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第16話



悠希と紀更は、第三層の街「ズムフト」に到着した。街は古代エルフの遺跡の影響を受けたような構造で、建物や通りに歴史的な痕跡が残されていた。悠希と紀更は、まず街の中心にある広場に向かう。ここでは他のプレイヤーも多く集まっており、賑わっているが、どこか重苦しい空気が漂っていた。


「この街、何か気になるな…」

悠希が周囲を見回しながらつぶやく。


「うん、他の層とはちょっと違う感じがするね。」

紀更も同じように街を観察しながら言った。普段の軽い調子とは裏腹に、今日の紀更はどこか真剣な表情をしていた。


「でも、クエストの情報を得るには、まずNPCを探さないといけないみたいだね。」

悠希が言うと、紀更は頷いた。「どこかで情報を得ないと、次のステップに進めないもんね。」


二人は街を歩きながら、NPCを探し始めた。しばらく歩き回り、少し裏通りに差し掛かった時、ふと見つけたのは、古びた店の前に座っている一人の女性NPCだった。彼女は長い白髪に、エルフのような特徴を持つが、年齢を感じさせる表情をしていた。


「お、あの人が依頼主かもしれないね。」

紀更が指差すと、悠希もその人物に目を向けた。少し近づいてみると、彼女が静かに話しかけてきた。


「君たち、冒険者だね?」

女性NPCは静かな声で言った。悠希と紀更は一歩前に出て、返事をする。


「はい、私たちも次のクエストを探しているんです。」

悠希が答えると、女性NPCはその顔にわずかに微笑みを浮かべ、立ち上がった。


「では、話をしよう。」

女性は彼女の店に案内するように歩き始めた。


店内は薄暗く、古びた書物や不明な薬草が棚に並べられている。女性NPCは静かに座り、二人に向けて話し始めた。


「私の名はエルシア。ここ、ズムフトの外れにあるエルフの遺跡には、長い間封印されていた強力な魔物が眠っている。しかし、その封印が最近破られ、周囲のモンスターたちが異常に攻撃的になっている。街の安全も脅かされており、早急に何とかしなければならない。」

エルシアは少し眉をひそめながら言った。


「封印を解いた魔物を倒すためには、遺跡の最深部にいる『守護者』たちを倒さなければならない。彼らはそれぞれ強力な力を持ち、試練のような形で遺跡を守っている。その力を手に入れない限り、遺跡に潜む魔物には対抗できない。」

エルシアが続けて説明を加える。


「守護者たちを倒すために必要なアイテムが、遺跡内の各地点に分散している。それを手に入れるために、君たちに試練を受けてもらうことになる。」

エルシアは二人を見据え、真剣な表情を浮かべた。「試練を乗り越え、守護者たちを討つ覚悟があるなら、私は君たちを支援するつもりだ。」


悠希と紀更は顔を見合わせ、しばらく黙って考えた後、悠希が口を開いた。


「試練の内容は、具体的にはどんなものですか?」

「試練は三つの守護者によるものだ。最初に戦うべきは『砂の守護者』、次に『岩の守護者』、最後に『炎の守護者』だ。各守護者には異なる属性の力が宿っており、それぞれの戦い方も変わる。」

エルシアは地図を広げ、指で場所を指し示した。「砂の守護者は遺跡の東に位置する。岩の守護者はその北、そして炎の守護者は最深部にいる。」


「それぞれの守護者には、それぞれ特殊な力があるんですね。」

紀更が言った。


「そう、砂の守護者は砂の力で障害物を作り出し、戦いを有利に進めようとするだろう。岩の守護者は非常に堅い防御を持っているから、攻撃をかわすことが重要だ。そして、炎の守護者は火を使った攻撃が得意で、戦闘中に火傷状態を引き起こすかもしれない。冷静に戦うことが求められる。」

エルシアは続けて言った。


「試練を突破し、守護者たちを討つことができたら、封印を解除するための道具を手に入れることができる。その後、最深部に眠る魔物に挑むことができる。」

エルシアは、二人に向かって強い目を向けた。「この試練は容易ではない。覚悟して挑んでほしい。」


悠希と紀更はお互いに見つめ合い、再び頷いた。


「わかりました。」

悠希が言った。「私たち、必ず試練を乗り越えます。」


紀更も同様に、「もちろん、最後まで戦ってみせるよ!」と力強く言った。


二人は早速、エルシアから渡された地図を手に、最初の守護者である『砂の守護者』に向けて街を出発した。足元に広がる砂漠のような景色、乾いた風が吹き荒れる中で、二人は次の試練を乗り越えるために進み続けた。


「きっと、これからもっと厳しい戦いが待っている。だけど、私たちならできる。」

悠希が自分に言い聞かせるように呟く。


「うん、絶対にね!」

紀更は笑顔を見せながら、戦いに向けての決意を新たにする。


試練の始まり、そしてその先に待ち受けるであろう数々の試練。二人の冒険は、再び新たなステージへと進み始めた。


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