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第2話「なんて日だ」

座禅堂で北畠しずくと出会った俺は、浮かれて講義の内容が入らないでいる。

まぁ、いいよ。この講義はテストで持ち込みOKらしいし。なんて、俺向きな講義だ!ぼっちでも安心していられる。

そんなこんなで、講義は終わり帰り支度をしているとただならぬ気配を感じる。この気配は、もしや、、


「北条殿。今日もワントップのフォーメーションで授業参加ですか?」

この妙に甲高く貫禄のある声は、アイツか…

「斯波?斯波もこの講義受けてたっけ?」

「おい!前言っただろ!」


ゴツンッ!


力加減を忘れたツッコミの手が俺の背中を叩く。

斯波琢磨(しばたくま)、同じ学部で同学年。

2人しか居なかった教室で気まずくなって話しかけたら自分の倍以上の話をしてきた男だ。

悪い奴じゃないし、唯一に近い話せる人だから嬉しいがなんか苦手なんだよな…


「北条、そういえばさこの前話してたアニメ見た?」

「確か、終末世界へようこそ!だっけ?」

「そうそう!それのさ、オープニングがめっちゃ良いんだよ!今から帰りだろ!この良さを語らせてくれ!」

「あ、あーいいよ!じゃあ、大学前の牛丼屋にする斯波?」

なんか、今日は疲れたし早く帰りたかったが斯波の圧に負け牛丼屋へ行くことにした。


教室を出て歩いて約20分程か、俺たちは牛丼屋に着く。カウンター席には目もくれず、俺たちは長居前提でテーブル席へ。これは長くなりそうだ…


「北条は、何頼む?」

「牛丼並みに、豚汁かな、あぁ、とろろトッピングしよ斯波は?」

「私はですね、、、しょうが焼き定食に、うーん、サラダに、おしんこもいいなぁ、それと、」

頼みすぎだろ!早くこっちは帰りたいし!

座禅堂で一人だけのランチも出来なかったし!

少し嫌味っぽく俺は、呟く。

「よく食べるな…」

「うるさい!」

力加減を忘れたツッコミ本日2回目。

「そういえば、アニメのオープニングがどうとか言ってなかったっけ?」

「そうそう!それそれ!滅茶苦茶カッコいいんだよ!」

「ふーん具体的に?」

「Horizonってガールズロックバンド知ってる?」

斯波の目はキラキラに輝いている。これは、そのバンドメンバーに惚れたなコイツ。

「聞いたことはあるな。そのHorizonの曲が良いんだ?」

「そうなの!とにかくさぁ!聞いてみて!」

差し出されたイヤホンを耳に。

想像していたより激しい曲だった。でも、なんて綺麗な声なんだそして、このシャウトカッコいい!ギターのリフも最高だ!

高校時代、軽音楽部に所属していた俺の心に火がつく。

一度は、憧れた世界。でもやっぱり、自分とは次元が違う。

「確かにこれは、良い!早速サブスクからダウンロードっと!」

「良かったー!北条、音楽結構聞くって言ってたから絶対ハマるって思ったんだよね!」

「斯波さあ、1つ聞いて良い?」

「何々?」

俺は、斯波に爆弾をぶっ込む。

「このバンドメンバーの誰かに惚れただろ!」

「ヴぇッふっ!そ、そんなわけないですから!あのー純粋にHorizonの音楽好きだったから。うんそう、ボーカルのSIZがめっちゃ可愛いなんて思ってないから!」

斯波の目はメリーゴーランドで回りすぎたように回っている。俺の予想は的中。

「ははあーん!そのSIZが、好きなんだな!お前!」

さっきの力加減を忘れたツッコミの仕返しだ食らえ馬鹿野郎!

「や、やめろ!違うから!違うから!SIZのクールなあの感じがカッコ可愛いなんて思ってないから!」

「シー!!おい!バカッ!声でかいぞ!」

ちょっとやりすぎたか。斯波の声は牛丼屋に響いた。


ゴホンッゴホンッ!!


斯波の放ったSIZへの告白に反応し咳き込む声。俺は、カウンター席を見る。

そこには、見覚えのあるあの顔。そう、北畠しずくがいた。牛丼屋にも、行くんだ。


「ん?北条の知り合い?」

「え?違うよ!」

俺は、嘘を付く。こんな場面を見られたくないし斯波にツッコまれそうなので届いた牛丼を黙々と食べる。

「いや、多分知り合いっぽいぞ」

「なんで?そう思う?」

「だってずっとお前の方見てるもん…」

俺は、恐る恐る顔を北畠の方へ向ける。

何をそんなに照れる?そんな顔でこっちを見ていた。

可愛いな、、あんな顔もするのか。

「北畠さん?」

北畠は、カウンター席からトレーを持って俺と斯波の席に歩いてくる。

「北条ッ!どういうことだ!知り合いじゃねーかよ!嘘つくな!」

小声で囁く。

「まあ、そのー、なんだそのー、、、、」

なんと言えば良いのか?変に伝えたら絶対コイツは茶化してくる。それは嫌だし、北畠にも失礼だ。

そんなこんなで上手く俺は答えられない。

そんなモジモジしてる俺に容赦なく北畠は、猪突猛進に迫る。


「北条くん、私も一緒にいいかな?」

「あ、うん」

北畠は、俺の隣に座る。

目に光を失いつつある斯波は完全に外向きな口調で

「そのーお二人はどういうご関係で?」

「どんな風に見えますか?」

北畠は、テヘッと口角を上げた。

俺は、焦る。どんな風に見えますか?って何この発言。

好きなの?俺のこと?え?

「うーん、、これは、付き合っていらっしゃる、、、」

修行僧の如く、悟りを開いたような目付きで俺たち2人を見る。

違うぞ!斯波!今日知り合った仲だ!断じて付き合ってなどいない!

心の中で俺は叫ぶ。

「北畠さん!ちょっと!ジョーク利かせすぎだよ…全く、、今日、偶々、出会って話した仲だよ!斯波!ねぇ北畠さん?」

「私は付き合っても良いかなって思ったけど…なんてね!」

「ゴホンッゴホンッ!」

俺は口に含んでいた水を吹き出す。

なんてね!じゃねーよ軽く爆弾発言するなよ!

惚れちまうだろ!

北畠が一瞬小悪魔に見えた。

「仲良さそうでなりより…」

「斯波、頼む誤解するなよ!北畠さんのジョークだからな!」

斯波の目は完全に光を失っていた。

「自己紹介忘れてました!北畠しずくって言います!斯波くんよろしくね!」

「はっ!?いや、こ、こ、ちらこ、そ、、よろしくお願いいたします!斯波琢磨って言います!」

「斯波くん、さっきHorizonの話してたよね?どう?Horizon実際のところどう?」

「それなら、北条に話してた通り!めっちゃカッコいいですよね!北畠さんもファンなんですか?」

「あ!?うん、、私も大ファンなの!」

俺は一瞬だが北畠の異変に気付いた。

何故か一瞬目が泳いだのだ。

本当に好きなのか?それか何か理由が他に?


プルルルルップルルルルッ


「ごめん!電話だ!ごめん2人ともちょっと抜けるわ!また、機会があれば話の続きをしようよ北畠さん!」

斯波に緊急の連絡が入った様子。

斯波は北畠さんにサムズアップをして店を出ていった。

こうして、俺は再び北畠さんと2人きりとなる。

神様、俺今日死ぬんですか?



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