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第1話「出会い」

高校時代というのは何故、あんなに華やかだったのか。

あぁ、恋しい。あの時間が恋しい。


俺は、溜め息を吐き、ステンレス製の教室のドアを引く。

「お、重いな」

教室のドアは、俺を阻むようにスムーズに開いてくれない。まるで、お前の来る場所じゃないから立ち去れと言わんばかり。

「なぁ!そうだよな!俺もそうだと思ったんだよ!てかさ、今日また打ちにいかない?あそこ当たるらしいぜ!」

「お前、それだから金無くなるんだぞ!バカ!今度は貸さねーぞ!」

バカ笑いをしながらザ、陽キャさん達が近づいてくる。

「あ、あれ?なんで開かない、、」

まだ教室は、俺を拒んでる。やめてくれよ!早く入れさせてくれよ!気まずい気まずい!早く!

陽キャさん達は、遂に俺の真後ろに。

「なにやってんの?」

「あ、、、いや、その、扉開かないみたいで、、へへッ!」

何がへへッだ。今日一番のひきつった笑顔を陽キャさんに届ける。俺も、、一応陽の部分あるから!陰じゃないから!ね!ね!

「あぁーそういうことね、ここの教室古いからな!変わってみ、ヨイショッと!」

教室の厳しい審査をこの陽キャさんは、通ったようだ。

「あ、ありがとう!」

「てかさ、あの教授話長いからさ早めに帰るために後ろ行こーぜ!」

「さんせーい!」


無視かよ!この野郎!!いや、俺の声が小さかったのか、、


教室の席は、決まって最前列か2列目。

なんでかって?それは、勉強するために大学に来てるんだから!と言いたいところだか、実際は授業内容を聞く人が居ないから。4年間という長い長い戦いを生き抜くためには己のみを信じろ!


曹洞学院大学、経済学部、一年、北条陽一の大学生活が始まるのだった。

曹洞学院大学 経済学部 一年 北条陽一(ほうじょうよういち)は、古びた教室で講義を受けている。


「星座と言うのは、過去の偉人達が色々な想像をして今に至るんだよね!何も気にせず見ていた夜空を今日説明した内容を踏まえて見上げてみるときっと、見え方が変わるよ!ねえ!」

今、俺は一年の必修科目である教養Aと呼ばれる講義を受けている。

選んだ理由は勿論一番人気が無さそうだったから。

人気がない=人が少ない!

なんと俺向きな授業!


「ね、眠い、、、」


心の中で呟く。


「よし!じゃあ!今日は外国のドキュメンタリーなんだけどさ!星座について特集された面白いものがあったからこれを見よう!電気消すね!」

小柄でおっとりとした教授が俺を完全に寝させに来る。教授は、リモコンを手に取りプロジェクターを下ろす。そして、ドキュメンタリーは、始まった。

「太古の人々は、想像力がとても豊かでした、見てくださいこちらの壁画を…」

海外ドキュメンタリーでありがちな気合いのはいったアフレコ。いや本人そんな暑苦しく多分話してないよ…

映像を俺は、見るだけは出来ない。もしかしたらここもテストに出るかも…ちゃんと見ず寝たりもしてもしテストに出るなんて…聞けない…聞く人居ないから己のみを信じろ!陽一!

ノートにメモを取るがいつの間にか字が大きくなったり象形文字になったり。


キーンコーンカーンコーンッ


「はい!じゃあ今日はここまでね!お疲れ!また来週!」


あいつ死んでるんだぜ…まるで生きてるみたいだろ…

最前列で眠気と格闘した俺は、まるで授業をしっかり受けていたような体勢で寝落ちしていた。


何故、寝てしまったのかと後悔しながら教室を出る。


俺の通う曹洞学院大学は、所謂総合大学で学部が多い。その為、必然的にその学部をカバーする為にキャンパス面積が広いのだ。県内ナンバーワンとの噂も。

最寄の駅からバスで大学まで向かいそこから歩いて約15分程で教室につく。

時間は余裕をもって行動するべし。これ絶対!

一年である俺は、勿論1限がある。

時間に余裕をもって行動しているので寝不足気味だ。


くぅー


「ああ、そういえば朝ごはん食べてなかった…はぁー扉は開かないし、無視されるし、寝るし、最悪だ…」


お腹はもう限界。早く飯を飯を!食べなければ!


