あとがきと解説
この作品のテーマ、何を考えて書いていたのかなどの解説です。
読者へのおまけというよりは、忘れっぽい自分のためのメモ帳ですが。
もしよろしければお付き合いください。
■このお話のテーマ
この話を書く少し前ですが、『賢者、二度目の転生』っていうタイトルのなろう系ファンタジーを完結させました。完結させたはいいのですが、その時に思ったのです。
私になろう系ファンタジーは向いてねえなと。
(このあたりは『小説家になろうへの敗北宣言』っていうタイトルのエッセイにも書いてあります。よかったら読んでみてください)
そして、自分を一番表現できる書き方ってどんなだろう?ってことを考え始めました。
私は海外小説の書き方が割と好きで、文体はわりとそっちに引っ張られることが多い。
好きなものは音楽、特にロックが好き。プログレが好き。
ということで、どうせなら好きなモノをたくさんぶち込んでミックスしてみようかと。
ただ、「自分じゃないと書けない話を」という表現は嫌いです。独自性を意識し過ぎている感じがして。
自然な範囲で、自分の色が出ていればいいかなと思ってます。
そんな感じで、テーマより先に文体と言っていいのかな? 文章のスタイルが先に決まりました。
で、次に本題のテーマですね。
強いて言うなら、人の存在についてかな。
「他人の認識によって、人は存在している」って話は聞いたことあります?
もちろん一つの生物としては、他人とか関係なくあなたは生きてます。あくまでも社会的なヒトとしての話ですね。
ということは逆に、①他人が認識さえすれば、新しい人を作れるのか。それも人と言えるのか。
(大戦中のフランス人捕虜が、イマジナリー彼女を作って頑張った逸話なんかがありますよね)
そのような存在を人と言えるのなら、②人としての芯は、言葉 (または思想)と行動のどちらにあるのか。
②については、言葉と行動はどちらが先にあるものなのか、と言い換えられるかもしれません。
人はウソをつきますからね。私もまずは「言葉は信用できない。やっぱり行動だよ」って意見が出てきました。でも、思想があり、言葉があるからこそ行動につながるんじゃないかとも思うんです。
これは本当に蛇足な話なんですけど。
仕事の話ですが、部下に人間関係のトラブル相談を受けたんです。で、はいはいと答えてシフトとかで解決した(つもり)だったわけですが。当人は不満がくすぶったままのようで、最終的には退職してしまいました。
後日、社外の知人に顛末を話して相談してみました。
友人は「解決とかよりも、話を聞いて欲しかったんじゃないの?」と言ってました。
解決という行動よりも、言葉が欲しかったんだろうと。
「簡単に解決したら、逆に何で今まで何もしてくれなかったんだろうとか思ったのかもね」とも言ってました。
なるほど。じゃ次回同じようなことがあったら、まずは共感して、解決はあえて3割程度にとどめた方が良いのかな。という結論で終わったんですが、本当にそれでいいのか?とどうも自分の中では消化不良で終わりました。
もう一つは疑うってことの難しさです。
これも仕事ですが、部下に仕事を頼むわけです。あとから「これやった?」「ここ見た?」とちゃんと聞いて、「はい、大丈夫」と確認するわけです。
でももしそこで、部下がやってなかったり見てなかったりすると、当然上司である私の責任になるわけです。
契約なんかは口約束でも成立する重たいものだというのに、現場では部下の言葉はあっさり覆されます。
いやいや、「見たよ」って言った限りはそいつの責任じゃないの? と喉のすぐそこまで出てきそうになるのですが、ぐっとこらえる切なさですよ。
逆に自分も上司に迷惑をかけているので、あまり偉そうなことは言えませんけどね。
すみません、これじゃ蛇足というかただの愚痴ですね。
まあともかく、言葉と行動のどちらが先にあるのだろうとは、こういうことです。
そして、言葉と行動の重たさ、そしてそれに対する信用のなさみたいなものを同時に感じる矛盾が、私の心の底にはじっとあるのです。
それに加えて、田舎の閉塞感が書きたかったかな。都会育ちから見た田舎、田舎育ちがずっと経験してきた田舎。その認識のギャップです。
