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史実の海陵王

宰相時代の海陵王

作者: 鈴木 強

 暴虐な帝王として知られる海陵王。彼がどのような人物だったのか、知られざる一面を『金史』より読み解いていこうと思います。

 今回は『金史』から海陵王が宰相だったころに関係があった人物について見ていきます。

『金史』巻六十六 列伝四 完顔勗伝


 海陵王が宰相となると、朝臣の多くがこれに付いた。ある日、重臣会議があり、海陵王が後から来た。完顔勗は面と向かってこう責めた。

 「私は五十歳を越えたが遅刻したことは無い。汝は年若く強健であるのに、敢えてこのような事をするのか。」

 海陵王は跪いて謝罪した。

 九年に太師に昇進し、漢国王に進封された。海陵王が簒奪して立つと、重臣に温情を加えて人望を得ようとし、完顔勗を秦漢国王に封じ、領三省とし、監修は元のままとした。

 宗本が粛清されると、完顔勗はにわかにヒゲが真っ白になり、老齢を理由に辞職を願い出た。海陵王は受理せず、玉帯を賜り優しい言葉で諭した。そして大事のときには宰臣と共に協議し、朝礼には参加しなくてよいこととした。しかし完顔勗は、病が重いと言ってそれ以上何も言わず、頑なな態度で迫ったため、海陵王は不快になり、許可した。本官を以って致仕し、進封されて周宋国王となった。


『金史』巻八十二 列伝二十 耶律恕伝


 海陵王は宰相になると耶律恕にこう尋ねた。

 「貴方は派閥に属しているか。」

 耶律恕は居住まいを正すとこう言った。

 「逆境にあれば自分一人でも善良であろうとし、順境であれば自分だけでなく天下も良くしようとする。正しくない手段で物を得るのは私の信念に反します。どうして派閥に属しましょうか。」

 海陵王はおもむろに言った。

 「先ほどのことはただの冗談だ。」

 しばらく経ってから沁南軍節度使となり、更に行台工部尚書に昇進した。行台が廃止され安国軍節度使に改められると、参知政事となった。病となったので参知政事を辞すことを願い出ると興中尹となり、都に戻って太子少保となった。

 正隆元年に致仕して広平郡王に封ぜられ、六十九で薨去した。


『金史』巻九十 列伝二十八 高徳基伝


 海陵王は宰相となると専ら自分の意見ばかり通し、敢えて反論する人はいなかったが、高徳基はいつも詳細に弁じて反論した。海陵王は皇帝となると、左司郎中の賈昌祚を通じてこう説得した。

 「卿は勇気をもって正論を通した。今、卿に南京の政務を委任したい。」

 南京に行く前に、海陵王は都を燕京にしようと考え、高徳基を臨時の燕京行台省都事とした。


『金史』巻百二十五 列伝六十三 胡礪伝


 海陵王が宰相になると、百官が廟堂で拝賀したが、胡礪だけは跪かなかった。海陵王が理由を尋ねると、胡礪は対等の礼をして「朝服で跪くのは、主君か父に対する礼です。」と言った。海陵王はその器量を知り重んじた。

 海陵王が即位すると、胡礪は侍講学士・同修国史となった。母の喪に服すため退官し、復帰して宋国歳元副使となった。このとき刑部侍郎の白彦恭が正使であったが、海陵王は胡礪に言った。

 「白彦恭の官職は卿の下だが、功労に拠りこうした。故に卿には白彦恭の補佐を頼む。」

 その後、翰林学士に昇進し、刑部尚書に改められた。遷都に従って汴に至ると、病となった。海陵王は何度も見舞いの使者を遣わし、亡くなると深く哀悼した。享年五十五。


『金史』巻百二十五 列伝六十三 王競伝


 当時、海陵王が宰相となり、百官に対して自分の諱を避けるよう命令を出そうとした。王競が「人臣の諱を避けることはありません」と反対したため中止となった。

 蕭仲恭が太傅として三省を統轄し封王に封ぜられると、遼の故事を引いて紫の羅の傘を用いようとした。これを礼部に下問すると、王競と郎中の永固が明確に反対したため、中止となった。これより海陵王に重んじられた。

 海陵王が即位すると翰林待制に転じ、翰林直学士に昇進して、礼部侍郎に改められた。翰林侍講学士に昇進し、太常卿・同修国史に改められて、礼部尚書に昇進し、同修国史は元のままとされた。

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