✒ 怪奇! 下半身を狙うテケテケさん 1
──*──*──*── 駘鼎街道
マオ:厳蒔磨絽
「 此処が駘鼎街道か──。
此処に “ 手蹴手蹴 ” が出るのか…… 」
駘鼎街道の近辺にある≪ 村落 ≫の退魔仲介所へ立ち寄って、受付人に4枚目の依頼書へスタンプを押してもらった。
退魔仲介所の受付人からは、「 死人が出ている依頼だから無理して受けなくて良い 」って言われたけど、死人が出てる依頼を放っとくなんて出来る訳ない!
オレはセロが居てくれるし、〈 器人形 〉もキノコンも居てくれる!
オレ達が【 手蹴手蹴事件 】を解決させないで、誰に解決を任せられるってんだ!
誰でもない “ オレ達 ” が 【 手蹴手蹴事件 】を解決させるんだ!!
セロ:式神
「 マオ──、手蹴手蹴が下半身を失った原因は妖魔に襲われたからです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 妖魔に襲われた?
何して妖魔に襲われたんだ? 」
セロ:式神
「 妖魔に襲われた時、囮にされて置き去りにされた男性です 」
マオ:厳蒔磨絽
「 うん?
女子学生じゃないんだ? 」
セロ:式神
「 此処は≪ 日本国 ≫ではないですよ。
線路もなければ、電車も走ってません 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そりゃそうだけど…… 」
セロ:式神
「 囮として置き去りにされた男性は、妖魔に襲われて下半身を失いました。
上半身だけを残した状態で助けを求めて駘鼎街道を這いずっていたようです。
懸命に≪ 村落 ≫を目指していたのかも知れません 」
マオ:厳蒔磨絽
「 それで……男は助かったのか? 」
セロ:式神
「 キノコンの資料では “ 助からなかった ” と書かれてます。
≪ 村落 ≫へ向かっている途中、男性を囮にして逃げた仲間達が、生きていた男性を見付けて殺害したようです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 は?
殺害した??
助けるんじゃなくて?
殺したのか?? 」
セロ:式神
「 その様です。
上半身となりながらもしぶとく生き残った男性に対して、各自で農具を持ち寄った男達は──、寄って集り、容赦なく息の根を止めました。
殺害された男性の死体は野犬の群れに喰べられた──と書かれています 」
マオ:厳蒔磨絽
「 死んだんだ…。
もしかして、自分を囮にして殺しやがった嘗ての仲間達に復讐する為に男は “ 手蹴手蹴 ” に姿を変えて駘鼎街道に出没してるのか? 」
セロ:式神
「 そうでもないです。
何せ、男性が殺害されてから100年以上は経ってます。
生物は死を迎えると肉体から魂が抜け、輪廻の流れへ還ります。
稀に欠片が残こされる事もありますけど、残留思念体に生前の記憶は無いです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 えぇと……≪ 日本国 ≫では “ 地縛霊 ” って言われてる幽霊──霊体の事だよな? 」
セロ:式神
「 そうですね。
残留思念体には何かをする力は無いです。
唯、其処に佇んでいるだけです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 あっ──、もしかして!
男が死んだ場所に色んな人が “ 良かれと思って ” 花を手向けたり、お供えしたりするから──、周囲の空気が澱んで怪奇現象が起きるようになった?? 」
セロ:式神
「 良く覚えてましたね。
空気が澱むと怪異や異形が集まり易い場所となります。
妖かし,物の怪の類いも集まるようになります。
何故か分かります? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 正しい弔い方じゃないからだよな?
心から死者を弔いたいなら、死者の遺骨が納骨されてる家墓へ足を運んで、花を手向けたり、手を合わせて冥福を祈った方が良いんだったよな? 」
セロ:式神
「 そうです。
事件現場や事故現場で手を合わせて合掌するぐらいなら良いですけど、花や物品を供えたまま置き去るのは良くない行為です。
家墓へ御供えをして、手を合わせ冥福を祈った後は、責任を持って持ち帰るようにしましょう。
家墓で参れば、事件現場や事故現場の空気も澱みませんし、怪異,異形,妖かし,物の怪の類いも集まり難くなります。
残留思念体も澱みに穢され難くなり、地縛霊にはなりません 」
マオ:厳蒔磨絽
「 じゃあ──、男の残留思念体は澱みに穢されて…… 」
セロ:式神
「 100年も経ってますし、周囲の空気が澱まなくても、残留思念体は穢れます。
この≪ 島国 ≫には妖魔が存在してます。
陰陽師は呪術を扱いますし、残留思念体を悪用する者も存在します。
残留思念体が悪影響を受ける原因は多々あります 」
マオ:厳蒔磨絽
「 鯔のつまり、100年前に下半身を失って、無惨にも殺害された男の残留思念体は、何等かの原因で、“ 手蹴手蹴 ” に変貌して、駘鼎街道を通る男だけを見境なく襲っては、下半身を喰い千切って殺し捲ってる──って事だな? 」
セロ:式神
「 そういう事です。
妖魔でなければ実体がありますし、マオにも倒せます。
楽しみですね♪ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 オレは “ 手蹴手蹴 ” と『 こんにちは 』したくないんだけどな…… 」
セロ:式神
「 “ 手蹴手蹴 ” が出没するまで待つより早々に出没させるとしましょう。
“ 手蹴手蹴 ” を誘き出します 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ど、どうやってだよ…… 」
セロ:式神
「 辺りを暗くし、温度を下げ、霧を発生させます。
“ 手蹴手蹴 ” が出没し易いよう澱みを漂わせます 」
マオ:厳蒔磨絽
「 じゃあ、オレは…… 」
セロ:式神
「 マオは刀を構えて待機してください。
勇猛果敢なマオの勇姿をワタシに見せてください 」
マオ:厳蒔磨絽
「 手伝わない気じゃないよな? 」
セロ:式神
「 心配しなくても、マオなら倒せます。
ワタシに剣術を習っているのです。
倒せなくて、どうします 」
マオ:厳蒔磨絽
「 …………分かったよ。
努力はするよ 」
オレは愛刀を鞘から抜いたら、構えて待機する事にした。
◎ 訂正しました。
置き去りとされた男性は ─→ 置き去りにされた男性は




