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アイ・アム・トリックスター  作者: 山野井 テリー
1/9

凡・人 異世界へ召喚される

作者がやりたい放題やりたくて生まれた作品です。


始まりは突然で、何の前触れも無くいきなりだった。

目が覚めたら異世界とか、トラックに轢かれたら異世界とか、そんなラノベ染みた物じゃなかった。


「よくぞ参られた。異界の若き勇者達よ」


「えぇーーーーっ!?」


山田(やまだ) 永作(えいさく) 19歳。

今日は天気が良かった。雲ひとつない快晴の青空。

そんな休日の散歩の途中、彼はいきなり異世界へと召喚された。


素っ頓狂な叫び声を上げた永作に話し掛けて来たのは、金色の王冠を被った白髪の老人。

そして周りには西洋風の全身甲冑を身にまとった騎士達がぞろぞろと集まっている。

この場所は宮殿の中、それも玉座の間なのだろうか、一際豪華な装飾に、部屋の奥には大きな玉座が置かれていた。


さっきまで河原を歩いていたら突然地面に魔法陣が現れ、一瞬でこの場所まで飛ばされ、永作は驚きすぎて言葉が出てこなかった。

その時___


「あの……ここは?」


___永作の代わりに言葉を発した者がいた。


誰だ!?


声の主は永作の後ろ側にいる。永作は声の聞こえてきた方へと振り返った。


「本当に誰!?」


そこにいたのは学生服を来た1人の女性だった。

見た目からして今風の高校生のように見えるが、永作とは面識の無い人物だった。


「あなたこそ誰なんですか!?」


そして女性の方も永作とはこれが初対面であった。


「ウォッホン!」


王冠を被った老人がひとつ咳払いをして、永作と女性がこちらへ注目するのを待ってから話し始める。


「勇者様方…突然の召喚で混乱されておるようなので1から御説明させていただきますぞ」


永作と女性は無言で頷く。


「ここはアルファニア王国の王宮内にある玉座の間。そしてこの私がアルファニア王国第20代目国王 バイゼン・ララフーマ・エシュトレス・ラ・トルク・アルファニアと申します」


名前長っ!?てか……


(アルファニア王国?……そんな国聞いた事無いけど…)


浮かび上がった疑問に首を傾げる永作と女性に目を向け、バイゼン国王は続けた。


「うむ…御二方が既にお気付きの通り、ここは御二方が住まわれていた世界とは全く別の世界。御二方にとってはつまる所の“異世界”で御座います」


「嘘っ!?」


「本当ですとも」


突然告げられた衝撃の内容に女性は頑なに信じようとせず、ずっと老人の言った言葉を疑い続けていた。

無理もないだろう。突然異世界へと呼ばれた、等と言う非現実的な話をそんな簡単に信じられる訳が無い。


だが___


「……えぇ、信じます」


「え……?」


女性とは対照的に永作はすぐにその話を信じた。


「おぉ!分かってくださりますか!」


老人は嬉しそうな声を上げ、女性は頭のおかしい人間を見るような冷たい眼差しで永作の方を見ていた。

だが、永作は決して頭がおかしかった訳では無い。


「バイゼンさんの話が事実だと信用出来る根拠は二つあります」


永作は女性の方へ向いて、説明を始めた。


「まず一つ目……僕と貴女は少なくともこことは別の場所から一瞬でここに来ている……しかもアルファニア王国なんて聞いた事ないでしょう?」


「それは…そうですけど…」


そして2つ目。


「ここにいる人達の顔付きはどう見ても日本人とは思えない。だと言うのにしっかりとした日本語で僕達は会話をしている」


「!!っそうですよ!異世界なんて言うなら何故私達は普通に会話する事が出来ているんですか!?やっぱり異世界なんて流石に嘘としか……」


だが永作は首を横へ振った。


「いえ、むしろ……これこそが、ここが異世界だと言う動かぬ証拠なんですよ」


「……どういう事ですか?」


「確かに僕達は日本語で会話しています……しかし、さっきからバイゼンさんの口元を見て気付いたんですが……開く口の形が聞こえてくる言語とまるで一致していない。……要するに、本当は日本語なんて話していないのに、何故か僕達の耳には日本語に翻訳されてそう聞こえているんですよ」


