第10話
森の入り口に立った二人は、クエストの指示通りに森の中に踏み込んでいった。空気はひんやりとしていて、木々の間からこぼれる光が幻想的な雰囲気を醸し出している。
「静かだね。誰か他にも来ているのかな?」
紀更は周囲を見渡しながら話す。
「確かに、ここには他のプレイヤーもいないみたいだ。」
悠希が周りの風景をじっと見ながら答える。
二人はしばらく進むと、突然、前方に小さな獣の群れを見つけた。獣たちは二人に気づくことなく、ただ森を走り回っている。
「敵がいるみたいだね。」
悠希は片手剣を軽く持ちながら、紀更に向かって言った。
紀更もレイピアを構え、「こういうのはやってみないと分からないよね。」
と、軽く笑ってから先に進んだ。
突然、獣の一匹が二人に向かって走り出す。二人はその動きを見逃さなかった。
「来た!」
悠希がすばやく反応し、剣を構えて突進する。
「レイジスパイク!」
悠希の片手剣が突進し、獣に突き刺さる。その勢いで獣が後ろに弾き飛ばされると、紀更がすかさず動いた。
「ストリーク!」
紀更のレイピアが獣の腹を斬り裂き、そのまま地面に倒れる。
「うまくいったね!」
紀更は笑顔を浮かべながら言ったが、悠希は冷静に剣を収めて言った。
「でも、このペースだとまだクエストの宝箱には辿り着けないかも。」
その後、数匹の獣を倒しながら進む二人。しばらく歩いた後、目的の宝箱を見つける。小さな木製の箱が茂みに隠れていた。
「これが『森の宝箱』?」
紀更がそれを開けると、中から煌めくアイテムが現れた。それは「精霊の護符」と呼ばれる装飾品で、装備すると防御力が上がる効果があるらしい。
「わぁ、すごい! これ、ありがたいね。」
悠希がそれを手に取り、嬉しそうに微笑む。
その瞬間、周囲がざわつき、何かが近づいてきた気配がした。二人が振り向くと、巨大な森のゴーレムが現れた。
「これは大変!」
紀更が驚く暇もなく、悠希が片手剣を構えて言った。
「一気に行くよ! 私が攻撃するから、紀更、後ろを頼む!」
二人は戦闘態勢に入ると、ゴーレムがその重い足音を響かせながら近づいてくる。悠希が一歩前に出て、片手剣を高く振り上げる。
「バーチカル!」
斜めに一閃、その一撃がゴーレムの肩を切り裂いた。
ゴーレムは巨大な腕を振り回して反撃する。紀更がそれを素早く察知し、レイピアで上手く回避しながら攻撃を加える。
「リニアー!」
中段突きでゴーレムの腹部を狙うが、石のような肌にはダメージがほとんど通らない。
「くっ、こいつ硬いな。」
紀更が言うと、悠希が再度声をかける。
「耐久戦だね、紀更。お互いに集中しよう!」
二人は息を合わせ、ゴーレムの攻撃を避けながら、少しずつその体力を削っていった。悠希が再び片手剣を大きく振り下ろす。
「ホリゾンタル!」
横斬りがゴーレムの腕を斬りつけ、ついにその体力を削り切る。
ゴーレムが崩れ落ちると、システムメッセージが表示された。
二人はゴーレムの死骸からアイテムを回収し、そのまま宝箱を持って村に戻った。