第3話
アナウンスが終わり、システムメッセージが消えた後、俺はその場に立ち尽くしていた。頭の中で、今後の展開をどうすべきかを考えながら、心を落ち着けようとしていた。しかし、紀更が少し離れた場所で、何かをじっと見ていることに気づく。
「どうした?」
俺はその視線を追いながら、軽く声をかける。
紀更は一瞬、困惑したような顔をした後、少し慎重に口を開く。
「ねぇ…悠希。」
「ん? どうした?」
「ちょっと、顔を見せてくれる?」
俺は不思議に思いながらも、顔を向ける。
その瞬間、紀更が一歩近づき、じっと俺を見つめる。
「え…?」
「あれ? ちょっと待って…」
紀更は目を丸くして言った。
「おい、何だよ?」
俺は何かおかしいのかと思いながら、気にせず答える。だが、紀更の反応に妙な不安が募っていく。
「悠希、もしかして…」
「え? 何が?」
俺はまったく気づいていなかった。
紀更は一歩、俺に近づくと、じっと俺を見つめたまま言った。
「ねぇ、悠希…女の子になってない?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は一瞬動きを止めた。
「は?」
「だって、あんた…髪が長くて、体つきも華奢で、どう見ても女の子じゃん。」
紀更はそのまま、じっと俺を見て、何かを確かめるように言った。
俺はその時、ようやく自分の姿を意識した。確かに、視界の端で自分の姿を見てみると、黒髪のロングヘア、細くて華奢な体つき…確かに、男だったはずの自分が、まるで女の子のようになっている。
「でも、なんでこうなったんだ?…」
紀更は少し戸惑いながらも、表情を変えて言った。
「…まぁ、こればっかりは仕方ないけど、ちょっと驚いたよ。」
「あぁ、俺もだよ…」
「でも、どうせなら可愛いほうがいいかもね。」
紀更は少し笑顔を見せながら言った。
その後、紀更はさらに顔を赤らめながら言った。
「それにしても、悠希。女の子になったなら、これからのことも考えないとね。」
「どういうこと?」
「だって、防具とか、悠希の体に合ったものを買わないとね。男のときと違って、女の子の体には違う装備が必要だし。」
「あぁ、なるほどな。」
俺は少し考え込みながら答える。
「じゃあ、どこで防具を買おうか?」
紀更は頷きながら、近くの商店街に向かうために歩き出した。
「まぁ、行けばわかると思うけど、今回はしっかり装備を整えておかないとね。」
「ありがとうな、紀更。」
紀更は少し照れながらも、やっぱり女の子っぽい表情を見せて、答えた。
「うん、気にしないでよ。でも、やっぱりこれからは女の子として接しなきゃね。」
「へぇ、どういう意味だ?」
「だって、悠希が女の子になったんだから、もうちょっと優しくしないとね。」
紀更は笑いながら言った。
その瞬間、俺の胸が少し高鳴るのを感じた。紀更の笑顔が、思った以上に優しくて、どこか安心できるものだったからだ。
商店街に到着すると、まず目に入ったのは防具を扱う店舗だった。店内にはさまざまな装備品が並んでいて、鎧や軽装、防具のセットなどが整然と並べられている。
「お、こっちだな。」紀更が店の入り口を指差しながら言う。
店内に入ると、最初に目に留まったのは女性用の軽装鎧だった。細身のボディにフィットするデザインで、動きやすさを重視したものだ。
「これ、いいんじゃない?」紀更が一着を手に取ると、俺に見せながら言った。「見た感じ、悠希の体型にぴったりだと思うけど。」
「うん、これなら悪くないな。」俺は頷きながら答える。紀更はその後、少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら、俺に近づいてきた。
「ねぇ…悠希、これ、どうかな?」紀更は、俺に近づきすぎて、体温が伝わってくるくらいだった。その瞬間、心臓が少しドキッとした。
「お前、あんまり接近すんなよ。」俺はちょっと恥ずかしくなって避けようとしたが、紀更は笑いながら言った。
「ふふ、大丈夫。だって、悠希が可愛いから、つい気になっちゃうだけだよ。」紀更は微笑んで、再び俺の目を見つめながら言った。「これで戦ったら、絶対にカッコいいと思うよ。」
その言葉に、俺はまた胸が温かくなるのを感じた。紀更は本当に、何気ない一言で俺の心を掴んでくる。
「じゃあ、これに決めるか。」俺は少し照れくさい気持ちを隠して、鎧を受け取った。
「うん、いいね。あたし、悠希が戦う姿が楽しみだよ。」紀更はうっとりした表情で言った。その言葉に、俺の心はまた少しだけ、揺れた。




