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作者: たぬ吉

 パラレル世界の昭和初期、パラレルしない時代には生まれていなかった文明の産物に触れている男がいた。

 ある分野においてどちらの世界でもこれからの日本を代表する人物となるこの男。しかし、そんなこと周囲はもちろん本人すら知らない。当時男はその分野においてビギナーだった。

 その文明の産物はこちらの今の時代であれば誰もが手にしているものではあるが、当時であれば誰もが想像できなかったであろうものである。

 しかし、パラレルなその世界では昭和初期において一大ムーブメントになっていた。男は1ヶ月前にようやく購入できたのである。


 彼は夢中になっていた。手のひらサイズの文明に、彼は魅入られていた。あまりにも鬼気迫るものがあるため、知り合いでさえ彼に話しかけるのをためらった。

 不意に彼が顔を上げた。どうやら一区切りついたらしい。それを傍らに置いてお茶を一口飲んだ。

 少し経つと、またそれを手に取った。しかし、先ほどまでのような気合は感じられない。また置いた。ソワソワしているのが見て取れる。一体何が彼のことをそこまで駆り立てるのか。

 まるで面接を終えた会社からの電話を待つ就活生のようだ。


 昭和初期に携帯電話が普及したこの世界では、小説はもちろん新聞でさえ紙媒体から電子媒体へと変化していた。

 「一人読んでくれた!」

 そう言った彼は書いているときとは別人の、まるで子供のような表情になっていた。

 後の偉人も人間であろう。

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