第11話
第二層の森を越え、二人は再び広場に戻った。賑やかな街の風景が目に入る。街の中には冒険者たちが集まり、装備を整えたり、クエストを受けたりしている。しかし、今日は少しだけその日常から外れた戦いが待っている。
「悠希ちゃん、今日はあのフィールドボスに挑戦しようか?」
紀更が軽く笑いながら、ボス討伐の話を切り出した。目の前に掲示板があり、そこには「フィールドボス『幻影の魔獣』討伐」の文字が躍っている。その周りには多くのプレイヤーが集まり、挑戦者を募っている様子だった。
悠希はしばらく考えた後、決意を込めた表情で答える。
「うん、準備は整っているし、今回は何としても倒すよ。」
二人はまず、街の鍛冶屋で新しい武器を調達した。紀更は新たに強化されたレイピアを手に入れ、悠希も片手剣をより強力なものに変えた。これで、今まで以上に戦力を強化したことになる。
装備を整えた二人は、街を出て、フィールドボスの待つ場所へと向かった。道中、時折周囲に現れるモンスターをさっと倒しながら進んでいく。道は険しく、森の奥へと進むほどに荒れ果てた雰囲気が漂っていた。
「この先だよね…」
悠希が前を見据えて言うと、紀更もその先を見つめる。フィールドボス「幻影の魔獣」は、この森の深部に出現すると言われており、彼女たちが今進んでいる道がまさにその場所だ。
そのとき、突然、周囲の空気が変わった。木々が揺れ、風が冷たく吹き抜ける。悠希が一歩踏み出した瞬間、目の前に巨大な影が現れた。それは魔獣の姿をした、巨大な幻影のような存在だった。
「来た…」
紀更がレイピアを構え、身構える。その魔獣は、透明感を持ちながらも、まるで実体を持つかのように立ちはだかっていた。その姿は雄大で、恐ろしさを感じさせる。
「こいつが『幻影の魔獣』…?」
悠希はその姿を見て、少し驚いた様子だが、すぐに冷静さを取り戻す。
「うん、でも大丈夫。慎重に行こう。」
戦闘が始まった瞬間、魔獣は雄叫びを上げ、猛然と二人に向かって走り出す。その速度は速く、悠希と紀更はそれを避けるために素早く動く。
「スラント!」
悠希が縦に斬りつけるが、魔獣はその攻撃を軽くかわし、反撃を試みる。その反撃は、周囲の空気を歪ませるほどの威力を持っており、二人は一瞬でその攻撃を避けなければならない。
紀更はレイピアを構え、軽快に動きながら言う。
「気をつけて、悠希ちゃん! こいつの攻撃は一撃でかなりのダメージを食らいそうだ。」
「うん、分かってる!」
悠希は片手剣をしっかりと握りしめ、再び魔獣に向かって駆け出す。
「リニアー!」
悠希が中段突きを繰り出すと、魔獣はその攻撃を受け、少し後ろに退く。しかし、すぐに反撃を開始した。魔獣はその巨大な爪で悠希を襲おうとし、素早く爪を振り下ろす。
「危ない!」
紀更がその爪を察知し、すかさずレイピアでそれを弾く。しかし、その衝撃で紀更はバランスを崩し、足を踏み外しそうになる。
悠希はその隙を見逃さなかった。
「紀更、後ろ!」
悠希が素早く紀更の前に立ち、再び魔獣に向かって攻撃を仕掛ける。
「バーチカル!」
悠希の片手剣が斜めに振り抜かれ、魔獣の足元に深く突き刺さる。魔獣は痛みにうめき声を上げ、さらに激しく暴れ始める。
紀更はその隙に、レイピアをさらに鋭く突き出す。
「ストリーク!」
紀更が上段から一気に突きを放つ。レイピアが魔獣の肩をかすめ、深く切り込むが、魔獣はすぐにその傷を回復させる。
「くっ…回復するのか。」
紀更が舌打ちをしたその瞬間、悠希が冷静に分析して言った。
「幻影の魔獣は自己回復能力が高い。傷を与えても、時間が経つと回復しちゃう。」
紀更はそれを聞いて、すぐに行動に移す。
「じゃあ、もっと攻撃を集中させないと!」
紀更と悠希は一気に攻撃のタイミングを合わせ、魔獣の足元を集中攻撃する。悠希の片手剣が斜めに斬り込むと、紀更のレイピアがその横から突き刺さる。
その瞬間、魔獣が再びうめき声を上げ、震えた後に崩れ落ちた。
「やった!」
紀更が声を上げると、悠希も笑顔で応じる。
「これで倒したみたいだね。」
その瞬間、システムメッセージが画面に表示される。
**「フィールドボス『幻影の魔獣』を討伐しました。」**
**「レベルが13に上がりました。」**
**「ユニークアイテム『幻影の獣皮』を獲得しました。」**
二人は息を整えながら、倒れた魔獣の周りを見回す。そして、慎重にその死体からアイテムを回収した。
「『幻影の獣皮』…これで新しい防具が作れるかもしれないね。」
悠希がそのアイテムを手に取り、少し考えた後、紀更に渡す。
「次のボスに備えて、装備を整えておこう。」
紀更は笑顔で答えると、二人は倒した魔獣を背景に、再び冒険の準備を整えながら次の目的地に向かって歩き出す。