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押しボタン式信号機

「先輩、見てください。アレ」

帰り道に後輩が何を指しているのか、僕には一見わからなかった。


「『おしてください』と言っています。押しましょう」


「信号機のアレか」


「はい」

通りにある横断歩道、そこに備え付けられた押しボタン式信号機の電子表示が後輩には気になるようだ。


「そもそも、僕たちの帰り道そっちじゃないよね」


「ですが『おしてください』と書いてあるんですし、押してあげましょう」


「普通に迷惑になるのでやめましょう」


「何故でしょうか」


「分かっいて聞く癖、やめたほうが良いよ」


「まあ、そうですね。でも、なんでわざわざ『おしてください』なんて表示するんでしょうか」


「普通に考えて、ボタンを押してもらうためじゃないか」


「そこです。そもそもボタンは押されるためにあるはずです。誰に押してほしいかも書かずに『おしてください』はちょっと乱暴すぎないでしょうか」


「まあ、確かにそうかもだけど」

どうしてこの後輩はどうでもいいことに突っかかるだろう。


「ボタンを押す人なんて、信号待ちの人しかいなじゃないか」


「その理屈、すこし変な感じがしませんか。『信号待ちの人しかボタンを押さない』というのは常識のはずです。つまり『おしてください』とわざわざ書かなくても、みんなボタンを押すはずなんです」

確かに言われてみれば、そんな気がしないでもない。


「そもそも『おしてください』の情報量ですが、ほぼ無に等しくはないでしょうか」


「いや、でも、かといって『逆立ちしてください』って信号機に書いてあったら変だよね」


「それは、そもそも押しボタン式信号機に『おしてください』と書いてあるのが普通になってしまった弊害だと思います。例えば、押しボタン式信号機に『逆立ちしてください』と表示されるのが当たり前だとしたら、そこには疑問を持たないのではないでしょうか」


「さすがにそれは言いすぎな気がする。現に『おしてください』って当たり前のことを書いているだけなのに、気になる誰かさんがいるんだから」


「確かに、そうかもしれませんね」

そうこう言っているうちに後輩は押しボタンの前に立った。


「押すのか」


「はい」


「渡らないのに」


「いえ、この先にコンビニがあるはずです。なにか飲み物でも買ってはくれませんか」

そういうと後輩は「えい」と声を出しながら押しボタンをぽちっとした。


「やっぱり『おしてください』の表示はあったほうがよさそうだね」

『おしてください』の電子表示は『おまちください』に変わっていた。


いつもの先輩がいない帰り道、後輩と一緒にコンビニで買った飲み物を飲みながらいつもの帰り道を歩く。

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