は綺麗になっていたように思えたのだ。


 先生が前に立っている状態で、いくら隣とは言え勝手に机の中を覗くのは躊躇われる。不思議に思いながら、健康観察で自分の名前が呼ばれたことに気付き、慌てて返事をする。


 ――あれ、一樹くん呼ばれたっけ?


 出席番号順で呼ばれる朝の健康観察において、この担任は欠席者がいる場合や遅刻者がいる場合それを全体に聞き、確認をする。にも関わらず、彼の名前が呼ばれたようには思えなかったのだ。聞き漏らしたのだろうか? いや、いつも以上に彼の事に敏感になっている今日、聞き漏らすとは思えない……。最後の1人が呼ばれ、担任が高らかに告げた。


「よし、今日も"全員いる"な! まだまだ寒いけど風邪引くなよ!?」


 はい! と元気よく返事をするクラスメイト達に六花は激しく混乱した。

 全員いる、だと? 六花自身がいないのであればいざ知らず、クラスでもそこそこの影響力を持つ一樹がいないのである。いなければ目立つ彼がいないのにこの言葉はなんなのか? それに疑問を抱かずに肯定するクラスメイトはなんなのだろうか? よくよく見れば一樹絡みで自分に突っかかってきた蓼山もまた疑うことなく返事をしているではないか。


 ――どういう、こと……?


 慌てて後ろの掲示物を見る。1人1人の写真と共に、掲示物が貼られているのだが、その中を見ても一樹の名前はどこにもない。昨日まで安西、烏飼、江藤と連なっていたのに、今では一樹の所が詰めて貼られている。それどころか自分ですら何気なくランドセルを入れたロッカーを省みれば、一つの空きがなくそれぞれのカバンが詰められているではないか。


 まるで烏飼一樹など始めから居なかったかのように……


 そして、その違和感には自分しか気付いていない。


 ――なんで、一樹くんがいないの!?


 すっぽりと空いている隣の席を見て、六花は頭を抱えてしまう。担任が次々と連絡事項を伝えていくが、そのすべてが右から左へと突き抜けていく。


 夢だ、夢に違いない……ポケットをまさぐってみれば、彼からもらったネックレスが指先に触れる。そうだ、これは夢なんだ……早く、覚めて!


 ガラスの冷たい感触を手のひらの中に感じながらも、六花はそう祈らずにはいられなかったのだ。


 ***


 あれから一週間が経った。

 どれだけ経ってもこの夢は覚めない。ぼんやりとしながら使っていた包丁で手を切ってしまってもしっかりと痛みが訪れる。冷たい水で濡れたその手には確かにしもやけの痛さがある。痛覚だけは過敏に反応する夢なのだろうか? 夜眠って朝起きても、何をしても覚めない長い長い夢だった。


 バタンッッ!!

