閻魔大王様登場
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九 アルプスの向こう
「頭に入るで」 ヒットラーの発作に手をこまねくスターリンを見て俺達はレーニンの頭に入ることにした。第二次世界大戦の総監督はスターリンだったが、そのシナリオの砕氷船作戦を描いたのはレーニンだ。スターリンはその砕氷船作戦通りに動いていたのだ。ソビエトを作り第二次世界大戦を引き起こしたこの稀代の天才なら俺達があっと驚くようなパフォ-マンス見せてくれるに違いない。俺達はその時に生じる混乱からチャンスを見つけるのだ。
ところが意気込んで彼の頭にアタックしたものの、どうしたものかつるつる頭に旭日丸が滑ってしまってどうしても頭の中に入ることができなかった。この男もスターリンに負けず劣らずの相当な悪のようだ。それでもぐずぐずしている訳にいかず俺たちは山本の口を借りることにした。 「スターリンは今ヒットラーに困ってますよね。こんなチャンスを見逃すって手はないですぜ」 いきなり耳元にささやいてきた山本に一瞬訝しそうな表情を浮かべたレーニンだったがそこは世紀の天才革命家だ。彼は今なすべきことを瞬時に理解した。
「裁判長三分間だけ私に時間を与えて下さいませんか」 レーニンは甲高く透き通る声で裁判長に願い出た。 「地獄界民主革命の成功に尽力してくだされた同志の皆様にこれまでの感謝とお別れの挨拶を述べたいのです。三分経てば必ず口を閉じることを、お約束いたします」
スターリンはレーニンの申し込みを承諾すると木槌を叩いてヒットラーに静かにするように命令した。あれほどルーズベルト口撃に酔いしれていたチョビ髭もこうなってしまっては黙るしかなかった。ヒットラーのヒステリーに困っていたスターリンはこうして自滅への道にうっかりとはまってしまったのだ。
十 女地獄界
レーニンの話は突拍子もないものだった。 「同志諸君はあのアルプスの向こうに何があるのかご存じかな」 地獄界を真っ二つに分けるかのように聳え立つアルプスの白い頂を見つめながら山本は色んな想像を膨らませた。 (そう言えばそうだな。アルプスの向こうはどうなっているのだろうと俺も前から気になっていたよな。もしかのもしかで、もしかするのかも) 山本のエロい妄想は膨らむばかりであった。
「諸君。喜べあのアルプスの向こうは女地獄界だったのだ」 一瞬の間が空き続いてウオーッという地鳴りのような歓呼が広場を埋め尽くした。 「どえりゃあ大騒ぎだがやアサやんあれはホントのこと言っとりゃあすか」 「たった今思いついた作り話にきまっとるやんけ。そやけどこれはオモロイ。期待できるで。しかしそれはそうとこの男何とかならんのけ」 発情が脳内だけにとどまらなかったので俺たちは山本から逃げるしかなかった。
尤も興奮状態なのは山本だけではなく広場の男たち全員なのは一目瞭然であった。しかしそれも仕方のないことだろう。何しろこれまで毎日のように鬼たちに追い掛け回され死ぬほど怖い目にあい、女のことなど考える余裕などなかったのだ。そして鬼退治がうまくいき気持ちにゆとりの出来た今になってのこの嬉しい知らせなのだ。
レーニンは兵士たちに静かにするように両手を広げてジェスチャーをすると女地獄界の状況を報告した。 「私が秘密のトンネルを通ってアルプスの向こうで驚いた出来事は二つだ。一つは鬼たちの姿が見当たらなかったこと。しかしこれは行方不明になったこちらの鬼たちを探しに来たからだろう。勿論そいつらもこっちの落とし穴にはまっているので心配無用だ。さてもう一つの出来事だが……諸君驚いてはいけない。アルプスの向こうの女達は息をのむような美人ぞろいでおまけに全員好色だった」
