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座敷童の恋  作者: 櫨山黎
第八章
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小松瑞月と苧干原弥朝:TWEEDLEDUM AND TWEEDLEDEE

Here(桑の) we(木の) go(茂みの) round(周り) the() mulberry(周り) bush(ましょ)

The(桑の) mulberry(木の) bush(茂み), the(桑の) mulberry(木の) bush(茂み)

Here(桑の) we(木の) go(茂みの) round(周り) the() mulberry(周り) bush(ましょ)

So() early() in() the() morning


 あ、桑だ。


 あの桑の木、覚えてる。


 畑の脇で野生化しちゃってたとかって聞いた。

 モジャッとした、白いのが、沢山ついてる。

 花かな?


 昔、実を食べさせてもらったんだっけ、おばあちゃんに。


 …あれ?でも、最後の実を取った後に、切り倒したって言ってなかったっけ?根が張ってて、切った後も、土に根が残って、大変だったって。


 家を更地にするのに邪魔だったからって言ってた…ような。


 誰が、そんなこと、言ってたんだっけ?


 …何処の家、だっけ。




 畳の部屋。見覚えが有る。


 あれ?


 モスグリーン色の絨毯(じゅうたん)を敷いて洋風に見せ掛けてある。

 だけど、ここは、二階の、畳の部屋で、そうだ、窓の外から見下ろすと、桑の木が見えたんだった。


 でも、こんな、黒いアップライトのピアノなんて入ってなかったし、窓のカーテンも、こんな、可愛い水色で、レース部分が綺麗な白地の花柄じゃなかった。もっと、地味だったと思う。


 絨毯以外は水色と白で統一されてて、何か、可愛い部屋。


 そっくりな、制服姿の女の子が二人いる。


 あー、うちの学校の制服と、ちょっと似てる。紺色のブレザーに、グリーンのチェックのスカート。でも、中学生くらいかな。




 …なんか、私と似てない?二人とも。黒い、真っ直ぐな、長い髪。




 一人は、ピアノの前に座ってて、一人は、ヴァイオリンを構えている。


 ヴァイオリンを持っている子の(ほう)が、A線(ラの音)頂戴(ちょうだい)、と言うと、ピアノの前に座っている女の子が、ピアノの鍵盤(けんばん)を一つ叩いた。


 ヴァイオリンを持っている女の子は、A線(アーせん)調節するから、もう一回弾いて、と言って、ヴァイオリンの(げん)の調整を始めた。


 ヴァイオリンの調律(ちょうりつ)が終わるまで、ピアノの前に座ってる女の子は、細い、綺麗な声で、歌い始めた。




 (I)(am)彼で(he)(As)(you)あなた(are)なら(he)

 あなた(As)(you)(are)よね(me)


 って(And)ことは(we)私達は(are)(all)同じ(together)




 この歌、何処で聞いたんだっげ。聞いたことある。


 なんか…置換(ちかん)可能(かのう)、って、言われてるみたい。


 不思議な感じ。




 その曲、また歌ってるの、と、ヴァイオリンを持っている女の子が言うと、ピアノの前に座っていた女の子は、頬を染めて(うつむ)いた。


 ヴァイオリンを持っている女の子は、不思議そうに、どうしたの、と言った。


 三月だから、そろそろ自分の誕生日だ、と、ピアノの前に座っている女の子は言った。


 そうだね、と、ヴァイオリンを持っている女の子は、微笑みながら言った。

 そして、春休みだから一緒に遊びに行こうね、と言った。


弥生(三月)の朝に生まれた()()ちゃん」


文月(ふみづき)に生まれた()(づき)ちゃん」


 二人は、微笑み合った。




 突然、ピアノの前に座っている女の子の(ほう)が、娘が生まれたらジャスミンって名前にする、と言い出した。


 ヴァイオリンを持っている女の子は、急にどうしたの、と言った。


 ピアノの前に座っている女の子は、もし瑞月(みづき)に娘が生まれたらアリスって名前にする?と、尋ね返した。


 ヴァイオリンを持っている女の子は、戸惑ったように、アリスかアリサかな、と言った。


 ピアノの前に座ってる女の子は、また、細い、綺麗な声で、今度は、ピアノを弾きながら歌い始めた。




 (I)(am)彼で(he)(As)(you)あなた(are)なら(he)

 あなた(As)(you)(are)よね(me)


 って(And)ことは(we)私達は(are)(all)同じ(together)




 ()めて、と、言って、ヴァイオリンを持っていた女の子が、ヴァイオリンを、ケースの中に戻した。


 今日変だよ()()、と言いながら、その女の子は、ピアノの前に座っている女の子の、上気した顔を見詰めた。


 これは好きな人が好きな曲なの、と、ピアノの前に座っている女の子は言った。




 急に、視界が真っ暗になった。


 背後で「ここまで」という声が聞こえた。


 振り返ると、長い黒髪に、白いノースリーブワンピース姿の、私に似た、二十代半ばくらいの女の人が、微笑んで、こちらを見ていた。


「私はHaigha(三月ウサギ)


 三月の朝に生まれたの、と、相手は言った。


 私は七月に生まれたの、と言うと、文月(ふみづき)ね、と言って、相手は微笑んだ。




 何故ここは暗いの、と聞くと、相手は、「Just() then() flew() down() a() monstrous(け物が来た) crow()」と言った。




 何故あの二人は私と貴女(あなた)に似てるの、と聞くと、相手は「Tweedle(ヴァイオリン)dum(低音) and() Tweedle(ヴァイオリン)dee(高音)」と言った。友情(ガラガラ)Tweedle(ヴァイオリン)dee(高音)が壊してしまった、とHaigha(三月ウサギ)は言った。


「カラスの化け物の名前は妊娠」


「妊娠?」


「アリスって名前の娘は生まれなかったわけ」


「え?」




 Down,down,down.




 気づいたら、何処かの、繁華街のアスファルトの上に立っていた。


 ふと、上を見上げると、高い建物の上から、私に似た、制服姿の女の子が、垂直に落ちてきて。

 私と、重なった。




 (I)(am)彼で(he)(As)(you)あなた(are)なら(he)

 あなた(As)(you)(are)よね(me)


 って(And)ことは(we)私達は(are)(all)同じ(together)




 Haigha(三月ウサギ)が歌う声がしたので、また、後ろを振り返ると、真っ暗な中に、浮かび上がるように、白いノースリーブワンピース姿の、長い黒髪の女の人がいた。


「私達は置換(ちかん)可能(かのう)


 (いも)なのよ、と、相手は言った。


 急に、自分の背が低くなって、振袖を着ているような気がした。




 ここは何処、と聞くと、相手は「赤の王の夢の中」と言った。


 目覚めさせてあげる、と、相手は言った。


 「捕まらないように」


 何に捕まるの?と聞いたけど、貴女(あなた)が捕まるわけじゃないの、と言われた。


「ほら、あそこ」


 赤の王、は。


 何処かで見た顔で、(うずくま)って眠っていた。


 …黒っぽい、着物姿だった。






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