⭕ パーティ結成? 2
新たに壁へ掛けられた木製の名札を見てみる。
“ 厳蒔弓弦 ” と名前が黒字で書かれた名札の右横に、“ 挧氤 黐音 ” と名前が黒字で書かれた名札が掛かっている。
挧氤の名札の右横には、“ 厳蒔磨絽 ” と名前が赤字で書かれた名札が掛けられている。
名札には退魔師の階級を表す色付きの紐も結ばれている。
他にも複数人で班を組んでいる退魔師の名札が掛かっている。
他の班は5名 ~ 7名程と多いようだ。
弓弦と挧氤は他の退魔師に比べれば強い方だ。
我も居る事だし、本来ならば2人で十分ではある。
セロフィートと行動しているマオは、1人でも十分過ぎるだろう。
他の退魔師達から “ 魔喰らいの弓を愛用する奇変人 ” と揶揄され、避けられている弓弦と、“ 気功師という異種業の盲目青年 ” として退魔師達から腫れ物扱いされている挧氤と、退魔師になったばかりの少女陰陽師のマオとの組み合わせは、色んな意味で退魔師達に注目される事だろう。
セロフィート,キノコン,我も居るのだから、話題に上がらない筈がないな。
絲腥玄武
「 名札も確認した事だし、依頼を受けて昼食にするか? 」
厳蒔弓弦
「 そうだな。
少し早いが移動している間に正午になるだろう 」
挧氤 黐音
「 私も賛成です。
どの依頼を受けますか? 」
我は依頼帳が並べられている棚を指差し、弓弦に尋ねる。
我は弓弦が愛用する魔喰らいの弓を依り代にしている故、弓弦の式神だからな。
1番に弓弦に意見を求めるのは当然の事であろう。
挧氤も乗って来るとは思わなかったが、これから共に組む仲間となった挧氤の意見も聞くべきだな。
挧氤も交ぜて3名で依頼帳を見る事にした。
マオ:厳蒔磨絽
「 …………セロぉ、もしかしてさ、オレってあぶれてる?? 」
セロ:式神
「 はい?
何か言いました? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 全然会話に入って来ないと思ったら他事してたのかよ… 」
セロ:式神
「 挧氤さんの気功札を入手しましたし、気力を練り作る気功の仕組みも解明したいですし、法力の解明もしたいですし──、楽しみが尽きません♪ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 楽しそうで何よりだよ…。
気功って使えそうか? 」
セロ:式神
「 気力と気功を解明する為には気功師が必要です。
{ キノコン達に気功師を探すよう指示を出しました。
見付け次第、拉致するよう指示も出してます }」
マオ:厳蒔磨絽
「{ はぁぁぁ?!
キノコン達に何させてんだよ!
拉致させるって──誘拐すんのかよ? }」
セロ:式神
「{ はて──、そんな事言いました? }」
マオ:厳蒔磨絽
「{ 惚けんな!
さっきガッツリ言ったろが! }」
セロ:式神
「{ 安心してください、マオ。
拉致──いえ、捕獲するのは悪い気功師ばかりです。
安心してください♪ }」
マオ:厳蒔磨絽
「{ 何で2度も言うんだよ…。
“ 捕獲 ” って言葉を変えてもやる事は同じだろうが!
あんま酷い事はしてやるなよ? }」
セロ:式神
「 はいはい。
{ 壊れない程度に加減はします }」
マオ:厳蒔磨絽
「 前科が有り過ぎて信用出来ないんだけど…… 」
セロ:式神
「{ 気功を自在に扱えるキノコンを生み出せたら凄いと思いません? }」
マオ:厳蒔磨絽
「 セロ……。
{ キノコンを今より強くしてどうすんだよ!
今でも十分強いんだから、気功なんて覚えさせる必要ないだろ?
キノコンに何させる気だよ… }」
セロ:式神
「 マオの為です。
全ては “ マオの助け ” となるキノコンを生み出す為です 」
マオ:厳蒔磨絽
「 セロ…(////)」
セロ:式神
「 何かを成し遂げる為には大なり小なり犠牲が伴います。
スッパリと割り切りましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 オレには割り切れないっての… 」
絲腥玄武
「 セロ──、話中に済まない。
受ける依頼の候補を選んでみた。
何れが良いか意見を聞かせてくれないか 」
セロ:式神
「 はいはい。
拝見しましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 玄武さ~~ん!
オレも見たいよ 」
絲腥玄武
「 あぁ、そうだな。
セロと一緒に見てくれるか? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 うん!