そして僕達の言語も恐らく、別の言語に翻訳されて彼等には聞こえている。

一体どういう原理かは不明だが、少なくともこんな事は自分達の知っている世界では機械を使わない限り有り得ない事だ。


「……いやはや、お見事です勇者様。まさに仰る通りで御座います」


バイゼンは永作の推理に関心し、永作に称賛の言葉を贈った。


「じゃあ本当にここは……」


異世界でしょうね。

永作がそう言い、女性は携帯を取り出して圏外になっている事を確認してから俯いた。

無理も無いだろう。

突然異世界へと呼ばれて、元の世界へ帰れるかどうかも分からない現状、とてつもない不安があるのだろう。

永作も不安が無い訳では無く、努めて冷静でいるだけで限界だった。


「その……だったらなんで……私達はここへ呼ばれたんですか……?それにさっきから勇者って……どういう事なんですか?そもそも私達は元の世界へ帰れるんですか!?」


そして、女性は俯きながら一気に全ての疑問をバイゼンへ投げ掛けた。


「そうですね…まず最初に結論を言いますと勇者様方は元の世界へ帰ることは出来ます」


バイゼンのその言葉を聞いて永作と女性は安心してホッと一息吐いた。


「ですが、その為には勇者様方には役目を果たして頂く必要があります」


「役目?」


「はい。この世界では100年に1度、『星の獣王』と呼ばれる強大な魔物が現れます。それと同じく100年に1度、異世界から招かれた勇者様が『星の獣王』を打ち倒すのです……そして、近々『星の獣王』が現れる時期が近くなっております。つまり___」


嫌な予感がする。


「御2人の勇者様方には是非『星の獣王』を討ち取って頂きたいのです!」


「はぁ!?」


「無理に決まってるだろぉ!?」


永作と女性は同時に叫んだ。


「喧嘩でも対して強くない俺にそんなおっかない魔物なんて倒せっこないですからね!?」


「わ、私だってそんな化け物倒せませんよ!?むしろ倒される側なんですから!?」


全力で拒否。

どんな魔物かは知らないが、説明を聞く限りライオンだとかゾウだとか恐竜だとか、そんな生物とは比較にならない程にやばい感じがする。

そんなのと戦わされるなんて2人は真っ平御免だった。


「御安心ください。勇者様方にはこちらの世界へ来る際に強大な力が付与されております。この召喚魔法の術式に込めれた神の御力により、星の獣王を問題なく打ち倒すことの出来る御力が、御二方には既に宿っておられる筈です」


そう言われても今一何の変化も自分からは感じられない。

女性も同じなのか、手のひらを見つめては首を傾げていた。


「でも……それはこの世界の問題では?何故違う世界の私達がそんな事をしなけらばならないんですか?」


まさにその通りだ。

女性の放った正論に同調し、永作は頷く。


「いいえ…もし星の獣王が現れ、この世界を破壊しつくしたら…次に星の獣王が現れるのは勇者様方がお住いになられている世界なのです」


「えっ!?」


「ですので、全く無関係…という話でも無いのです」


その話に確証は無いが、しかし決して無視出来る内容でも無い。

それに、この話が全て本当の事だとするのなら、かつての星の獣王は先代の勇者、つまり自分達と同じ境遇の人達が代々打ち倒してきたという事になる。

つまり、自分達も星の獣王を打ち倒せる可能性は充分にある訳だ。


「それに、星の獣王を打ち倒すことで手に入る魔法石を使わなければ、御二方を元の世界へと送り返す術式を発動する事は出来ないのです……」


(おいおいマジかよ…)


