贅沢:I shall dream about Ten thousand yen tonight, I know I shall!
「えー、紙は行き渡りましたかね?では、各自、担当の箇所を翻訳いただいてですね。ワードに翻訳内容打ち込み。データを上げる時は、データ量制限があるので、トークに上げずに、トーク内のフォルダに入れて共有。ビデオ通話も出来ますので、会議や情報共有も可能。えー、これで、実際に集まる作業は、全体の文章の纏めの一回くらいで宜しいかと」
優将さんが仕切ってる。
…ガチでビジネスパーソンの才能がある。
営業とかもいけそう。
白いTシャツとジーンズ姿になって、優将の色違いみたいになった茉莉花が、慌てて、携帯にメモを取ろうとしたが、優将は、「はいはい」と言って、今の内容を、俺と茉莉花に入ったグループに、メッセージとして送った。
速。
何が凄いって、優将さん、これ、俺と茉莉花が極力、『二人で』集まらなくて済むように、ビデオ会議機能まで付いた無料ツールを導入してくれたんじゃないかってことでして。
助かるんですが、有能過ぎて狂気を感じる。
この高度な知能と才能の使い方の行動原理が、実は全て『幼なじみ』なのが。
そして茉莉花さん、ここまでの全作業の主導が実は優将さんだって、気付いて?この態度で。
…無理かなー。
作業が高度過ぎて、何処から切り分けて、誰がやったのか、とか考えるの難し過ぎて、正直、どうでもいいレベルだよな。
目が覚めたら崩し字部分の解読が、ほぼ終わってました、って、魔法?って感じだし。
俺も、この目で見てたのに、半信半疑だわ。
「…優将、やっぱ、金払うよ…」
優将は「お前」と言った。
「五万円三人で分けたら、大した儲けがないだろうよ。端数も出るし。今のところ、アプリも全部無料で、課金もしてねーんだし。俺は、翻訳までは手伝わんから。取っとけ」
…高校生にとっての約一万六千円って、そんなに小さいお金とは思わないんですけどねー。
「じゃあ、俺の取り分の二万五千円から、一万円出す。今日の飯代と、場所代だ。それでいいだろ」
五万円分以上の働きをしてくれたと思うから。
動機はともかく。
「場所代て。…高っ。たかだか、自宅リビングを数時間提供しただけですがな」
いや、無垢一枚天板の家具と大理石天板のキッチンに囲まれた仕事場なんて聞いたことないから。
テレビもデカいし。
そんなコワーキングスペースもレンタルオフィスも、寡聞にして知らないから。
オフィスにコーヒーサーバーとかあっても、茶器がイギリスの陶器メーカーの御品になるとは思えませんし。
お高いフルーツも出されないかと思われますのでね。
「いいから受け取ってくれ、優将」
優将は「真面目だねぇ」と、いつもの無表情で言った。
「…まぁ、報酬が入ってからにしなさいよ。そしたら受け取るから。まだ手元に入ってない金の話をせんでも良いでしょう。トラヌタヌキノカワザンヨウ」
はぁ、すんません。
ですよねー。
優将さん、金銭感覚がおかしいのかと思ってましたが、実は俺よりシビアかもしれませんね。
「はいはい、ピザの消費を手伝ってくれるんなら、マジで金、要らん。喰って、解散」
本当に、喰って解散するとは思ってなかった。
優将は、ほとんど喋らないし、茉莉花も、俺と、作業内容の確認をする程度しか話さず、目を|白黒させながら、優将とピザを見比べ、頑張って、フルーツと、ピザを三切れ食べていた。
俺も三切れ、優将が二切れ、で、あっさり夕飯は終わり、解散となった。
…優将さーん、何か、もっと、喋りなさいよ。
タクシーでも、茉莉花は優しいよ、とか何とか言ってたじゃないですかぁ。
…うん、脂っこいな、ピザ。もたれてきた。
フルーツがあって良かったかも…。
「じゃ、俺、高良を送ってくから」
「え、うん」
優将の提案に、向かいの自宅に戻る茉莉花は、目を瞬かせて、返事をした。
いや、要らん要らん。
