✒ 怪奇! 下半身を狙うテケテケさん 2
セロが “ 手蹴手蹴 ” を誘き出すに、古代魔法を発動させる。
セロの後ろに隠れて駘鼎街道を見ていると、何かを這いずるような音が聞こえて来た。
ズリズリ……ズリズリ……ズリズリ……と “ 何か ” が “ 何か ” を引き摺りながらやって来る。
マオ:厳蒔磨絽
「{ セロ──、もしかして…… }」
セロ:式神
「{ 現れたようですね。
マオ、行ってください }」
マオ:厳蒔磨絽
「{ 行くって──、未だ姿も見えてないんだけど! }」
セロ:式神
「 マオが出れば、手蹴手蹴さんも喜んで姿を現せてくれます 」
マオ:厳蒔磨絽
「 手蹴手蹴に敬称なんて付けんな! 」
セロ:式神
「 マオ、ファイト♪ 」
そう笑顔で言ったセロは、オレの背中を押しやがった。
オレは刀を構えた状態で駘鼎街道に出る形になった。
手蹴手蹴
「 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛──。
下半身──ぐわ゛ぜぇろ゛ぉ゛ーーーーーっっっ!!!! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ぎぇやぁぁぁぁぁぁ~~~~~~っっっ!!! 」
霧の中から現れたのは、太くて長い舌だった!
舌には涎が大量にベッタリと付いていて気持ち悪い!!
オレは悲鳴を上げつつも、咄嗟に刀を振り下ろして太くて長い舌を斬った!!
オレが舌を斬り落とすと、手蹴手蹴はけたたましい悲鳴を上げる。
斬り落とした舌は地面に落ちても、魚みたいにビクビクと動いていて気持ち悪い!!
霧の中から黒い髪が伸びて来る!
オレに目掛けて真っ直ぐに伸びて来る髪を刀で斬る!!
ザシュ──って音を出しながら斬った黒髪は白髪に変色して動かなくなる。
髪が斬られたと気付いたのか、今度はウネウネと複雑に動きながら黒髪が伸びて来る!!
オレは黒髪の攻撃を避けながら、次々にバッサバッサと斬り続けた。
黒髪が霧の中へ入って見えなくなると、今度は真っ白い手が見えて来た!
真っ白い手は幾つもあって、複数の腕が見える。
複数の腕は何れも長くて器用に動いている。
どうやら、オレを捕まえようとしているみたいだ。
そう易々と捕まる訳にはいかないから、刀を振り下ろしては容赦なく腕も斬り落とす。
切り落とした白い腕は干からびてシワシワになると勝手に朽ち果てていく。
太くて長い舌で攻撃されたり、大量の黒髪で攻撃されたり、無数の手で攻撃されたり──、その繰り返しに少し飽きて来た。
視界を隠している霧が邪魔で苛々イライラして来た!
マオ:厳蒔磨絽
「 ──セロ、霧を消してくれ!
これじゃあ、手蹴手蹴の姿が見えないし、戦い難いよ! 」
セロ:式神
「 はいはい 」
セロが霧を消してくれる。
手蹴手蹴の姿が露になった!
マオ:厳蒔磨絽
「 どげげぇ~~~~っっっ!!!! 」
手蹴手蹴の姿を見て、オレは不覚にも叫び声を上げてしまった。
手蹴手蹴の姿はオレが知ってる姿とは全然違っていた。
当たり前だけど!
手蹴手蹴は上半身が3つあった。
黒髪は長くて、腕は左右で合わせて8本ある。
上半身が3つあるから腕は全部で24本だ。
道理で手が多い筈だよ!
然も、確かに斬り落とした筈なのに生えてるしぃ~~!!
再生するとか有り得ないだろぉ!!
どの上半身も色白で半裸だ。
デカそうに豊満な胸は垂れている。
胸の下になる腹部には大きな口があって、太くて長くて涎でベトベトな舌が不気味に動いている。
脇腹の当たりから真っ白い赤子が無数に蠢いていて気持ち悪い!!
然も、赤子は両目から血を流している。
何かを掴もうとしているのか、小さな両手をわちゃわちゃと動かしている。
赤子だから泣き声が煩い。
下半身が無いのに、ほふく前進していないみたいだ。
一体どうやって移動をしているんだよ……。
オレが距離を取ると、手蹴手蹴は左右にある身体──上半身を倒すと、左右から生えている8本──合計16本の腕を動かしてオレに近付いて来たぁぁぁぁぁぁ!!!!
まさに手を蹴るようにして巨体を巧みに動かして、オレに目掛けて突進して来るぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!
悪夢に出て来る奴だぁぁぁぁぁぁ!!!!
真ん中の上半身から生えている8本の白い腕が奇妙に伸びて、オレを捕まえようとして来る!
あの腕に捕まったら最後、下半身が喰い千切られるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!
セロは見ているだけで、オレを助ける気は更々なさそうだ!
セロと目が合っても、セロは笑顔で手を振るだけだ。
肝心な時に何もしてくれないのは相変わらずだな!!
ピンチなオレを見ても助ける素振りさえ見せないセロは何時もブレない。
マオ:厳蒔磨絽
「 ──オレ1人で倒せって言うのかよ!!
どうやって倒せば良いんだよぉ!! 」
手蹴手蹴には3つの顔があるけど、どの顔も崩れていて人の顔には見えない。
下半身を妖魔に喰われて、仲間に殺害された男じゃないのかよ!!
女になってんじゃん!
何でだよ!
男の残留思念体は、どうしたってんだ!?
こんな気持ち悪いの怪物にも居ないよ!!
コイツを倒さないと、依頼は解決させられない。
コイツに下半身を喰い千切られて、死人だって出てるんだ!
維持でも倒さないとだ!
オレは双刀で戦う事にした。
実体があるんだから、魔法だって効く筈だ!
アミュレットの魔鉱石に記録されている強力な魔法を出し惜しみしないで、ふんだんに使ってやる!!
オレは1人で手蹴手蹴との戦闘に挑んだ!!