永作と女性は頭を抱えた。

最後に掛けられた追い討ちのせいで、もはや星の獣王討伐はやらざるを得ないという事になった。

それでもどうにかして無事にこの場を切り抜けられる突破口を探そうと、永作が頭を必死に回転させ始めたその時__


「……分かりました…………やります!」


決意の籠った眼差しで、女性はそう言い放った。

なんで!?という目で永作は女性の方へと目を向けたが、その強い眼差しを見て諦めがついた。


「そうか……やるしかないですよね…」


仕方ないなぁ。


「やっていただけますか!!感謝致します!!」


「おぉぉぉぉっ!!」


その言葉にバイゼンも周りにいた騎士達もどよめき、喜びの声を上げた。

その騒ぎの中で永作は女性へと近付き話しかけた。


「ところで今更ですけどお名前は?俺は山田永作って言います」


「あ、私は伊織(いおり) 杏果(きょうか)と言います。あの……こんな事になりましたけどよろしくお願いします。力を合わせて頑張りましょう!」


「ははは……そうですね。頑張りましょう!」


永作と杏果は固い握手を結んだ。

そこへ、メイド服の女性がバスケットボール位の大きさの水晶玉を抱え、2人の側へと歩いてきた。


「勇者様方…御前失礼致します。まずはこの水晶玉にお触りくださいませ」


「えーとこれは?」


差し出された水晶玉に指をさして、永作はバイゼンへと尋ねた。


「その水晶玉は【女神の心眼(セラフアイ)】と呼ばれる魔道具でして、勇者様方に宿っている力、能力、魔力量を測定する事が出来ます」


「へぇ」


確かにそれは気になる所だ。

バイゼン曰く何かしらの力が自分達には宿っているとは言え、それがどういった物で、どれ程の物なのかは自分では分からなかった。

だが、これに触れればその問題は解消される。


「さぁ、どうぞ」


「では私から行きますね…」


恭しく差し出された水晶玉に、杏果は緊張した面持ちでその水晶玉に触れた。


「うおっ!?」


その瞬間、水晶玉が眩く輝きだし永作は驚いて声を上げた。

そして、宙に読む事は出来ないが文字のような物が大量に浮かび上がった。

その場にいた全員が文字の方へと見上げる。


「こ、これはっ!?」


「え!?何っ!?何て書いてあるの!?」


バイゼンの張り上げた驚愕の声に杏果は一瞬だけ驚き、慌てた様子で尋ねる。

一体何が書いてあるのだろうか?


「し、信じられない……身体能力、魔力量、共に記録されている過去の勇者様方のどれよりも遥かに上回っている!!それに……この能力は…『無限に上昇し、底尽きない魔力』だって!?」


「え」


「間違い無い!!貴女は歴代最強の勇者様です!!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


その場にいた全員が驚きの声を上げた。

杏果に至っては目玉が飛び出るんじゃないかという位に目を丸くさせ、叫び声を上げている。


「歴代最強……すごいなぁ」


まるで他人事のように惚けていた永作に、杏果はキッと振り返った。


「次は永作さんの番ですよ!」


「はいはい……」


杏果に背中をぐいぐい押されながら永作は水晶玉の方へと歩いていく。


(まるでラノベだよな。異世界行ったらチート能力とか…………まぁ、俺はそこそこ強い程度の能力値だと良いなぁ……)


そんな事を考えながら永作も水晶玉に触れる。

すると先程杏果が触れた時と同じように光輝き、宙に文字が浮かび上がった。


(さて……結果は?)


永作はバイゼンが文字を読み上げるのを待った。


「こ、これは!?」


「お?」


またしても驚きの声を上げたバイゼンに、永作も杏果も続けてバイゼンが言う台詞に興味深々だった。


「し、信じられん!!」


「おぉ?」


「身体能力、魔力量、共に記録されている過去の勇者様方のどれよりも遥かに下回っている!!」


「ほうほう……………………ん?」


「そしてこの能力…………『握力が10kgだけ増える』だって!?」


「え」


「間違いない!!貴方は歴代最弱の勇者_いや!!勇者どころかこの世界において最弱の存在と言っても過言ではありませんぞ!!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


その場にいた全員がこれまた驚きの声を上げた。

永作に至ってはもはや目玉が飛び出し、顎が外れんばかりに大きな口を開けて、叫び声を上げていた。



伸び代があるのかという位に最弱な主人公。

続くのかどうかも怪しい物語、スタートです!

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