✒ 尻小玉を抜く妖かしの正体 2
──*──*──*── 里長の長屋
マオ:厳蒔磨絽
「 あの白くて丸いのが、妖かしに抜き取られた尻小玉で良かったよな!
意識を失っていた子供達も目を覚ましたし、元気に走り回ってるし。
心配ないかな? 」
里長
「 本当に有り難う御座いました!
池に住み着いた妖かしも退治していただいて──、何と御礼を言ったら良いのか…… 」
マオ:厳蒔磨絽
「 その池に関しての事なんだけど──、これから大事な話をしたいんだ。
里長さん里人の皆さんに伝えて、周知してもらいたいんだけど、良いかな? 」
里長
「 はて……どのような話でしょうか? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 その前に──、里人達から情報収集をしてもらった茸の姿をした生き物は、オレの式神で “ キノコン ” って言うんだ。
悪さはしないから安心してほしい 」
里長
「 あぁ……あの何故かやたらと可愛い喋る茸は陰陽師様の式神でしたか。
いやぁ~~、和みますなぁ~(////)
子供達もすっかり懐いてますし、里に残ってほしいぐらいです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 気に入ってもらえて安心したよ。
じゃあ、本題の池について話すね。
キノコン達が集めてくれた情報を纏めた事で分かった事なんだけど──、あの池は此処に≪ 里 ≫が出来る以前から存在していた池なんだ。
≪ 里 ≫が出来る前の池の水は綺麗で、沢山の魚や水草が生えていて生き生きしていたんだ。
あの池は綺麗な水の中で生きる妖かしの住み処なんだよ。
妖かしは “ 住み着いた ” んじゃなくて、“ 先住民 ” だったんだ 」
里長
「 なんと……?!
そうだったのですか…… 」
マオ:厳蒔磨絽
「 人間が池の周辺に長屋を建てて≪ 里 ≫になった後も池は綺麗だった。
だけど──、誰の仕業か池の水が濁って、汚れて、汚なくなって、汚臭や異臭までするぐらい臭くなって──、それからは誰も池には近付かなくなって、放置されたまま何年も放ったらかしだった。
住み処の池を汚されたまま放置されたら、先住民の妖かしだって、流石に怒るよな。
池の近くで子供が襲われたのは、里人達が汚してしまった池に目を向けてほしかったからだ。
子供から尻小玉を抜いたのは、池の異常に気付いてほしかったんだ。
“ 元の綺麗な池に戻してくれ! ” って、里人達へ訴え掛けていたんだよ。
妖かしの切なる想いも願いも里人達には通じなかったみたいだけどな!
オレがセロに指示して池の水を綺麗にしたから、妖かしは怒りを治めて子供達から抜き取った尻小玉を返してくれたんだ 」
里長
「 …………陰陽師様……それでは、池には未だ妖かしが住み着いているという事ですか??
退治をしてくださっていないのですか?? 」
マオ:厳蒔磨絽
「 里長さん、オレの話ちゃんと聞いてた?
あの池は妖かしの家なんだよ!
妖かしの方が、先住民なんだ。
先住民の意味は分かるよな?
後からやって来た里人達が我が物顔で、先住民に対して “ 出ていけ! ” なんて言ったり、池から追い出そうとしたら、先住民の妖かしだって、怒るよ!
池に近付いたり、池に悪さをしなければ、妖かしは何もしないよ。
里人達に悪さなんてしない!
尻小玉を返してくれる優しさを持ってるんだ!
退治する必要なんてないよ 」
里長
「 陰陽師様!
依頼には “ 池に住み着いた妖かしを退治してくれ ” と書いてある筈です!
池から妖かしを追い払ってください!!
そうでなきゃ……ワシ等は安心して明日を迎えられません! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 だから──、結果的には悪い妖かしじゃないから、退治する必要はないんだよ。
里人達が池に近付いたり、悪ささえしなければ── 」
里長
「 “ 悪さをしない ” だと?
子供を襲って、尻小玉を抜いたじゃないか!!
悪さをしとるじゃないか!! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 だから、それは──里人達が汚なく汚した池の水を元の綺麗な水に戻してほしい気持ちで── 」
里長
「 あの池は≪ 里 ≫の池です!
妖かしの住み処であってはならんのです!!
綺麗になった水は、里人のワシ等達が使うんです! 」
マオ:厳蒔磨絽
「 …………何言ってんの?
池を横取りするつもりなのか?
あの池は妖かしの住み処で、妖かしの池なんだぞ!
仲良く使わせてもらえば良いじゃないか!! 」
里長
「 陰陽師様……アンタはどっちの味方なんだ……。
陰陽師でありながら、人間の味方をしないで妖かしの味方をするのか…… 」
マオ:厳蒔磨絽
「 はぁ?
元はと言えば、池を汚したっきり放置してた里人達が悪いんだろが!
自分達の仕出かした過ちを棚に上げして、一方的に妖かしを悪者にするのかよ!
池から妖かしを追い出せ?
邪魔な存在だから妖かしを退治しろって?
ふざけんなっ!!
何様のつもりだよ!!
そんなに人間が偉いのかよ! 」
里長
「 …………どうやら陰陽師様とは分かり合えないようですな……残念です…。
尻小玉を取り返してくださった事には感謝しますが、妖かしの味方をされる陰陽師様とこれ以上話す事はありません…。
どうぞ、お引き取りください…。
池に住み着いている妖かしの退治は、他の退魔師様に依頼する事にしますので── 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そんな──?! 」
セロ:式神
「 マオ、此処迄です。
お暇しましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 セロ!
だけど── 」
セロ:式神
「 里長さん、1つだけ忠告させてください 」
里長
「 式神が何を言うんだね! 」
セロ:式神
「 とても大事な事です。
池から妖かしを追い出すのも退治するのも≪ 里 ≫の好きにすれば良いです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 セロ──、何を言うんだよ! 」
セロ:式神
「 但し、池から妖かしが居なくなれば、池の水は一夜で枯れます。
2度と池にはなりませんし、どんなに地中へ掘っても水は出ませんよ。
池を住み処にしている妖かしが、池を生かしているのです。
池の妖かしと仲良くする生活を選んだ方が賢明ですよ。
マオ、行きましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 セロ── 」
セロはオレの手を握ると里長の長屋から出た。