 不意に、扉を乱雑に開ける音が轟く。直後にズケズケと大きな足音と罵声が連なってきた。


「おい六花!」


 どうやら今回の外出は一週間近く経っていたようだった。久しぶりに帰ってきた伯父は乱暴に六花の襟首を掴む。その痛みは感じるのに、やはり夢は覚めない。


「お前最近学校サボってたらしいじゃねーか!? どういうことだ!?」

「……いきたくなんか、ない」

「ふざけんじゃねえ!!」


 壁に向けて六花の体を投げつける。あまりの痛さに呼吸が止まるが……それでも、夢は覚めなかった。

 遠出がたたってるのか、どこか疲れている様子だった。彼の怒りがいつも以上に伝わってくる。


「だったら行かなくて良いっ!! 今まで以上に魔術の研究に付き合ってもらうがそれで良いんだな!?」

「別に……もう、どうでも……」

「なんだよ、もっと泣きわめけよっ!?」


 相も変わらず理不尽な言い分と共に、伯父は六花を蹴飛ばす。投げ出された六花は、体の痛みを省みることも、立ち上がる意志も起きなかった。


 すべてが冷め切り、凍り付いた六花に伯父は痺れを切らして喚く。


「いつもみたいにやめてくださいってわめけよっ!! お前の悲鳴を俺は聞きてぇんだよっ!!」

「…………」

「お前の親から受けた痛みはこんなもんじゃねーからな!? お前のせいで国柴は――!!」


 幾度も聞かされた国柴家の過去など六花の耳には入ってこない。


 どうして、この夢は覚めないんだろう。

 どうして、一樹はいなくなっちゃったんだろう。


 胸ぐらを掴まれる。つばを飛ばしながら伯父は早口にまくし立てる。


「お前さえ生まれなければ、俺はこんな目に合わなくてもすんだのによぉ、この忌み子がぁっ!!」


 強く頬を殴られる。

 痛い……痛みが、頬に残っている。


 ――そっか、やっぱりこれは現実なんだ……。


 今更ながら、頭を切った痛みが襲いかかり、視界が真っ赤に染まる。鼻を突く強い匂いや、伯父の嫌な臭い。五感のすべてがこれは現実なんだと六花に突き付けてくる。

 もしかして、一樹は最初からいなかったのではないか? すべてが夢、烏飼一樹は伯父が見せていた幻覚の類なのではないか?


 ああ、だったらすべての合点がいく。自分に希望なんかあるわけがなかったのだ。だったら、別に普段通りの日が戻ってくるだけだ……何も思うことなどない。六花の口元から漏れたのは悲鳴ではなく……、


「……ははっ。ははは……」

「なに笑ってんだよ気持ち悪ぃぃ!!」


 おかしくなってきて、腹の底から笑いが漏れる。一瞬気味悪げに驚いた伯父だったが、すぐに「気持ち悪いっ!!」と六花の腹に蹴りを入れてくる。痛みですらどこか心地良い……。蹴り飛ばされた拍子に、ランドセルが空を舞う。


 ――っっっ!!


 最初は見間違いかと思った。夢の中の出来事なんだから、現実にあるはずがないと、思っていた。

 しかし、それは確かに見えた。確かめるために六花はすぐさま手を伸ばした。


 そして、握り締めることが出来た。


「そんなに死にたければ殺してやろうかっ!? ああっ!?」


 背後で伯父が怒鳴り散らしている。

 握り締めたとき、6つの花弁が手のひらを包む感触は本物だ……痛くもなく、どこか柔らかい冷たい感触。同時に彼の笑顔が浮かんでくる。


 ――そうだ、アレは(うそ)なんかじゃない。


 確かに、思い出すことが出来る。

 その回顧と共に、六花の頬に血が混じった涙が伝う。


 『俺はやりたいと思ったからやっただけだよ』

 ――素直……私は、どうなんだろう?


 今、自分がしたいことはなんだろう? 伯父の虐待に逢いながらも生き続けること? 違う。そんな生活なんかしたくない。


 ――『やりたいように、やっているだけ』


 彼のあの真っ直ぐさが好きだった。


 もう一度、君に会いたい……消え去ったようにいなくなった彼だが、手元にあるガラスの花弁が彼が確実にいたことを教えてくれる。


 きっと、会えるはずだ……彼は、いつでも約束を守ってくれた。また会おうという約束を、破る筈がない。


 そう思った六花を、伯父の手が掴み挙げる。髪の毛を掴まれ、強い痛みに六花は呻いてしまう。顔をつきあわせながら、憤怒の形相に歪んだ伯父は言葉を吐き散らした。


「そうだ、殺してやるっ!! 劫輝と牡丹の所にお前も送ってやるからなっ!! 」

「お前……も?」


 不意に聞こえた両親の名前に、六花は言葉を漏らす。伯父は諦観したかのように、声高らかに告げた。


「そうだよ、お前の親ぁ殺したのは俺だよ俺!! 国柴の血を汚すあんなヤツら、死んで当然だしなぁ!?」


 ――死んで、当然……?


 両親と過ごした時間はごく短い間だった。体感時間で言えば、この伯父といる時間の方が長いくらいになっている。

 それでも、あの両親のことはよく覚えている。死んで当然なんて謂われる覚えはないような人格者だった。目の前の男と違って暴力も振るわない優しい両親だった。

 その言葉が六花の心を揺さぶる。強い憎悪に染まった伯父の狂気は止まることなく六花に降り注ぐ。


劫輝(こうき)は俺からすべてを奪い去りやがったんだ! 才能、人望、国柴の家、そして牡丹(ぼたん)……殺してやった時、スカッとしたぜ。お前を殺せなかったのは痛手だったが、幸いにもお前は国柴の血を強く受け継いでたからなぁ!? 実験台には好都合だったぜ!?」


 父親(こうき)母親(ぼたん)の名前、そして期せずして告げられた事実に六花はハッとする。


 その両親を何故この男は強く憎むのか。その理由など自分は知らない。

 そんなことはどうでも良い……大事なのは、一つだけだ。


 ――コイツが、お父さんとお母さんを殺したんだ……


 親が死に、伯父に引き取られて魔術の実験を受け続け、時には"相手"までさせられ……

 人権のすべてを踏みにじられた自分の人生がただの天命だと思っていた。抗いようのない運命なのだと思っていた。


 違った。すべてが、仕組まれた偶然だったんだ。


 ――コイツの……コイツのせいで私はっ!!!!