言葉と行動のように、これらも個人個人で重さが違うでしょう。けれど、会話の時はお互いに同じ言葉を使うために認識のズレが生まれていく。
そうですね、書きながら思ったけど、認識のズレっていうのもテーマの一つかも。
このお話を読んだあなたが何を感じたのかはわかりませんが、何かしらの考えは抱いてくれたはずです。
それは別の読者さんが思った感想とは違うし、作者の私が意識したものとも違うでしょう。
それでいいんだとも思います。
それぞれが「こうじゃないか」と思い、それを信じて生きていくしかないんだよね。
終わり。
■音楽とか小説、元ネタの話
最初にちらっと話した、音楽ネタなどの解説ですね。
私は小説に音楽を入れる場合、アルバムの構成に従って入れることが多いのですが、今回はつまみ食いで持ってきています。
このお話は特に、色々な分野から引用を持ってきているので、簡単に。
あとは、サブタイトルを曲から拝借するときは、わりと内容も曲に寄せることが多いです。意外性が欲しくて。
自分の中だけでお話を作ると、自分の頭の中だけのお話になっちゃうじゃないですか。外部から無理やり刺激をぶち込むようなランダム感が欲しいのです。
舞台としては2010年で、カレンダー(曜日)もそれに合わせています。携帯は皆持っているけど、スマホが広がる前くらいかな。
なのでマヤ・デレンの映画とか山田くんがやってるゲームなんかも、その当時の設定になってます。
ズレてるのがあったらごめんね。
■新緑のジェイルハウス・ロック
タイトルはエルヴィス・プレスリーの曲名からです。古典ロックはあまり聞かないのですが、その中ではけっこう好きな一曲です。
実はシン・リジィの『ジェイルブレイク』のほうがよく聞いていたのですが、ブレイクするはもう少し後のお話なので。
ティム・ロビンスは『ショーシャンクの空に』の俳優さんです。脱獄ものの映画ですね。
他にわかりにくい比喩としたら、ジョン・ケージの『4分33秒』かな。タイトルは有名だと思うのですが、実際に聞いた人は少ないかも。田舎の夏休みを表現するにはぴったりの曲だと思うのですが。
井上のじいちゃんの「二つで十分ですよ」は映画『ブレードランナー』の有名なセリフですね。うちの職場には、あのおじいさんに激似の人がいます。
ジョー・ディマジオの野球の話は『老人と海』から。漁師と猟師をかけてます。
その他、ジョージ・オーウェルは『1984』の、フィリップ・K・ディックは『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の作者ですね。ともにディストピア小説の名作です。
アンドロイド~は先ほど話したブレードランナーの原作でもあります。
■気紛れとステンドグラス
やまなみハイウェイやステンドグラス美術館は、実際にある地名です。お近くの人はぜひ行ってみてください。
クリフと呼ばれているのは、メタリカのベーシスト、クリフ・バートンです。事故で急逝してしまいましたが、独特なメロディラインが特徴のベーシストでした。
■夜景とミスゲシュタルト
正式な表記は『Mißgestalt』。PSのゲーム『サガ・フロンティア2』から。勇壮でかっこいい曲ですが、この曲の本当の素晴らしさは、実際にプレイしてラスボスまでたどり着いた人にしかわかりません。
ドイツ語で、接頭語のミスは「誤った」「不完全な」、ゲシュタルトは「形態」「構造」あたりの意味だそうです。
ペニー・ワイズはスティーブン・キングの『IT』に出てくるピエロです。怖いよ!
愛情省は、先ほど話した『1984』に出てくる思想犯の矯正施設ですね。窓がないので周りからは何しているのか一切わかんないそうです。
ちなみに、祐樹とマリが話をしている場所は、キャナルシティのすぐ近くにある櫛田神社です。
■夏への扉
ハインラインの『夏への扉』の内容について語ってます。読んだ人じゃないとわかりにくいかもしれません。読んでください。
内容自体は面白くてよく考えられてるなと思ったのですが、私が引っかかってるのは、年の離れた姪との恋愛要素。なんとコールドスリープで年齢差を埋めるというパワープレイで解決します。それでもそこそこ年齢差あるんですが。
本当にいいの? ねえ?
