三 未知の世界 No,1
意識が戻ると二人は森の中、木の根元に転がっていた。
海斗が起き上がろうとすると、何かがのしかかり、身動きが取れない。
「あ?」
のしかかっているものを確認すると、少し頬が赤くなった。
美由だった。
海斗は慌ててどかす。
その拍子に美由は目を覚ました。
「ん・・・・・?」
美由は辺りを見回した後、海斗に向き、平凡でポピュラーな問いを出した。
「ここどこ?」
海斗は最も簡潔な答えで受け答える。
「森」
それが今の現状で説明できる限界。
「見れば分かるけど・・・」
美由は呆れた、という風に木にもたれかかる。
その時、その木が震え、くねくねと動き出す。
「こらっ!そこの女!私に気安くもたれるでない!樹皮がはがれるだろう!」
一番驚いたのは美由だろうが、海斗自身も心臓が軽く1時間止まるくらい驚いた。
「うっわ!?」
美由は飛び上がり(比喩ではなく、本当に飛び上がった。)転がるように離れた。
「痛い痛い!離れるときは静かに!あぁ・・・樹皮がまたはがれた・・・」
木は現在進行形で叫び続ける。
現実にこんな木は存在しないとは思う。
世界中探したらあるかもしれないが。
海斗は夢であるか確かめるために自分の頬をつねる。
その様子を見た(?)木は枝を海斗の頭に振り下ろす。
「いてぇっ!」
「夢じゃないぞ!少なくとも渡しはそう思っている!」
この木は木が利くのか利かないのか分からない。
とにかく人を驚かせるのは得意なようだ。
「おっと、魔道騎士団のお通りだ。そこの二人、私の根元でもいいから道をあけなさい、おおそうだ、なるべく根っこを蹴ったりしないようにな・・・そうだ。」
二人は何がなんだか分からずにも、木の根元に寄る。
しばらくすると複数の人間が地面を踏みしめる音が聞こえる。
「なに?」
美由が小声で海斗にささやく。
「しらねえよ。この辺詳しくないしってかここ現実か?」
そうしている内に魔道騎士団とやらが姿を現す。
まず目を引くのは眩しいくらい美しい装飾の服装。
先頭の人間は羽が生えたような鎧のような物を着ている。大将の目印にも思える。
その後ろを歩く兵士のような人間は鎧全てが白をベースに作られている。
先頭の人間は二人の前で立ち止まり、その後ろの人間は同時に立ち止まる。
「トレントよ、先ほどおぬしの叫び声が聞こえたのだが、何があったのだ?」
「騎士団団長様、大した事ではありません。ただこの二人が私めの樹皮を少々はがしただけで・・・」
「そして久しぶりに人間と話す機会が出来たから嬉しくて仕方が無かったと?」
「はい、まことに恐縮ながら・・・」
そのトレント、と呼ばれた木はかなりへりくだった様子で話している。
「ふむ、そこの二人、あー・・・・なんと呼べばいいかな?まぁ後で聞くとしよう。トレントが脅かしてしまった様で申し訳ない。ただ悪気は無かったんだ、少しうるさいだけで。早速聞きたいのだが、この世界の何処の国から来たのかな?それとも向うの世界から?あ、向うの世界とは・・・どう言おうか・・・まぁ君たちがここのことを知らなかったらその世界から来たのだろうが、その服装から察しは付くがな、まぁ念のための確認だ」
その騎士団長とやらはグダグダと長文をまくし立てるのが好きらしい。
海斗はぽかんと口を開けている。
美由はその顎を下からはたき、顎をしめた。(そして海斗は舌を噛む羽目になった。)
「えーと、向うの世界から、の答えでいいんですよね?騎士・・団長さん?」
「正確には魔道騎士団団長だが・・・向うの世界からか。そうか、またあいつ等か」
「あいつ等ってローブの男達のこと?」
「特徴的にはそうだ。組織名を言うならば『ゲーター』というが」
「ゲーター?」
美由はほとんど状況を飲み込めていない海斗を横目で見ながら再び質問する。
「話すのも疲れてきたから、簡潔に言わしてもらう。ゲーターとはこの世界・・・あえて言うならば異世界、だが。その異世界から君たちの住む世界、現世といっておこうか、現世への通路を作り、行き来するものたちの組織だ。それだけなら害は無いが、やつらは現世の『危険区域』と指定される・・・何を基準にされているかは分からないが・・・場所を破壊する、消滅だな、消滅させているんだ。だが、その破壊行動の中で数少ない生き残ったものたちは奴等の通路に入り込んでしまって・・・その後は君たちの直面している場面と同じだ」
「うん・・・あんまわかんない・・・」
美由は頭がずきずきするのをこらえながら言った。
「分からなくていいさ、最後に言いたいことは、我々はその『被害者』を保護し、生活を援助する役目を持っているということだ」
「ふぅん・・・・・っえ!?」
「ということで君たちを連れて行くわけだが、ああ・・・勘違いしないでくれよ?君たちを捕らえて指を一本一本切りながら現世について探りだそうなどとは考えていないから」
やっと節目?を越えました・・・・w
何か無理矢理話を持ってきちゃったような感じになったっぽいですがOTZ