凄まじいどよめきが再び広場を覆い兵士たちの欲望はマックスに達したが、レーニンのスピーチはそのまま続いた。 「そこで私はこの事実を報告するべく彼女たちのレイプに何度も襲われながらも急いで本部に戻ってきたのであるが、あの裏切り者に拘束され君たちを女地獄会に連れていくことができなくなってしまった。申し訳ない」 兵士たちの憎しみの目が一斉に裁判長に注がれた。 「奴を殺せ」 「俺が殺してやる」 などの怒声が飛び交ったがスターリンになすすべはなかった。天才レーニンとスターリンとはやはり役者が何枚も違うようだ。
十一
レーニンは報告を終えると前方の一点を鋭い目で凝視したまま全身をゆっくりと左右に揺らし始めた。すると兵士たちもそれにつられるように身体を揺らし始めたのだ。やがてレーニンの身体がまるでメトロノームのように動き出すと広場の全員が人間メトロノームとなって女、女、女と叫び始めたのだ。 「コボしっかりせんかえ」 俺の身体をゆすってあさやんが我に返らせてくれた。俺も知らないうちにレーニンの催眠術にかかっていたのだ。 (ホント恐ろしい奴だで危にゃあ危にゃあ)
さらに続けて奴を捕まえろとレーニンが叫ぶと兵士たちも同じ言葉を繰り返していった。こうして広場全体がトランス状態に覆われていったが、そんな中でも平然としている男がただ一人いた。それがマルクスだった。「やっぱりキーパーソンはマルクスみたいやな」 「なんじゃ雨が降り始めたぞな。それに風も強うなってきたし夜のように暗くもなってきたぞな」 風雲急を告げるとは正にこのことか。
「あの裏切り者をここに連れてくるのだ。そして檻に放り込みアリ達にくれてあげようぞ」 レーニンの甲高い叫び声が発せられるとスターリンを引きずり降ろそうと何人もの兵士たちが裁判長席に駆け上がっていった。しかしここで思わぬ出来事に兵士たちは遭遇する。一番手でスターリンに食らいついた兵士が空中高く吹き飛ばされ、岩盤に落下して頭から血を流して動かなくなった。そしてそれは次の兵士やその次の兵士でもやはり同じであった。
それでも多くの兵士やヒットラー達もが突撃していったのは催眠術にかかっているのもあったが、女への執着心と奴に邪魔されたと思う激しい恨みもあったからだろう。げに恐ろしきは女への恨みである。それもあってしばらくすると台座の下までスターリンを引きずり下ろすことができた。あとは裏切り者をレーニンの待つ六十メートル先の檻に入れるのみである。しかしながらこれは大変な肉弾戦になった。
二十人ぐらいの兵士たちがスターリンに覆いかぶさり何重もの層となりジリジリとわずかずつながらも進んで行った。がその間にも次から次へと兵士たちは跳ね飛ばされ、多い時には一度に五人もの男たちが吹き飛ばされた。それでもその穴埋めを周りの仲間がすぐに補うので少しずつだがレーニンの待つ檻の前へと確実に近づいて行った。また弾き飛ばされ死んだかのように思えた者も暫くするとゾンビのように生き返り護送団の周りに戻るのだ。
「雨風の勢いがますます激しくなってきたやんけ」 「ホンマじゃ。それにいよいよ真夜中のよう暗うなってきたぞな」 「ほんでも雷さんのお陰で人間団子がいのいているのがよく見えるんだわ」 「そやけどよう考えたらすごい光景やなガッハッハー」 その時だった。「働かざる者。女を抱くべからずだぞ」 レーニンの飛ばした露骨な檄が可笑しくて思わず彼のほうに目をやった俺だったが、飛んでもないものを見て凍り付いた。檻の中には人間と同じぐらいの大きさの未確認生物がいて檻の前に立つレーニンの背後にゆっくりと迫りつつあった。
十二 サムライ蟻