たった一駅ですから。
まだ十九時半ですし。
お気遣いなく、優将さん。
…ま、幼なじみさんの方は、送ろうにも、お隣りさんなんですけど。
…寂しそうに見えるんですが。
茉莉花さん、優将さんに、今履いてるサンダル紛失を阻止されたことも、毛布を掛けてもらったことも、空調を調節してもらったことも、ミルクを温めてもらったことすら知らないんですが。
…それでいいなら、いいですが。
「じゃ、連絡するね、高良。私、後半部分担当ね」
「あ、宜しく」
あーあ、帰っちゃった。
いいんですか、優将さん。
「さ、送ってくよ、高良」
「…いいのに」
「犬、見たい」
「…あー、いいけど」
意外。
「犬、好きか?」
「…ペットさー。…死んだら悲しいじゃん。飼ったことないけど。…何か、見るのは…好き。猫とか、何でも」
…そうか。
悲しい、か。
「…一緒に犬の散歩、行くか?」
「行く」
一駅乗っただけの電車は、時間帯もあってか、座れない程度には混んでいて、駅を出ると、駅前の商店街程度の人の多さでも、少しホッとした。
「…結局、水戸と、あの子が、上手くいけば…いいのかな」
…当人同士の話ですからねぇ。
誰が、どう考えていたところで、あの子が『水戸の彼女』というのは本当だし。
「あー、ゲージュツカだからなぁ、水戸っちは」
「は…」
「あれでしょ、表現せずにはいられないってやつ。ありゃ一種の天才でしょ。上手くいくわきゃないわな」
優将は、「ゲージュツカじゃねぇ」と、もう一度言った。
俺は、その軽い言葉が、正鵠を射ていることに驚いた。
成る程。
「まず、茉莉花どころか、一介の高校生が、どうこう出来るような相手じゃないよね、ゲージュツカなんて。共感とかは出来ても理解できんだろうし。ま、見守りなさいな。他人事ですよ」
「…理解出来ないのに、共感出来るもんなのか?」
共感能力は高そうな子じゃないかと思うんだけども。
そう聞くと、優将は、またしても軽く、「そりゃそうでしょ」と言った。
「分かったふりしか出来ないでしょー。理解って何さって話。誤解で成り立ってるようなもんだろ、世の中。たださ、何となく、それが好きとか良いとか、嫌だとかってのは『何となく』分かるよ。そこが偶然合ってたら、『共感』」
「…確かに。そうでなくとも、芸術なんて分からんな、俺も。分かったふり、かもしれん。何の、造詣の深いことがあるわけでなし」
それに、共感力が強い人間の存在を、喜ばない人間もいる。
繊細過ぎて、相手が共感してくれ過ぎることに対して、見透かされている気分になって、居心地が悪くなる、というパターンがあるらしいのだ。
…エンパスとHSPの恋愛か…。
ゼロか百になりそうで、しんどそうだな、その恋愛関係。
ゼロか百になってしまう人間関係というのが、そもそも、あんまり楽しそうに感じられ
ない。
良きにつけ、悪きにつけ。
優将は「大体さぁ」と言った。
商店街の灯りが、優将の髪の毛に反射して、黒いTシャツに映えて。
夜の生き物みたいだな、と思った。
夜の方が、よく目が見える、美しい生き物みたいだ、と。
「付き合ってみようなんて奴等、どっかのレベルが偶々、ぴたーっと合っちゃってるわけよ。トウニンドーシニシカワカラナイナニカがあるわけ。そのレベルがいつまでも合っちゃーいないから別れたりすんだろうけどさ。理解しようとする努力と、共感出来る部分の多さと、分かったふりと、打算と、誤解とかが構成元素じゃないの?ああいうのって」
メンデレーエフが聞いたら、怒りで鼻血を吹きそうな構成元素だな。
「お前は、あの二人が上手くいかないって思ってんのね?結論」
俺には、もう、何も分からんが。
いきなり、優将は、俺の目を見たまま、静止した。
そして、ゆっくり、瞬きをした。
男にしては贅沢に長い睫毛が、ゆっくり上下した。
猫に『大好きだよ』って言う時の仕草だったら、正解だと思う。
黒い綺麗な毛並みの動物と対峙している気分になった。
