夜這いからの劇的な再開と過去の思い出
ベットの端に座り彼女は語りだした。
8歳の頃に夏休みの帰省を俺がした時に彼女が住んでいた所で出会ったらしい。
そして何度か共に遊んだ事。
出会いは雨に日。
俺は傘を持たずに駄菓子屋に行った帰り、急に振り出した雨に打たれながら急いで帰っていた。
その途中で公園からすすり泣く声が聞こえてきた。
気になって丸い天井のある遊具の中を覗き込んだ。
すると同じ年位の女の子が中で泣いていた。
話を聞くとどうやら親が離婚するらしく母親が家を出ていくらしい。
それを聞いて家を出てきたらしい。その時の女の子はまだ8歳と小さく、母親と離れ離れは辛かったに違いない。
親権でもめる両親を見るのが嫌で逃げてきたようだがいつまでもこのままでは風邪をひくから
帰ったほうが良いと俺は言った。
だけど帰りたくないと言われ心配だった俺も一緒に遊具に残った。
見知らぬ二人は無言で遊具の中で並んで座り込み佇む。
少年は何か思い出したかのように駄菓子を取り出し少女に勧める。
少し安心したのか泣き止み、お菓子を口にゆっくりと持って行っている。
幸い女の子は少ししか濡れていないようなので
良かったのだが、俺の方はびしょ濡れ真夏とはいえ少し寒い。
一旦着替えに帰ろうかと思ったが彼女の顔をみて止めた。
「なあ、おかあさんと別れるのは寂しいか・・・」
俺は両手を後ろに付き天井を眺める
うなずくだけの彼女をみて続ける
「でもさ、死に別れじゃないんだから会いたいときにいつでも会えるんじゃないかな。
一生会えないとかなら辛いけどさ。お父さんは怖い人なのか?」
彼女の様子を見ながら話す
彼女は首を横に振り怖く無いし優しいとだけ言った。
「それだったらこういうのはどうかな。一か月に一度は母親と会わせてほしい。
学校が長く休みの時はお母さんの家で泊まらせてほしいとか、
それなら寂しさも少し紛れないかな」
俺はせいっぱい優しい口調で言う
「お父・・さん・・許してくれるかな」また少し泣き出してしまった。
それを見てがつっと音がしそうな勢いで女の子の両肩を掴む
「大丈夫さ、優しいっていうならそれ位・・・会うのは許してくれると思うよ」
左の服の袖で涙を拭いている女の子に俺の持たされていたハンカチを渡した。
そのあと落ち着いてから家まで送り、また明日も公園で会う約束をした。
数日彼女と過ごして帰省先の実家にも遊びにきてもらったりかなり仲がよくなったのを覚えている。
家に帰る別れの日になにか約束をしたような気がするのだが俺は詳細を覚えていない。
というか小学二年と3年の時しか彼女には会っていないのだ。
小3の時も夏休みに会えるとわくわくしながら帰省していたのを覚えている。
しかし小4の夏休みに帰った時には彼女の自宅には別の人が住んでいて引っ越した後だった。
それから連絡を取れたことは無い。