表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Aちゃんの好きなひと

作者: あさり

 Aちゃんに好きなひとができたらしい。だれかと聞いてみても教えてはくれなかった。私はどうしても気になるので、休みじかんのたびに、Aちゃんの席に行ってはしつこく聞きつづけていた。相談にのるから、だとか、協力するから、だとか。どんなことを言ってみてもAちゃんは口を結んだままだった。Aちゃんは聞くたびにいやな顔をするので、聞きつづけるのはわるいような気がしたが、私はやめなかった。時にはくすぐってみたり、おどろかせてみたり、つねってみたりもした。それでもAちゃんの気持ちが変わることはなかった。だんだんこっちも意地になって、教えてくれないならAちゃんとはもう遊ばない、だとか、今言わないと好きなひとと仲良くなれない呪いをかける、だとか。何度かAちゃんを脅すようなことも言ってみた。けれど、Aちゃんは教えてはくれなかった。それから毎日、Aちゃんに好きなひとはだれかと聞きつづけた。一週間、二週間、三週間...。それでも一向にAちゃんは教えてくれる気配はなかった。Aちゃんは聞くたびにいやな顔をするが、私はかまわなかった。Aちゃんの好きなひとを聞き始めてから一カ月と少したったころ。学校のかえり道、Aちゃんのあとをつけ、人通りの少ないみちにさしかかったところで、私はAちゃんの後ろから肩をたたいた。Aちゃんはふりかえって少しおどろいた顔でこっちを見つめたあと、おそらく私に何の用かと話しかけるべく口を開こうとした。けれどそれはかなわなかった。私がAちゃんの右のほほをぶったたいたからだ。私はAちゃんに好きなひとはだれかとたずねた。Aちゃんはだまったままだった。私はすぐさま二発目のかまえをしてもう一度たずねた。Aちゃんは涙目になりつつも、今度こそ口を開いた。私はAちゃんに、あらかじめ準備しておいたほほを冷やすための氷水を渡したあと、その場を立ち去った。私はAちゃんの好きなひとなどに興味がなかったことに気づいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