「アサやんありゃあなんだで」 「特大サイズのサムライ蟻やな。こいつは強いで」 サムライ蟻とは日本各地の山野などに生息する蟻の一種だ。女王蟻は空中交尾飛行を終えるとたった一匹で別種のクロヤマ蟻の巣に侵入する。クロヤマ蟻達は突如現れたターミネイターの来襲に騒然となり次々と立ち向かって行くがサムライ蟻の女王にはとても敵わない。大きな牙で次々とアリたちの首を切り落として巣の女王を探し求めて巣穴の奥まで侵入していくのだ。
巣から逃げ出した女王蟻の運命は野垂れ死にである。それでは逃げ遅れてしまった女王蟻はどうなるのだろう。彼女は全身数十か所を傷つけられ体液を流して死んでいくのである。侵入者が被害者の体液を自身の体に塗り付けるとその途端、クロヤマ蟻たちはこのエイリアンを自分たちの女王様だと認識してしまうのだ。そして女王蟻が逃走してしまったクロヤマ蟻たちもすぐに新女王の子供たちの為にせっせと働く奴隷となる。
やがて時が過ぎ奴隷のクロヤマ蟻たちも年を取って役に立たなくなるが、そうなる前に成長したサムライ蟻達が他のクロヤマ蟻の巣を襲いそこの幼虫たちを奪って巣に持ち帰ってくる。そうして成長すると自分たちの新たな奴隷になるのだ。尤も普段のサムライ蟻は女王以外は光を恐れるのだが略奪の時だけはある種のホルモンが働いて平気になるようだ
十三 嵐の惨劇
雷鳴とどろく土砂降りの中、ガチガチガチンと金属音が鳴り響いた。それはレーニンの身体を寸刻惜しんで檻に入れようと焦るサムライ蟻の鳴らした音だ。よほど急いでいるようで鉄格子の隙間を通らない頭部をあきらめ、切り落とした首なし死体を咥えて奥の岩陰へと消えていった。
そしてこの直後。強烈な爆発音と目もくらむばかりの閃光が広場を直撃した。もしかしたらあの蟻はこの稲妻を恐れていたのかもしれない。重なり合ってうごめいていた護送団の山はスターリンもろとも吹き飛ばされてしまった。直撃を受けずに助かった者たちも呆然自失の状態に至っていたが、あたかも何事もなかったかのように倒れたスターリンにゆっくりと近づく者がいた。マルクスだ。
彼はスターリンを上からのぞき込むとその頭にけりを一発入れた。それは死んでいることへの確認というよりも何かのうっぷん晴らしのように俺には思えた。それから衣服を剝ぎ取り素っ裸にすると帽子と靴をその衣服で包み、鍵束も奪い取るともう一度頭を蹴飛ばして裁判長席に向かっていった。
「閻魔大王様を助けて人間界への復帰を願い出るつもりなんじゃろか」 「そやと思う。ホンマ抜け目のないやっちゃで。そやけど儂らはこの時を待っていたんや」 俺たちはマルクスにぴったりとくっ付いて行った。彼は裁判長席に着くと大机を台座から下に落とした。すると台座の床に南京錠のかかった戸口が現れ、マルクスがその戸口を鍵を使って開けると中から階段が現れた。
十四 地下坑道
閻魔大王様が監禁されている所とこの階段がはつながっていると思われるのに、どうした訳かマルクスは階段を睨むばかりで一向に動こうとはしない。 「真っ暗闇やさかい進むに進めんのやろな。ここからはコボの出番や任したで」 「あやすいことだわ」 自信たっぷりに俺は即答してやった。マルクスのギラギラ目からヒントを得たのだ。それは旭日丸の放射光戦を彼の目に集中させる事だった。そしてそれは予想以上にうまくいき赤いサーチライトのようにマルクスの目を光らせることに成功した。
「?吾輩の脳に何者かが憑りついたようだな。何の御用かな」 この一言で彼が驚きや動揺といったメンタルの持ち主でないことがわかる。やはり彼はレーニンやスターリンと同じ精神の持ち主なのだ。しかしたとえどんな人格であろうとも今は同じ目的を持った同士だ。「なん言ってりゃ~俺達も閻魔大王様を救いに来たんだで、お互い助け合って行きゃあよ~」 「そうかこの目は君がプレゼントしてくれたのか」 明晰な頭脳の持ち主であるマルクスは瞬時にすべてを理解してくれた。こうして俺達と彼は閻魔大王様を助け合う同士になったのだ。