ハンバーグの部分は、伝説のロックバンド、クイーンについてですね。フレディが亡くなった後、『クイーン+ポール・ロジャース』として活動していた時期がありました。
『クイーン+アダム・ランバート』というのもあって、そちらは別小説で使っています。
■引っ越しと、
タイトルの「、」は間違いじゃありません。引っ越しと○○、みたいな余白のつもりで入れました。
『ジョニー・B・グッド』はめっちゃ有名なので、イントロだけなら聞いたことある!って人も多いんじゃないかな。山田くんのテーマ曲です。
デイヴ・ムステインとジェイソン・ニューステッドは、どちらもメタリカ繋がりで人生の迷子になりました。
ムステインは素行不良によりメタリカを解雇されて、その後メガデスを結成しました。いきなりの解雇でかなりのショックを受けたそうです。自業自得ではあるのですが。
ニューステッドは先ほど話したクリフ・バートンが事故死した後、メタリカに加入したベーシストです。こちらも加入直後は他のメンバーとの人間関係が上手くいかず、相当悩んだそうですね。
■ラムはお好き?
吉田美奈子さんの曲『ラムはお好き?』から。すごくお洒落な曲です。ちなみにバックでコカ・コーラを叫んでいるのは、山下達郎さんです。最後の最後で受け取ってくれます。
あとはロブ・ゾンビさんですね。いかつい見た目をしてますが、ベジタリアンだそうで。
■エピゴーネン
日食なつ子さんの『エピゴウネ』をイメージしてます。表記は少し違うけど。
ルーシー~の曲名は、正確には『ルーシー・インザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド』ですね。ビートルズの曲です。
イントロを一度聞いてもらえれば、私が比喩に使った気持ちがわかると思います。でもね、曲が進むにつれだんだんとしっかりと足で立っていく感じがして、二周目のイントロが流れたときには、しっかりとメロディーとして聞こえてくる。そういうところが好きな曲です。
さて、またオーウェルが出てきましたね。そろそろ覚えましたか?『1984』です。
え、『1943』? カプコンのシューティングゲームですよ! 『戦場の狼』も一緒にどうぞ。
■早朝のダウン・アンダー
オーストラリアのバンド、メン・アット・ワークの『ダウン・アンダー』から。起きた後の祐樹くんはきっと、ダウンでアンダーな気分だったのでしょう。
作中で茜さんが塗っているのはネオソフトです、ベジマイトではありません。
あ、グレーゴルはカフカの小説『変身』の主人公、ザムザ・グレーゴルです。彼の部屋に比べれば、緑の牢獄のほうがまだ幾分マシかもしれませんね。
■駅横のヴァーチャル・インサニティ
ジャミロクワイの『ヴァーチャル・インサニティ』からです。あのPV、おしゃれですよねえ。虫がちょっとキモいところも含めて。
「駅前の」にしたほうが音の響きは良いと思うんだけど、ゲーセンがあるのは博多駅の隣だから仕方ない。
出てくるシューティングはすべてケイブ作品ですね。
自機がカブトムシのゲームは、ご存知『虫姫さま』です。これだけ揃ってるゲーセンって今はもう少ないんでしょうねえ。しみじみ。
そういえばジャバウォックが出てきますが、『鏡の国のアリス』そのものよりもこの名前のほうが有名になってる気がします。実はこのお話を書くときに読み返そうとして本棚を探したんですが、見つかりませんでした。どっかいっちゃった。
■ゴーストルール
DECO*27さん作曲のボカロ曲からです。実はボカロ曲をモチーフにするのは初めてです。
この曲単体で強い思い入れがあるわけではないのですが、「気に入った曲があったから調べたら、DECO*27さんだった」ということが多いですね。
あとはDECO*27さんが福岡出身というのを最近知ったので、サービスで。
フォークト・カンプフ検査は、『アンドロイドは~』の作中で人間とアンドロイドを見分けるための感情テストです。
アンドロイドだとばれたら殺されちゃうので、気を付けましょう。
■プレゼントデイ・プレゼントタイム
イギリスのバンド、Bôaの曲『Duvet』からです。これがなぜこのタイトルになるかというと、
『serial experiments lain』というタイトルのゲームのお話になりますので、良かったら調べてみてね。
実はこの小説のテーマと、レインというゲームのテーマは、割とかぶる部分が多いです(と思ってます)。意識して書いたわけではないんですけどね。
文中のテレスクリーンは、これもお馴染み『1984』から。
テレビのように受信もできますけど、同時に監視カメラとしても機能してます。もちろん文中では後者の意味ですね。
さて。色々吐き出してすっきりしました。
ここまで読んでくれて本当にありがとう。
じゃ、また別のお話で会えるといいね。




