第6話
その1
村を後にした悠希と紀更は、再び森を越え、広大なフィールドへと足を踏み入れた。第一層のフロアボスが待つ場所は、どこか荒れた土地に位置していた。大地が裂け、暗い雲が立ち込めるその場所に、ボスの気配を感じ取ることができた。
「いよいよだね…」
悠希は片手剣を手に、周囲を警戒しながら歩を進める。
「さっきの獣と違って、これは本当に強敵だろうから…気を引き締めていこう。」
紀更もレイピアを構え、悠希に向けて小さく頷く。
「うん、でもきっと大丈夫。私たち、今はだいぶ強くなったし。」
だが、その言葉を裏付けるように、急に地面が揺れ、空気が重くなった。悠希が前を見据えると、大きな影がゆっくりと浮かび上がってきた。
「来た…!」
紀更の声に反応するように、その巨大な影が明確に姿を現した。それは、まさに巨大なドラゴンの姿だった。その鱗は黒く、筋肉質な体躯を持ちながらも、その目は鋭く、冷徹な輝きを放っている。
「フロアボス…『黒炎竜オヴァロン』か。」
悠希はその名を呟き、構えを取る。
「間違いなく強い…! でも、逃げられないから、倒すしかない!」
紀更もその姿を見て、拳を握り締めた。
「うん、逃げるなんて選択肢はないよね。二人で力を合わせて、絶対に倒す!」
ボスが大きな翼を広げ、地面を踏み鳴らす。その一歩一歩が大地を震わせ、悠希と紀更の足元も揺れた。
「いくぞ!」
悠希が先に駆け出し、片手剣を高く掲げる。
「スラント!」
縦一文字に振り下ろした剣が、黒炎竜オヴァロンの鱗に当たるが、簡単に弾かれた。
「くっ…硬い!」
悠希は驚きながらも、すぐに態勢を立て直す。
「紀更、後ろに回り込むぞ!」
紀更もすぐに反応し、レイピアを構える。
「ストリーク!」
上段から突き刺すように攻撃を仕掛けるが、オヴァロンは素早く頭を振り、その攻撃をかわす。
「炎を吐くぞ!」
オヴァロンが大きな口を開け、そこから黒い炎を吐き出す。
「避けて!」
悠希が叫び、紀更はすぐに横に飛び退く。炎が地面を焼き尽くし、二人の足元に黒い焦げ跡を残す。
「間合いが狭すぎる…。」
悠希は冷静に考える。オヴァロンの火力は想像以上だ。正面からの攻撃を続けても、まともにダメージを与えるのは難しそうだ。
紀更はそれを感じ取り、次の一手を考えていた。
「私が挑発するから、その隙に悠希ちゃんが攻撃を狙って! 私は少しでも隙を作るから!」
悠希は一瞬驚いたが、すぐにその提案を受け入れる。
「いいぞ、じゃあ行くぞ!」
紀更は瞬時に立ち回り、オヴァロンの前に飛び込む。
「オヴァロン、こっちだよ!」
レイピアを両手で持ち、竜の目の前で挑発的に戦いを挑む。
「オブリーク!」
下段突きを繰り出し、竜の腹部を狙ったが、竜は軽くその攻撃を避ける。その隙に悠希が猛然と攻撃を仕掛ける。
「バーチカル!」
斜めに剣を振り下ろし、竜の後ろ足に深く切り込む。だが、竜はその足を引きずり、悠希の攻撃を受けながらも、反撃の余裕を見せる。
「レイジスパイク!」
悠希が竜の隙間を突こうとしたその時、オヴァロンは翼を羽ばたかせ、大きく後退する。
紀更も攻撃の手を緩めない。
「ストリーク!」
上段から斬り込んで、竜の鱗をかすめる。しかし、竜の硬い鱗がその攻撃をほとんど無効化してしまった。
「全然効かない…!」
紀更はしばらくその場で立ち尽くし、どこを狙うべきかを思案していた。その時、悠希がふと気づく。
「紀更、あの竜の目だ! 目が少しだけ隙間がある…! そこを狙ってみる!」
紀更はその瞬間に全力で駆け寄り、竜の眼前に飛び込む。
「リニアー!」
中段から突き出すと、竜の目にレイピアが命中する。しかし、竜は驚くことなく、目を閉じてその攻撃を防ぐ。
だが、その隙を悠希が見逃さなかった。
「今だ、紀更!」
悠希が一気に走り、竜の顔面を狙って斬りつける。
「スラント!」
悠希の剣が竜の目元を傷つけ、その瞬間、オヴァロンが苦しげに鳴き声を上げた。
「いける…!」
紀更はその隙を見逃さず、再度竜の目を狙って突き出す。
「オブリーク!」
一気に突き刺さったレイピアが、オヴァロンの眼球を貫通し、竜がその場に倒れる。
「倒した…!」
悠希と紀更は息を切らしながら、その場に立ち尽くした。
「やった…本当に倒せた…。」
だが、戦いは終わったわけではない。倒れたオヴァロンの体がまだ震え、黒い煙が立ち込め始める。何かが起こる予感を二人は感じ取った…。
次回、第一層フロアボス戦の結末。