 蓼山(たでやま)達と向き合った時に思った事を思い返す。抗う力がないから、自分はなにもできなかったと歯噛みしながら……同時に、なんでも出来る一樹の強さに憧れた。


 そうだ、不幸など、力があれば立ち向かうことができる。

 だが、自分に力などあるのか……?


『なにか不気味』

『自分達となにか違うっていうか……』


 ある、はずだ。その力をくれたのは、奇しくも目の前にいるこの男なのだから。笑い続ける伯父を見据えながら、ボロボロになった体を奮い立たせて六花は立ち上がる。

 皮肉にも、彼女を奮い立たせた契機は伯父が口走った「国柴の血」。


 ――魔術の出し方は……身に染みてる。


 これでも六花は魔術の事を知る"裏"の人間だ。伯父の口ぶりや今までに受けてきた魔術から、国柴家がただの家ではなく、"裏"に関する事であることは気付いていた。だからこそ、今ここで六花が確信した"力"も、刃物や鈍器と言った武器ではなく魔術だったのだ。

 目の前のこの男が、毎日のように身を以て教えてくれたのだから……体の中が熱くなっていく。生まれて初めて覚えた強い怒りが込み上げてくる。


 ――一樹くん……もう一回、君に会うためなら、私は……私はっっ!!


 強さの、イメージとして彼女が思い浮かべたのは一樹。彼と遊んだ砂場。自分が作る砂の造形物を、やけに褒めてくれた事を思い返す。


 パキッ、と

 六花の足下にあった石が砕け散る。見てみれば、いつぞや一樹と冒険した時に拾った大きな石が崩れ落ち、細かい砂へと変わっていく。風もない家の中だが、砂は一定の気流に乗ったかのように六花の周りを渦巻いていく。


「……あぁん!? 待て、お前、それは……召喚かっ!?」


 伯父の憤怒が驚愕に変わる。視線は六花の足下に寄せられていた。そこに目を向けてみると……


「虎……?」


 子猫ほどの小さな虎の姿があったのだ。かつて誕生日にもらった虎のぬいぐるみによく似た、可愛らしい虎だ。しかし、伯父に向けている眼光は大人も顔負けするほどの敵意を秘めている。虎が低く唸る度に、足下に広がる岩が次々に割れて砂へと変わっていく。その度に六花を渦巻く砂は増えていき、気付けば部屋中に膨大な砂が待っていた。どこから現れたのか、六花は疑問に思うよりも先に納得をした。


 今を変えたいと言う強い思いが表れた先に現れる魔術。自分にとっての強さの象徴。


 両親からもらった形見(おもい)と、

 一樹からもらった勇気(すな)


 その思いが魔術となって表れたのだと、六花は感覚的に理解したのだった。


「六花、そうか。お前も――」

「その名を、呼ぶなぁっ!!」


 六花の怒りに呼応するように、巻き上がった砂は触手へと形を変えて、伯父の元へと殺到する。タコの触手が獲物を捕らえるかのように、複数の砂の触手が伯父を捉え、形を崩しながら埋めていく。その塊はコンクリートを思わせる固さを誇っているようで、抵抗する伯父に次々に貼り付いていく。

 六花の激情は止まらない。


「全部、全部全部全部お前のせいだっ!!」

「ま、まってくれっ!!」

「お前さえいなければ、私はっ……わたしはっ!!」

「助けて――」


 伸びた手から、今にも消え入りそうな声が聞こえてくる。

 かつて自分がやっていたように、血に塗れた手が助けを呼んでいる。


 ――助けて、だと?


 六花の脳裏に過ぎるのは虐待の日々。散々虐げられた思い出が幾度も幾度も蘇り、この男に対する迷いが薄れていく。


 ――どの口がそんなことを言うんだっ!!