「俺理論でいくとね、長いこと別れなくて、且つ上手くいってるカップルなんていないわけよ」
「根本否定か?」
千伏さんと付き合ってるんだろ?お前だって。
…俺なんかには、そもそも他人が、どういうスタンスで付き合うのか、ってのが、もう分かんないんだけどな。
「否定、っつーより、信じてねーの。でもさ、悲しいでしょ、そんなカップルなんかいないとか言うの。サンタクロースと同じ。皆さ、『もしかしたら永遠の愛が』とか思いたいわけよ。寒。それを手に入れるに見合う努力は惜しむのにねぇ」
すっ、と伏せられた睫毛が、俺と優将の合っていた目線を遮断した。
「…ロマンチストだな、皆」
やっぱり俺、リアリスト寄りかも知れん。
「且つ合理主義だから、困っちゃうよね。皆ね。ま、口を挟むだけ野暮って。昔から分かっちゃいるんだろうけど。他人のそういうの、面白いんだろうからねー、結構」
そう言えば。
口を挟む方が余計なお世話ってもんだ。
そりゃ、上手くいかないって分かってたって、普通放っとくはずだ。
俺は、今、優将に何を言おうとしたんだろう。
あの子が水戸と、どうなろうが、結局。
…俺にも、優将にも。
…関係ない、か。
「…だな。誰と誰が上手くいくとか、いかないとか、余計な御世話か。柄にもなく、変なこと言った。…瑞月って子が、気になるから、結局、どうなんだろう、とか思っちゃって」
「…おー。ありゃー、凄かったね。幼稚園の頃のことを思い出したわ、俺も」
あ、急に、夜中にそんな、刃物を持って住宅地に乱入してきた女性の話を蒸し返します?
既視感って嫌いですよ。
…ちょっと怖いんですけど。
「…結局、あいつ、何なん?茉莉花が、自分のねーちゃんだか何だかに似てる、とかって言ってたんだけども」
「…あー、お母さんが、どうのこうの、って」
タクシーで言ってたな。
それと…O地区で、伯母さんが言ってた噂と、俺が本人に直接聞いた話を総合すると。
…あんまり、いい話になりそうもないんだが。
優将の目が、再び、俺を捉えた。
魅入られる、って感覚が、針の先くらいだけ、分かったような気になる。
こりゃモテますわな。
「…何か知ってんの?高良」
…他人の出生の秘密は、かなり上位のプライバシーかと思うんで。
俺からは何とも…。
俺が黙っていると、夜の闇の中で、艶っぽい声が「一万円」と言って、クスクス笑った。
…おお。しまった。
そういう使われ方をするのか…。
金の話ってのは、怖いですね…。
「…散歩しながら話すわ。犬、連れて来る」
相手の顔は暗くて見えないが、優将のいる方向から、「やった」という、案外憎めない、小さい子のような声がした。
自宅に着いて、荷物を置いて、制服のまま、歴史さんを連れて戻ると、優将は、小さい子みたいに喜んだ。
…そういう顔を、幼なじみの人にも見せてあげたらいいと思うんですけど。
無表情で、ピザ食べてた時には、『何枚白いトップス買ってんの』とか憎まれ口叩いて、茉莉花さんに、悲しそうに『全部違う服だもん』とか言われて。
…あーあ、全然、伝わらないですよ、それじゃ。
歴史さんが、背の高い奴に、こんなに懐くとは思わなかったな、と思いながら、家の近くの公園で、ベンチに座りながら、俺は、歴史さんを撫でる優将を見ていた。
街灯で、優将の髪の色が、銀色がかったように、白っぽく光る。
歴史さんを撫でながら、「で?」と優将は言った。
「俺とお前の知ってる話を総合すると…あいつのかーちゃんに、茉莉花がそっくりで?水戸庇って、かーちゃん死んでて?んで、水戸は、あいつが、…まー、好きなんだか知らんけど。ほんで、水戸は、あいつのかーちゃんそっくりの、茉莉花と付き合ってて?あいつは、かーちゃんそっくりだから茉莉花と一緒にいたくて?」
優将は、「アホか」と言った。
「三角関係にしても聞いたことないわ」
あ、御自分を含めないでいらっしゃるんですね。
実は四角関係では?