階段を降りていくとドン突きになっていて左右両側に鍵で開ける鉄格子の扉があった。 「ここは吾輩に任せておくのじゃ」 不正解の方を開ければサムライ蟻が待っているそうだ。こんな危険な迷路をいくつも上がったり下がったりした奥の奥に閻魔大王様が閉じ込められている牢屋があるそうだ。
俺たちはマルクスといろんな会話を交えながら進んでいった。まずこの通路にやたら詳しいのを不思議に思いそのわけを彼に尋ねてみた。するとマルクス自身が此処の地下牢に罰として入れられたことがあって、その時に通路ゲーム感覚で覚えたのだそうだ。またその罪とは閻魔大王様に口答えをしたからだと言う。
「吾輩の唱えた空理空論の共産主義を悪用した独裁者たちによって多くの人民が殺され、その道義的責任を取らされてこの地獄に落とされたのじゃがそんな馬鹿な理屈があるもんか。吾輩はただ十九世紀後半の欧州全体を覆った革命ムードビジネスをしたまでだ。おかげでロンドンの高級住宅街に住むことができたわ。何が道義的責任だ。それならキリストも同罪のはずだと言ってやったんだ。そしたら奴もしばらくここにおったそうな。それでもどうしても納得いかなかった。それで不満顔を思いっきり露わにしてやったんだよ。そうしたら反省が足らんなどと閻魔がほざきおって理不尽にも吾輩をここの地下牢に入れてしまいやがったのだ」
「それであんさんは仕返しをしてやろうとこの地獄革命の陰謀を思いついたんでっか」 こんな露骨であからさまなアサやんの問いかけにもあっけらかんとマルクスは答える。 「その通りだよ。それでレーニンに相談してみたら面白いと賛成してくれての。それからスターリンも仲間に入れたんだが、あいつだけは大失敗であった」 「マオ?奴はとにかく扱いにくい。自分が常にトップでないと気が済まんようなのでな。だからこの計画には入れとらなんだ」 「えっ檻に入ったマオはどうなったかだって。もう蟻たちの胃袋に収められただろうな。どうせ死ぬのなら人の指図などの屈辱的なものなど受たくけないから自分から檻に入ったのだよ」
「何。鬼を落とし穴に入れている奴らか。あいつらは全員サイコパスだ。まあ吾輩もそうであるがな。ガッハッハー。何せ恐怖心をほとんど持っておらんので何でも出来るのだ」 「兵士か。あいつらは普通の人間だ。サイコパスなんか危なくて信用できんからな」 「えっあの蟻か。あれはミステリーとしか言えん。本当に訳の分からん存在で鬼たちも避けているぐらいだ。だが使い道はあった。実は今日の裁判が終わったら奴らに閻魔大王を殺させようと計画していたのだよ。アッアッハ~」
「まあしかし計画変更となった以上。これはこれとして次の最善方法をとればいいのじゃないかな」 「何?どおいう風に大王を捕まえたのかだって。それはのう毎年四月八日に釈迦の誕生日を祝って大王らが楼閣の天守で一日中酒を食らうんで吾輩がその酒に眠り薬をもってやったんじゃ。簡単であった」 「ということはまだほかにも神様が捕まっとるんでっか」 「いかにもその通り。オオッやっと大王の牢がみえてきたぞ」
十五 閻魔大王様
閻魔大王様が幽閉されている牢はT字路の突き当りにあった。閻魔大王様の扉を開ける前にマルクスが左右の扉の向こうを覗くと、何匹ものアリたちが慌てて逃げて行った。慎重派のマルクスはこうして光におびえるサムライ蟻の修正を確かめたのだ。「フンよっぽど光が怖いんだな。雷の光なんかに当たったらショク死するかもな。それでレーニンの首を切り落としたのだろうな。まあレーニンはへまこいてしまったが今の吾輩の目なら絶対大丈夫だな」 マルクスはそう俺たちに言ってから閻魔大王様の入っておられる牢の前で土下座をした。
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