⭕ 退魔師試験を受けよう 6
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 平安京
──*──*──*── 北地区
昨日は≪ 村落 ≫の宿屋に1泊して、宿屋から出された足りない朝食を食べた後、宿屋をチェックアウトをした。
退魔仲介所へ立ち寄って、名簿に名前を記入する時に平安京へ戻る事を忘れずに名簿へ書き込んだ。
退魔仲介所を出て、≪ 村落 ≫を出たら、セロが転移魔法を発動してくれた。
一瞬で≪ 平安京 ≫へ到着したら、《 北地区 》にある退魔仲介所へ向かった。
地区事に出入り口になる門があれば、楽なのにな~~。
唯一の正門から《 北地区 》へ移動するのは時間が掛かって大変だ。
《 北地区 》まで転移してくれたら良いのに!
歩いてたら、《 北地区 》に付くの昼過ぎちゃうよ…。
マオ:厳蒔磨絽
「 セロぉ~~、転移魔法でさぁ、《 北地区 》に転移してさ、魔法陣で壁を通り抜けちゃえば良いじゃんか。
何で態々正門から《 北地区 》へ歩かないといけないんだよぉ~~ 」
セロ:式神
「 ≪ 平安京 ≫ ~ ≪ 村落 ≫の往復に掛かる8日間を省略したのですから、《 北地区 》へ歩くぐらい何ですか。
本来ならば、未だ≪ 村落 ≫へ向かっている道中ですよ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 それは……そうかもだけど…… 」
セロ:式神
「 当分は≪ 平安京 ≫で暮らしますし、他の地区へも足を伸ばしてみましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうだな~~。
ところでさ──、廃寺院の敷地内を取り囲むように大きな魔法陣を発動させてたけど、何か意味はあったのか? 」
セロ:式神
「 特に無かったです。
強いて言えば──、アプローチでしょうか 」
マオ:厳蒔磨絽
「 アプローチぃ?
〈 久遠実成 〉にか? 」
セロ:式神
「 〈 久遠実成 〉へアプローチをする必要は無いです。
他の退魔師や村人達に “ 廃寺院で何かが起きている ” と気付かせる為に敢えて目立たせました 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうだったんだ…。
かなりド派手な演出だったな… 」
セロ:式神
「 慰霊碑の建つ廃寺院の更地を見て、村人達はさぞかし驚くでしょうね 」
マオ:厳蒔磨絽
「 だろうな……。
何せ身内を置き去りにするのに便利な廃寺院が跡形もなく無くなっちゃったんだもんな!
看病の必要な病人も世話が大変な不具者,障碍者も介護の必要な老人も人知れず夜な夜な捨てに行く場所が無くなったから困るだろうな…。
どうするんだろう… 」
セロ:式神
「 知った事ですか。
夜な夜な井戸の中にでも落とすかも知れませんね。
この≪ 島国 ≫の井戸は井戸底が洞窟と繋がっている事がキノコン達の調査で判明してます。
井戸の中へ落とされた死体は洞窟へ流されるでしょう。
洞窟には妖魔が住み着いてますから、妖魔が喰べるでしょうし 」
マオ:厳蒔磨絽
「 …………井戸か…。
確かに有り得そうかもな~~。
背負った状態で階段を上がって廃寺院へ捨てに行くのは体力が要るだろうし……、下手したら妖魔に襲われて餌食になる危険性だってあるもんな。
≪ 村落 ≫の中にある近場の井戸の中へ投げ落とした方が安全だよな。
やりそうだなぁ~~ 」
セロ:式神
「 病人,不具者,障碍者は──、その一家の悪因を代表して背負っている立場です。
本来ならば、良く配慮して生活に心を配り、感謝の心で親身に接しなければなりません。
病人,不具者,障碍者を粗略に考えたり、粗略に扱いがちになり易いでしょう。
厄介者扱いしたり、粗略にしては祖先の為にも逆供養となります。
幸せや家の栄えは巡って来ません。
取婿,取嫁,養祖父母,養父母,継子に対しても同じ事が言えます。
真の幸せと家の栄福の因は、四恩の心で孝養を尽くし、“ 御世話をさせていただく ” 事です 」
マオ:厳蒔磨絽
「 だったら、それを村人達に教えてやれば良いじゃんか 」
セロ:式神
「 はい?
何故です?