──セロ、オレにも見せてよ 」
セロ:式神
「 はいはい。
一緒に見ましょう 」
セロフィートとマオは良く口論をするようだが、何だかんだ言っても仲が良い。
マオにとってのセロフィートは、甘えられる唯一無二の存在なのだろうと思う。
仲睦まじいマオとセロフィートの様子は微笑ましいな。
弓弦は何処か物悲しげそうな瞳をして、マオとセロフィートを見詰めているように我には見える。
ふむ……弓弦もセロフィートに甘えたいのだろうか?
我が見てもセロフィートは頼り甲斐がある。
我も依頼候補について、セロフィートに意見を求めるぐらいだからな。
弓弦は長男として十分過ぎる程、頑張って来たと思う。
誰かに頼ったり、甘えたり、弱音を吐いたり、弱味を見せられる相手が必要だろう。
包容力のありそうなセロフィートならば、弓弦の苦悩も受け止める事は容易だろう。
然しだ、何せ相手はセロフィートだ。
大手を張って、薦める事は難しいと感じてしまう。
セロフィートは基本的にマオ以外は眼中にないように見えるしな。
セロ:式神
「 ──この依頼にしましょう。
橋の上に現れる妖魔退治です 」
マオ:厳蒔磨絽
「 橋を占領してる妖魔か。
このメンバーなら余裕じゃないかな! 」
セロ:式神
「 マオ、油断は禁物です。
依頼書の内容だけで判断するのは浅はかで軽率です。
素人が起こし易い失敗の要因ですよ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 くぅ~~、根拠の無い事を如何にも最もらしそうに言いやがってぇ~~!! 」
セロ:式神
「 間違ってはないでしょう?
ワタシは可能性の話をしてるだけです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 むぅ~~ 」
挧氤 黐音
「 磨絽殿とセロ殿は仲が良いのですね。
まるで兄弟のように見えます。
あ……弓弦殿の前で申し訳無い事を──。
口が過ぎました… 」
厳蒔弓弦
「 いや、挧氤の言う事は正しいな。
私はマオと歳が離れているし、五行軍に身を置いていた事もある。
私はマオに兄らしい事をしてやれた記憶は無いんだ。
寧ろセロの方が私よりもマオと接する時間の方が長かった。
セロの方がマオの兄らしく見えるのは当然だ。
挧氤が謝る事はないし、気にする事もない 」
弓弦さん!!
ナイスフォローだよ!!
本当の事と嘘を絶妙に噛み合わせて、挧氤さんに事情を説明しつつ、落ち込まないように励ましてる!
弓弦さん──、本当に18歳なのかな?
オレが18歳だった時よりも全然大人なんだけど──!!
セロ:式神
「{ 18歳のマオに見せてあげたいですね }」
マオ:厳蒔磨絽
「{ 言うなぁ~~! }」
絲腥玄武
「 弓弦、この依頼で頼む 」
厳蒔弓弦
「 分かった。
手続きをしよう 」
弓弦は我から5枚の依頼書を受け取ると、4枚の依頼書を受付人へ渡し、1枚の依頼書を提出する。
受付人は受け取った1枚の依頼書に、承認印若しくは受理印を依頼書の上に押した。
マオとセロフィートは “ すたんぷ ” と言っているな。
受付人から依頼書を受け取った弓弦は、依頼書をセロフィートへ手渡す。
何故、弓弦が依頼書をセロフィートへ手渡すのかというと、1枚しかない依頼書をセロフィートが増やしてくれるからだ。
セロフィートは1枚の依頼書を古代魔法とやらで3枚に増やしてくれる。
セロ:式神
「 どうぞ、依頼書の複製です 」
挧氤 黐音
「 ──セ、セロ殿!?
今、何をされたのですか?! 」
セロ:式神
「 奇術で増やしました♪ 」
挧氤 黐音
「 き…きじゅつ……ですか?? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 手品だよ!
これを旅先ですると喜ばれてさ、路銀が集まるんだよ 」
挧氤 黐音
「 てじな……ですか?? 」
セロ:式神
「 旅で披露する余興の1つです。
ワタシの十八番です♪ 」
挧氤 黐音
「 そ……そうなのですか… 」
挧氤は狐に摘ままれたような顔をして驚いているようだ。
盲目だと言うのに、まるで見えているかのような反応をする。
盲目と言うのは嘘で、目隠しは「 盲目だ 」と周りを思わせる為の演出なのだろうか……。
まぁ、我には関係無い事だがな。
厳蒔弓弦
「 依頼書があれば、現地で情報収集する時に役立つな。
有り難う、セロ 」
セロ:式神
「 どう致しまして。
飲食店へ行きましょうか 」
厳蒔弓弦
「 そうだな 」
退魔仲介所・本部を出た我等は、《 北地区 》にある飲食店へ向かって歩き出した。
◎ 訂正しました。
気孔 ─→ 気功




