春がきた
あぁまた桜の咲く季節…
この季節に思うのはただ一つ。
春が来た
「あの、彼女いるんですか?」
「いないよ?いきなりどうした?」
「ぢゃあ、あたしと付き合ってもらえませんか?」
今思えばなんて可愛くない言い方。
どれだけの自信があったのか…
いや、自信ぢゃない…
ただ寂しかっただけなのだ。
「え、まぢでどうした?」
「率直に答えていただけますか?」
あたし、どうかしてたね。
「いいよ。」
あぁ、なんとも言えない感情。
この人は、あたしより二つ年上の部活の先輩。
一年生の時からずっと憧れてて二年生の終りに告白した。
もちろん好きだったけど、何日か前に彼氏と別れたので
その寂しさをまぎらわすために先輩に言い寄った。
…というのが正しいのだろう。
そんなことを知らない彼は
とても優しくて、気持悪いぐらいだった。
メールもまめだし、何かと気遣ってくれる。
彼は高校生だったのに毎日あたしの中学校まで通って
毎日一緒に帰って…
自分が最低だと思いながらも
愛されてるってこういうことを言うんだなって思った。
自分に都合が良すぎる。
だけど毎日が幸せだった…。
あたしが風邪ひいてて、初めてした長電話。
電話代が半端ないかなとかくだらないこと思ったけど
やっぱり幸せだった。
彼は本当に音楽が大好きで
ディズニーランドに行きたいと言った次の日には
「今日ひま?楽器屋行かない?」
どこまでオタクなの。
あたしはディズニーランドに行きたいんだってば…
だけど笑って許せる自分がいて…
彼と一緒にいるようになってから
あたしは変わっていったみたい。
でも長くは続かないって本当なのかもしれない。
出会いがあれば別れだって当然ある。
あの時は予想なんてできなかったけど
あたしたちにはその先が長すぎた。
彼の異常な程の束縛に耐えられなくなって
彼に別れをきりだした。
「もう戻れないの?」
…そう、もうあたしは我慢できないの。
「無理です。」
「ぢゃあ分かった。でもまた明日中学行くから。」
…最後まであなたらしいのね。
こうやって思わないと
自分が自分でいられなくなる気がして
とても怖かった。
やってることは残酷すぎる。
約一ヶ月間先輩を振り回して恋愛ごっこをしてたの?
いや、本当に好きだった。
だけどあそこまで束縛が強いと思わなくて
彼を受け付けられなくなってしまった。
それから約一年後…。
彼はあたしの歌を作った。
はっきり言って未練たらたらな歌。
誰が聞いても分かるだろう歌。
あたし、なんでこんなに思ってくれる人と別れたんだろう…
もう時は遅すぎる。
彼がどんなに苦しんだのかは計り知れないし
あたしがそれを知ったところでどうしたらいいのかは分からない。
中途半端な気持ちでずっといたあたしに
神様が罰を与えたんだろうね…
でもやっと自分に正直になれた。
彼と別れたことをずっと引きずってた自分に気づいた。
だから最後に一回会って素直になろうって。
決めた。
もしかしたら
これからあたしが生きる中で
彼の存在は"通過点"でしかないかもしれない。
それぞれめぐり会う人って
みんな"通過点"なんだろうなって思う。
だけど"通過点"にするもしないも自分次第。
なんか良く分からないけど
彼を"通過点"にしたらいけない気がした。
あたしの中でずっとしまっておこうって。
本当に最後まで自分勝手な女で
うんざりしたでしょう。
だけど運命ってどうすることも出来ないもの。
あたしはあなたに出会えて良かった。
人間の優しさという部分を始めて感じることが出来た。
だけど運命ってどうすることも出来ないもの。
あたしはあなたに出会えて良かった。
人間の優しさという部分を始めて感じることが出来たから。
あたしばっかりいい思いしてごめんね。
もっとあなたにふさわしい女になりたかった。
誰かに愛情をもらうだけぢゃなくて
誰かに愛情を注がなきゃ上手くいかないみたい。
愛情の量は二人で合わせて100になればいいと思う。
同じ量の愛情を持ち合わせるって
すごく難しいから。
今のうちにたくさん傷付いて、傷付けて
いろんなことを学びとるしかない。
後で
「あの時は失敗したな〜。」
とか思うことがあるけど
その時はそれが精一杯だったんだから
もう二度と同じ過ちをしなければいいの。
あたしはもっと素直に相手を受け入れることから始めるつもり。
これからあなたが感じたことを
少しでも感じとれるように
誰かを愛するつもり。
喜びや悲しみ…
なんでこんなにたくさん感情があるのかな…
なにも感じなくたって、生きていけるのに。
あ、また桜の花びらが…
あたしの手のひらから地面へと
ひらひら吸い寄せられていく。
ねぇ、あと何回一人で桜を見るのかな…。
End
読んでくださってありがとうございました。感想などいただけたら嬉しく思います。