「…フラれてたけど、慧も、あの女に告ってたぽいし、四角関係ってやつ?」
いや、そういうの言っちゃう?俺に。
The Pentagonも驚きの五角形だけど?
…あー!分かっちゃった、英語で慧をふった人!
慧、ごめん!
帰国子女の人だった?
それにしても…墓の前で暴れてたり、他校に乱入したり、という点を除くと、かなりの美人なんだが、やっぱり、そういう人間に告白出来るメンタリティが分からん。
慧の実際の心理としては駄目元だったのかも分からんが、多少なりとも「いける」と思ったからアプローチしたんじゃないか、と邪推してしまうと、その自信は何処から?と思ってしまうんだよな、やっぱり。
うーん、俺の中の慧の像が、本当に、よく分からないことになってきた。
そして、この恋愛相関図の複雑さよ。
いやもう、俺が知らないだけで六角形とかなのかな?図と言うか、最早、人間関係の佃煮と言うか。
ベンゼン環も二つあったらナフタレンで、三つあったらアントラセンになりますからして、炭素の六角形の構造式だけで、俺には手一杯ですよ。
「へー、ドMなんかな?自分のせいで死んだ女そっくりの女と付き合うとか、背徳感やべぇ」
優将が立ち上がると、歴史さんが、じゃれつく。
優将は、優しい顔で歴史さんを撫でながら、凄く酷いことを言う。
「背徳感とか言うなよ、だから…」
「何で?悪い感情って、背徳感以外に、どう楽しく使えば良いん?」
優将が、クルリと回ると、歴史さんも、クルッと回ってじゃれつく。
優将は、普段では考えられないくらい、楽しそうにクスクス笑った。
「ババァより恵まれてるから感謝しな、ってさ。俺って、殴られてもないし、家もあって服もあって、金もあって、風呂も当たり前に入れてて、飯も食えてて、借金もなくて、売り飛ばされねぇし、頭いい、制服も月謝も高い学校に行けて、顔も身長も恵まれてんだから、ってさ。両親揃ってるでしょ、なんて」
優将は、「へー」と言って、歴史さんを、優しく撫でた。
「金があったら、同情してもらえないんだ?飯喰えてたら、可哀想じゃないんだ?殴られてなかったら贅沢で、イケメンってクズで、高身長だと黙ってろって言われんだ?他人より、ぜーんぶ持ってるから、傷付かないし、頭が良いと、ほっといても大丈夫なんだ?他人が最初から持ってるものは、持ってないのに?他を持ってたら、贅沢なんだ?贅沢って、言ったらいけないんだ?両親?揃ってるだけだろ?家がある?あー、そーかよ、贅沢かよ」
優将が、「知ーらね」と言って笑って、クルリと回ると、歴史さんも、楽しそうに、クルッと回って、じゃれつく。
「俺が辛かった時に、コタツでテレビ観て、暢気にミカン喰ってた奴、全員死ね」
低い男の声なのに、楽しそうな、子どもの声だ、と思った。
…歴史さんには、小さな子どもの姿に見えているのかもしれない、と思うと。
少しだけ、ゾクリとした。
「俺が、どうだったってなぁ、茉莉花しか、気付いてくんなかったぞぉ」
無実の罪で人柱にされて、村に復讐するために、死後に祟りで洪水起こす存在とかって、こんな、綺麗な顔してるのかな、と、ふと、思った。
破壊神、とか呼ばれるのって、こういう、綺麗な姿で、楽しそうに、『皆死ね』って言うのかな、と。
反逆者だって、反逆するからには、裏切られた気分になったことくらいあったのかも知れないし、その姿は明けの明星、光を掲げる者と呼ばれるくらい、美しかったのだから。
普通、人間の原罪を引き受けて、全人類の身代わりに十字架に架けられてもいい、とはならないのだから。
だから人間なのであって。
他人に付けられた傷が疼けば、皆が自分と同じ痛みを味わえばいい、と、そいつが思ったところで、俺に、何か言えることがあるはずもない。
謝ることじゃないだろうけど。
俺、コタツに入ってたわ、多分。
知りようもなかったことだけど、気付かなかったし、見なかった。
「…どうしたい?」
「何が?」
「育児放棄って、解決したい?」
「しねーよ、だいじょぶ。時間が解決すっから。一番嫌な、辛い時なんて、とっくのとーに過ぎてんだ」
「時間が解決…?」