「汚い血を見せるなぁぁっっ!!」


 ぷちっ


 空気の詰まった袋を開けたかのような奇妙な音と共に、六花の体に気味の悪い液体が降り注ぐ。

 同時に、伸びていた手が、ごとっ、と落ちる。肘から先は、血がどろりと流れるだけだった。

 真っ赤な血で濡れた砂が、ぼと、ぼと、と固まって床に落ちていく。


 全身を襲う気持ち悪い感触に、六花はようやく冷静さを取り戻す。


「はぁ、はぁ……おっ、伯父さん……?」


 興奮から昂ぶった鼓動を押さえるように、肩で呼吸をしながら六花は恐る恐る伯父に声をかける。


 ・・・・・・


 声など、帰ってこない。


「あっ、あはは……」


 帰ってこないことに少しだけ不安を感じている。それでも、六花は笑っていた。


「あははっ……なんだ、簡単だった……」


 誰もいない部屋で、彼女はただ笑う。

 笑いながらも、血で濡れた頬を拭うように目からは涙が流れている。

 涙の意味など、少女には分からない。


 ――これから、どうしよう。


 膝から崩れ落ち、真っ赤に染まった砂を握り締める。


 ――とりあえず……このことは、伝えなくちゃ。


 今まで使ったことなどなかったが、確かどこかに電話帳があったはずだ。叔母に電話をして、伯父のことは伝えなくては。虚ろな足取りだったが、六花は砂と血が広がった部屋を後にする。


 部屋の隅で怯えきっていた少女はもういない。


 ***


 ――叔母さんか、久しぶりに会いたいな。


 その後、しばらくの間は叔母の元でお世話になっていた。彼女もまた、"裏"の仕事に就く人間だった事もあり、魔術の事を教わった。しかし、叔母は六花には"表"の人間でいて欲しかったようで、途中から教えてくれなくなってしまった。


 "裏"の世界に身を置けば、伯父が散々嫌っていた国柴のことが分かるかもしれない。

 そして、いなくなった一樹に関する情報を手に出来るかもしれない。

 そう思い込んでいた六花は、半年もしないうちに叔母の元を抜け出して"暗黒街"へと向かったのだ。


 ――会えるわけもないか……とてもじゃないが、顔向けなどできん。


 そこからは誰の助けを得ることもなく、ただ1人で生活をしてきた。生きるためとは言え、口にするのは憚られることも沢山やってきた。

 何が何でも生き延びてきたのは、ひとえに一樹に会いたいがためだった。


 そんな日々の中でやさぐれていった彼女だったが、あるとき天啓を得る。

 いつだったか、リンやウララとケンカをしていた時だ。「次の任務があるからっ!!」と落とした写真に一樹の姿を見たのだ。成長しているとは言え、幼い頃の面影もあるその写真を見て六花は雷に打たれたような錯覚を受けた。居ても立ってもいられなくなって"暗黒街"を飛び出して日浪市へと移った。高校に入るときに、戸籍に関して色々と面倒な手続きが必要だったが、そんな手間が気にならない程に高揚とした気分で向かったのだ。


 その日、草上姉妹に合流して彼女達の悪巧みに手を貸したが……騙されて今に至る。


 ――なんて、下らない人生だったのだろうな、私は……。


 砂嵐を出し続けていることで、徐々に魔力が消えていく事が分かる。もう3分もあれば、この辛さからも開放されるだろう。


 ――ようやく……終われる。


 ティグレの毛並みに顔を埋める。乾いた感触がどこか心地よくて……ふと、両親のことを思い返す。


 ――お父さん、お母さん……すぐ、会えるね。


 優しかった二人の元に行けるかどうかは分からない。自分が天国に行ける人間だとは思っていないが、しかしそう思うことでどこか心が楽になった。


 ――だけど、それ以上に……。


 それでも……彼女の心を占めるのは――


 ――もう一度、"君"に会いたかったな。



 その時、耳に響き続けていた砂嵐の音が、一瞬だけ止む。



 顔を上げれば、砂嵐を断ち切るように差し込まれた日本刀の鋭い切っ先が。まっすぐ突き付けられた刀に纏われた"風"の奔流は、細い刃渡りの日本刀を実物よりも巨大な大剣のように錯覚させる。

 魔術とは意志の強さ。その強さを表すような巨大な風が渦巻いた日本刀は、渦巻く竜巻に抗う形で振り払われる。綺麗な一閃と共に、その付近の砂嵐は止み、僅かながらも空間が生まれていた。


「あっ……あっ……」


 刀を振った軌跡の上には砂嵐はない。砂と砂の間に見えるは少年の影。


「よう、昨日ぶり」


 静かな口ぶりだったが、その声は確かに六花の耳に届いていた。

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