俺には誰にも教えていない、いや正確には教える人もいないのだが…秘密基地がある。

小鳥のさえずりを聴きながら、小枝が風で重なりあう音を聴きながら、落ち着いて弁当を食べれるあの場所が。

空腹が限界に来ているので早歩きであの場所へ向かう。


「あ、あれ?え?」

秘密基地こと、キャンパスの一番端に位置する座禅堂。ここが俺を優しく包み込んでくれる秘密基地。

勿論、中には入れないが弁当を食べるぐらいなら屋根もあるし最高だ。


最高だった…


俺の秘密基地には、先客がいた。


「ここ、他の人も来るんだな…教室で食べるか」


枯山水のように整えられた地面をなるべく音を立てないようにクルッと一回転し空き教室を目指す。


「あなたもここで?」

「え?」

驚いた。話しかけられたのか俺。と言うか気付かれてた。恥ずかしい。

「あ、いやー、座禅堂あるんだなって!すみません!ご飯中に邪魔してしまって!」

即席の嘘を発する。

「そんなことないですよ!私以外もここ使うんだってビックリしちゃいました(笑)それで声かけちゃいました」

普通に見抜かれてる…

俺の目の前にいるのは高校時代を思い出して例えるならクラスの男子の人気が集中しそうな綺麗な人。そんな人がなんでここに。


「学食いく人多いみたいですけどなんでまたここに?」

「あそこ、少し嫌なんです…騒がしいしあの空気感どうも苦手で...」

「あぁ、、確かに!その気持ち分かるかもです」

「でしょでしょ!あ!?すみません!馴れ馴れしく言ってしまって」

「いえいえ、気にせず(笑)」

こんな綺麗な人でも、同じ気持ちの人が居ることに驚きながら愛想笑いをする。


「あの、、さっきから気になっていたんですが距離遠すぎません?(笑)」

「え?あ!?た、確かに」

空き教室で食べる予定だったし、話しかけられるとも思わなかったし、目の前にいるのは美人さんだしそれは、この距離感で話しますよね普通は!と早口で心の中で叫ぶ。

「ここで、食べてるんですよね?なら一緒に食べましょ?」

「いや、座禅堂を見に来ただけで…」

ここに来ても嘘を突き通す。こんなチャンス無いだろ!行っちゃえよ!と心音が高鳴る。

「もう!バレバレですって!」


ザッザッザと彼女は枯山水を歩いてくる。

ぐいっと俺の腕を掴んで占領された秘密基地へ連れていかれる。

これ、ラブコメで見る展開じゃん!

やめろ!ニヤけるなよ!絶対に!

高鳴る心音を落ち着かせながら、彼女の横に座り、弁当を開ける。

空腹感は、この一瞬で翔んでいっていた。

お腹はいっぱいだ。食べれない。


「え!いっぱい具材が入ってますね!」

「あ、、昨日の残りかな多分ですけど…」

おい!母さん今日によってなんで張り切って弁当を作ってるんだよ!

「そういえばまだ、名前言って無かったですね!すみません!私、北畠しずく(きたばたけしずく)って言います!よろしくお願いします!経済学部一年です!」

「僕も同じ学部で一年の北条陽一です!よろしくお願いします!」

「経済学部1年!?」

2人が咄嗟に発した言葉がハモる。

「すごい、こんなに学部あるのに(笑)」

こんなことあるのかと思いながら弁当を食べる。

生憎、今日はいつものように箸が進まない。

初対面の人と話すだけでも疲れぬのにましてや、ご飯を一緒に食べるなんて…どうりで箸が進まない訳だ。

でも、一生で経験するかしないかの経験が出来ている。良かった!神様ありがとう!

「でさでさ!その授業でね…」

同学年と分かった途端、距離感が先程より近くなった北畠さんの会話に頷く自分。

でも、緊張と余分な思想の絡み合いで殆ど話の内容は頭に入っていない。

そんな、嬉しいような嬉しくないような時間がすぎ、そろそろ次の講義の時間だ。

「ありがとう北畠さん!楽しかった!一人で食べてるときが多いから(笑)」

「私も同じ!こちらこそありがとう!北条くん!」

北条くんと呼ばれた時のキュンとしたこの気持ちはなんだろう。早まるな俺!

「よかったらライン交換しない?北条くん?」

「いいよ!」

俺は、ポケットからスマホを取り出しラインを交換する。

「じゃあ、挨拶代わりのスタンプ送るね!届いた?」

「うん!届いたよ!じゃあ、こちらも!」

「うん!こっちも届いてる!」

「じゃあ、またここで!」

「え!?あ、うん!」


え?また、貴方と2人で弁当を食べるの?カップルじゃ無いんですよ!と思いながらも笑顔で頷く俺。

北畠さんと別れた俺は、次の講義の教室へ向かう。

「はぁ、疲れた。女の人と飯食べるの何時ぶりだ…あぁでも、楽しかった」

ニタニタ笑う俺。教室の扉のガラスに反射する顔。

「うわっ気持ち悪る」

自分で自分見てひいた。

教室の扉は、今回はすんなり開いた。

可愛い女の子と20分もランチをしたんだ。これで陽キャの仲間入りかと思いながらいつもの定位置の席に着く。


これが俺と北畠さんとの初めて出会いだった。






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