それは人形の役目ではないです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 これだよ…。
知ってるんだから、教えてあげたら良いじゃんかよ。
そうすれば、家族に捨てられたり、殺されたりする人だって減ると思うんだけどな! 」
セロ:式神
「 マオ、人間は正しい事を教えられても簡単には変われません。
故に人間は排除対象から卒業する事が出来ないのです。
信仰心もが低いが故に〈 久遠実成 〉だけでなく、宗教,信仰を私利私欲の為に悪用し、多くの衆生を巻き込み不幸を撒き散らすのです。
人間は学んだ事をまともに活かせない恩知らずで罰当たりな生物です 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ……否定が出来ないのは、しょうがないけど……。
一寸言い過ぎじゃないかな?
そりゃさ、色んな人間が居るんだから、学んだ事を活かせず悪用して悪事に加担して私利私欲を肥やす馬鹿だって沢山居るけどさ……。
世界が良くなるように活動してる人達だって多少は居るよ! 」
セロ:式神
「 人類の1割も居ませんけどね。
そんな事は人形には関係無いです。
“ 人間である ” 以上、排除の対象です。
赤子も子供も年寄りも人間である以上、例外はないです。
人間は皆等しく排除対象です♪ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうだったよな……。
ところで──、さっき言ってた “ 四恩の心 ” って何なの? 」
セロ:式神
「 おや?
忘れてしまいました?
“ 四恩の心 ” というのは、4つの恩に感謝する心です 」
マオ:厳蒔磨絽
「 だ~か~ら~~、その4つの恩って何だよ? 」
セロ:式神
「 〈 久遠実成 〉への恩,先祖への恩,社会への恩,物への恩です。
人間が生きる為に忘れてはいけない大切な恩です。
本来ならば、親が子供へ教えなければならない道徳教育の1つです 」
マオ:厳蒔磨絽
「 そうなんだ?
でもさ、親が知らなかったら子供に教えれないんじゃないか? 」
セロ:式神
「 そうですね。
親が道徳を知らなければ、子供に教える事は出来ません。
道徳を知らぬまま子供は育ち、大人になります。
何時しか道徳は廃れ、忘れ去られてしまうでしょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 どうしたら子供や親に道徳を教えられるんだ? 」
セロ:式神
「 本来ならば、寺,神社…等で、真の生き甲斐,四恩,四知の法,敬神崇祖,供養の大切さ…等の人間として生きる為に必要となる道徳を教えます。
寺,神社で教わった子供は親となった時、子供に確り教える事が出来ます。
子供と共に道徳を学び、日常生活に活かす事が出来れば、子供が親になった時に、自分の子供に教える事が出来ます。
親から子へ、先祖から子孫へと尊い命と道徳の数珠繋ぎが出来ます 」
マオ:厳蒔磨絽
「 命と道徳の数珠繋ぎか…。
なんか壮大な話になっちゃったな~~ 」
セロ:式神
「 信仰心を失い、道徳すらも忘れた人類に対しては、最優先で排除する事にしてます。
態々教える必要はないですし、知らぬまま放っときましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 酷いなセロ……。
だけど……それが人形なんだよな……。
それが──、セロの………… 」
オレはセロの役目を知らずに人間である事を捨てて、セロと魂の契約をしたけど……、セロの役目を否定する気はない。
だって……オレはセロに惚れてるし、愛しちゃってるんだからな!!
惚れた弱味だ!
マオ:厳蒔磨絽
「 あっ──、そう言えばさ、骨壺は?
家族に渡すんじゃなかったのか? 」
セロ:式神
「 大丈夫です。
〈 器人形 〉達に任せてます 」
マオ:厳蒔磨絽
「 〈 器人形 〉に? 」
セロ:式神
「 はい♪
“ 厳蒔磨絽 ” の式神として任せてます。
これで “ 厳蒔磨絽 ” の名が売れます 」
マオ:厳蒔磨絽
「 オレの知らない所で色んな画策してるんだな~~ 」
セロ:式神
「 ワタシは “ 厳蒔磨絽 ” 自慢の式神ですから♪ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 ははは……。
調子に乗ってやらかさないでくれよな! 」
セロ:式神
「 安心してください♪
ワタシはやらかしたりしません♪ 」
マオ:厳蒔磨絽
「 不安しかないんだけどぉ…… 」
セロ:式神
「 マオ、退魔仲介所へ行く前に昼食を済ませてしまいましょう 」
マオ:厳蒔磨絽
「 飲食店に立ち寄るんだな?
良いよ!
何を食べる? 」
セロ:式神
「 飲食店の数が少ないですから、マオでも選び易いですね。
入りたい飲食店を選んでください 」
マオ:厳蒔磨絽
「 はぁ~~?
オレに丸投げかよぉ~~ 」
う~~~ん……幾ら飲食店が少ないとは言ってもな。
どの飲食店にしようか迷っちゃうなぁ……。