「子どもじゃなくなりゃいいんだよ。育児の放棄もクソもねぇ。九月で十七だ。成人すりゃいい話。就職でもすりゃ、万事解決。相手もまさか、ほっぽってた奴に、老後の面倒見てもらおー、とか、ムシのいいこと思わんだろ。介護問題まで、まるっと解決。持続可能よ」
「持続可能…」
嫌な使い方。
「いーのいーの。家庭なんて、とっくに崩壊してんだ。俺んちも、茉莉花んちも。これ以上、行政とかが何かしてくれたって、俺等、親のカード失って、施設とか行く?義務教育終わってっから、学校辞めて働く?悪化しかしねーの。どーせ、誰が何やったって、今更、親も、こっち見ねーよ」
座敷童の『家』だ。
あそこは、やっぱり、優将の『家』で。
『子ども』が、一人で住んでいる。
座敷童って、他人に見て見ぬ振りされた子どもなのかな、と、ふと思った。
口減らしとか、なんとか、理由は知らないが。
見えないし、いないことになっていて。
でも、いると、家が豊かになったり、いなくなると家が傾いたりする。
彼等が、出て行きたくなるようなことを、人間がしてしまうのだろう。
…入りたいのに、入れてやらないのだろう。
優将が、「なー」と言った。
「烏滸がましい、っつたよな。人間に、他人が思い通りに動かせるもんかい、って」
「…言ったし、そう思ってる、今も」
「だよなー。…なのに、何で…一番操作したくない人間を…。いや、思い通りになんて、出来てないんだけど。一緒にいると…大事に出来ない」
「…大事にしてると思うんだけど」
「縛るのって、大事にしてる?」
「縛る?」
一緒に閉じ籠りたくなる、という声が聞こえたような気がしたが、よく聞こえなかった。
「…俺から逃げてほしいなー、皆」
「優将?」
「縛んのは嫌。…寂しいの平気だけど、キライ」
長い脚が、踵を返した。
またね、と聞こえたような気がした。
「送ろうか」と声を掛けたが、「もう遅いだろ」と、振り返りもせずに言われた。
『家』に帰れ、と。
(マタイによる福音書 25章31節‐46節)
「人の子は、栄光に輝いて天使たちを皆従えて来るとき、その栄光の座に着く。 そして、すべての国の民がその前に集められると、羊飼いが羊と山羊を分けるように、彼らをより分け、 羊を右に、山羊を左に置く。 そこで、王は右側にいる人たちに言う。『さあ、わたしの父に祝福された人たち、天地創造の時からお前たちのために用意されている国を受け継ぎなさい。 お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、 裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。』 すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。 いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。 いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』 そこで、王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。』それから、王は左側にいる人たちにも言う。『呪われた者ども、わたしから離れ去り、悪魔とその手下のために用意してある永遠の火に入れ。 お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせず、のどが渇いたときに飲ませず、 旅をしていたときに宿を貸さず、裸のときに着せず、病気のとき、牢にいたときに、訪ねてくれなかったからだ。』 すると、彼らも答える。『主よ、いつわたしたちは、あなたが飢えたり、渇いたり、旅をしたり、裸であったり、病気であったり、牢におられたりするのを見て、お世話をしなかったでしょうか。』 そこで、王は答える。『はっきり言っておく。この最も小さい者の一人にしなかったのは、わたしにしてくれなかったことなのである。』 こうして、この者どもは永遠の罰を受け、正しい人たちは永遠の命にあずかるのである。