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第3話「北畠さん」

斯波は、行ってしまった…

俺は今、北畠と再び2人きりに。

北畠は、席を立ち、俺の正面へ座る。


「北畠さん、ひどいよ!どんな風に見えますか?なんてさ?」

「ごめんごめん!ちょっとやってみたくなっちゃって」


ダメだこりゃ。


「もう、いいや…」


北畠しずくはもしかして、こう見えて案外抜けてるというか飛んでる人物なのか?怒る気力が抜けていった。


「気になったんだけどさ、Horizon北畠さんも好きなんだよね?自分も聞いてめっちゃ良いなと思ったんだけどなんか、そのー意外というか…」


「え!?良かった!?え!?え!?具体的にどこら辺が?」


北畠は、何故か上機嫌だ。お前の作った曲じゃないだろう…


「そのー、女性ボーカルでさあのシャウト?演奏もレベル高いし、自分もさ高校時代、軽音楽部に居たんだよね、だから何となくだけど凄さが分かるんだよ!」


俺はサブスクからダウンロードした画面を北畠に見せる。


「今日、ファンになりました」

「はぁーー!嬉しいな!ありがとう!もっともっと聞いてよね!」


スマホを差し出した俺の手を柔らかい小さな手で握りしめる北畠。

だから、そのキュンポイント止めてよね。


「気になるんだけどさ、何で北畠さんそんなにHorizon好きなの?なんかさっきから自分のことのように喜んでるけどさ?」


気になっていた疑問を鋭く俺はぶつける。


「…それは」


北畠の言葉が詰まる。


「あ!?いけない!忘れてたんだ!ごめんね!北条くん!また、話そ!ご飯ご馳走さま!」


北畠は、何かを思い出したかのように勢いよく立ち上がりそそくさと店を出ていく。


ん?今、ご馳走さまって言わなかったか?俺は聞き逃さなかった。


「斯波!北畠!あいつら、会計してないじゃねーかよ!俺の奢りかよ!チクショー!!」


2人に大きな大きな2600円の付けがつく。

絶対に返してもらうからな。覚えてろ!


今日は、人生で恐らく最初で最後であると願いたい衝撃的な1日。

俺は、帰りの電車で爆睡し、最寄駅を通りすぎ、隣の駅から歩いてようやく家に辿り着いた。

疲れた体にもう一息とエールを送り重いドアを開ける。


「ただいま…」


階段をダダダンッと勢いよく降りてくる物体が俺目掛けてダイブしてくる。


「洋くん!ッどうしたの!?どうしたの!?何時もより遅くて心配したんだからね!お姉ちゃんは!」


「姉貴、、疲れてるから、離してくれないかな…」


「恥ずかしがらなくていいのに!昔はお姉ちゃん!お姉ちゃん!って来てたのにねぇ!思春期?遅めの?」


ガシガシと俺の頭を撫でる。


「やめろよ!姉貴!」


長い整えられた髪に差し色で青色が入っているモデル系の女こそ、俺の宿敵、北条華怜(ほうじょうかれん)実の姉だ。


「そんなんだから、モテないんだぞ…」


華怜は、ムスッとし、俺を睨む。


「だったら、洋くんは、どうなるのさ!まだ、大学友達0人でしょ!どうせッ!」


俺は、負けじと言い返す。


「いるね!姉貴と違って2人!2人!いるから!友達いるから!」


華怜の顔に高らかに2の数字を指で掲げた。


「あれ?前まで1人だったけど…新しい友達できたの!?教えてよ!どんな子?イケメン?…それとも女の子!?」


しまった…残念系の姉貴に一泡吹かせようとした俺が、調子乗って北畠さんを数にいれてしまった…

マズいマズい。


「いいだろ!そんなこと!俺は疲れたんだよ…」

俺は華怜を押し退け2階の自室へ向かう。


部屋は、最高だ。1人の空間、そして誰からの邪魔もない。今日は色々あった、だから一先ずベッドで休もう。

ふかふかのマイベッドヘ俺はダイブした。


「痛ッ!」


何か聞こえた気がしたけど俺は気にしない。疲れてるんだきっと。いち早く、寝て頭を休ませなければ。


「痛ッて、言ってるじゃん!!もう!」


あれ?さっきまで天井が見えていたのに今は床?

と言うか、背中が痛い。何か強い衝撃を受けたような…


「お兄ちゃん!萌花(もえか)がいるの、気付いてよ!せっかく、気持ちよく寝てたのに!バカッ!」


俺は、背中を擦りながら起き上がる。

今度は、コイツか…と思いながら。

俺のベッドで寝ているバカは、俺の妹、北条萌花(ほうじょうもえか)、俺は残念な姉貴こと華怜と萌花に挟まれた、冴えない次男坊なのだ。


「萌花!そこ俺のベッドだから!何でいるんだよ!俺の部屋に!」


「いいじゃん!兄妹なんだよ!そんなの普通じゃない?」


「いや、一般家庭でそれ普通だったら大炎上だよ...」


物理攻撃をしてきた萌花に俺は呆れ返る。


「寝るんだったら姉貴の部屋で寝ろよ…年頃の女の子だろ…年頃の男の子の部屋は刺激が強いんだぞ!」


早く部屋を出ていって欲しいと思った俺は、世の中の同世代の男たちの欲望の恐ろしさを身振り手振りで萌花に叩きつける。


「刺激って、お兄ちゃん…もしかして…」


萌花は、不適な笑みを浮かべそっと何かを持ち上げる。

「や、やめろ!バカッ!」


俺は、焦る。萌花が持っているのは、斯波から借りた少しセクシーな漫画。


「何々?『お胸が大きいエルフはお好きですか?』この漫画は、とても刺激が強そうですね…でも、大丈夫!萌花は、好みじゃないので!」


「おい!返せっ…ったく…」


「姉貴もお前も何でそんなにスキンシップが近いんだよ!俺の部屋から出てけ!早く!」


萌花を部屋の外へ追い出し、部屋のドアを思いっきり締める。


「はぁ...」


深い深い溜め息を吐く。

今日は本当に俺の処理能力向上の試験日か何かか。

本当に疲れた。

明日は休み。

もう、このまま今日は寝てもいいか。

再び俺はベッドへダイブした。

勿論、萌花は、追い出したので安心だ。

深呼吸をして、目を閉じる。久しぶりの静寂。

あぁ、1人って何て幸せなんだ。

数分後、静寂を邪魔するラインの通知音が部屋に響く。


「ん?こんな時間に誰…」


虚ろになりかけていた目でスマホを見る。


「北畠しずく『今日はごめんね!次もまた座禅堂で話したいな?洋一くんが良ければだけど...あと、牛丼ご馳走さまです!お休み♪』北畠さん!?」


「『いえいえ!僕は全然いいよ!あと、牛丼だけどあれは奢っていないのでしっかりとお代金返してね♪おやすみなさい』」


俺は、スマホを台へ置く。

目を閉じ、天井を見つめる。


「座禅堂、もう俺1人の秘密基地じゃなくなっちゃったな…」


秘密基地が、そうでなくなってしまったことは悲しかったけど、何故かそこまで辛くない。

多分、これは北畠さんとまた会えるからなのであろうか。

そう考えていると次第に思考は止まっていき、睡魔に襲われ俺は爆睡した。






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