✒ 寺子屋が大変だぁ 3
寺子屋の敷地内を歩きながら、筆記試験に合格出来るように協力してくれる堡畄川さんを探し回る。
マオ
「 堡畄川さん、居ないな…。
寺子屋を間違えたのかな? 」
セロフィート
「 間違えてませんよ。
この寺子屋で合ってます。
寺子屋はこの状態ですし、忙しいのかも知れませんね 」
マオ
「 はぁ~~~~。
探し疲れちゃったよ…。
一寸休憩しようよ 」
セロフィート
「 そうですね。
炊き出しもしてますし、早目の昼食にしましょう 」
マオ
「 賛成ぇ~~~~♪
炊き出しはキノコンが作ってるんだろ?
美味いに決まってるよ! 」
マオは1人で炊き出しの列に並ぶ為に走って行った。
セロフィート
「 ふふふ…。
マオは食いしん坊さんですね♪ 」
天女:ミカト
「 …………現金な奴ねぇ。
それで──、弓弦がアタシを遠ざける理由って何よ?
早く教えなさい! 」
セロフィート
「 ミカトさんはせっかちさんですね 」
天女:ミカト
「 アンタがのんびり過ぎんのよ!
とっとと教えなさいよぉ~~ 」
セロフィート
「 天女のミカトさんが使える法術は光属性ですね 」
天女:ミカト
「 そうよ。
それが何なのよ? 」
セロフィート
「 弓弦さんは、火,水,風,土,雷,氷,光の7属性の法術を扱えます 」
天女:ミカト
「 えっ──、人間が7属性も使えるの?!
嘘でしょ?
人間が使える属性は無属性だけの筈よ!!
冗談、言わないで! 」
セロフィート
「 冗談で言いません。
弓弦さん本人は未だ気付いてませんけど、弓弦さんの体内には、人間と天女と妖人の血が混ざっています 」
天女:ミカト
「 ──は??
何を言って…… 」
セロフィート
「 ミカトさん、光属性を使える人間は、天女の血を受け継いでおり、尚且つ天血濃度の高い者しか使えませんね 」
天女:ミカト
「 た…確かに…その通りよ。
天血の濃度の薄い人間は、光属性の代わりに木属性か氷属性を扱えるのよ…。
──あっ!!
弓弦は木属性を使えないけど、氷属性を使える──。
氷属性と光属性を使える…… 」
セロフィート
「 弓弦さんの体内にも天血が流れている証明になりますね 」
天女:ミカト
「 そうね……。
──ん?
一寸待ちなさいよ!
それなら、弓弦とアタシの相性は抜群じゃないのよぉ!
弓弦がアタシを遠ざける理由にはならないわ! 」
セロフィート
「 弓弦さんの体内には妖人の血も混ざっている事を忘れないでください。
妖血と天血は相性が非常に悪いです。
相性の悪い血液が反発し合わないのは人間の血液──人血が繋ぎの役割を上手く果たせているからです。
闇属性を使えるのは妖人だけです。
今の弓弦さんは闇属性を使えないようですけど、転身すれば闇属性も使いこなす事が出来るようになるでしょう 」
天女:ミカト
「 転身ですって?!
転身って──、どういう事よぉ!! 」
セロフィート
「 弓弦さんの体内では、人血のお蔭もあり、天血と妖血のバランスが安定しています。
ミカトさんの体液が弓弦さんの体内へ入ってしまえば、安定しているバランスが崩れてしまうのです。
弓弦さんは無意識ですけど、本能が身体に拒否反応を起こすように能いています。
これが弓弦さんがミカトさんを拒否する理由です 」
天女:ミカト
「 アタシの体液が……弓弦の中に入る事を──、弓弦の本能が阻止する為に邪魔してる……??
アタシは弓弦と子作り出来ないの?? 」
セロフィート
「 弓弦さんが弓弦さんではなくなってしまいます。
現在の弓弦さんは、人血が正常にバランスを保てており、問題なく維持が出来ている状態を表している人格です。
真人間の状態です。
天液が入り込み、妖血が減れば、天血が起爆剤となり、弓弦さんは妖魔へ転身してしまいます。
逆も然りです。
妖液が入り込み、天血が減れば、妖血が起爆剤となり、弓弦さんは天人へ覚醒するでしょう 」
天女:ミカト
「 妖液って事は、アタシの弓弦が妖人と──、性的な事をするって事…? 」
セロフィート
「 体液が入るような事をすればアウトです。
転身も覚醒もしないで現在の弓弦さんを維持させる方法は──、弓弦さんが人間と交わり、人間の体液を体内へ定期的に取り入れる事です。
人間の女性を妻に娶り、夫婦となり────。
これが、弓弦さんにとってのベストな人生です 」
天女:ミカト
「 …………嘘でしょ……??
嘘だぁ…………アタシと弓弦が……愛し合ったら…………弓弦は……妖魔に転身する??
アタシが……弓弦を……妖魔にしちゃうの……??
…………そんな事って…………ある??
なんて──、酷い理由なのよぉ………… 」
セロフィート
「 弓弦さんは、呪覘導孳の孫──という位置付けになるでしょうね 」
天女:ミカト
「 はぁぁぁぁあん?!
弓弦が──、何で呪覘導孳の孫になるのよぉーー!!
ふざけないでよぉ!! 」
セロフィート
「 ふざけてません。
呪覘導孳は──、美丈鬼人の容姿で多くの天女を連れ去り、天女達へ種付けをし、自分の子供を産ませている──と考えるべきでしょう。
子孫繁栄の為か、自分が強くなる為の餌として喰らう為なのか──、ワタシには分かりませんけど。
呪覘導孳と天女の子供が何れぐらい存在しているかは分かりませんけど、少なくはないでしょうね。
その子供──妖人達も成長し、女人へ種付けをし、自分の子供を産ませている可能性は決して低くはない筈です。
弓弦さんには──、呪覘導孳と天女の血を受け継いだ妖人の血と──、妖人の妻となった人間の女性の血を受け継いでいる事になります 」
天女:ミカト
「 ──っ、勝手に推測しないで!!
呪覘導孳じゃない妖魔かも知れないじゃないのよ!! 」
セロフィート
「 いいえ。
間違いなく、弓弦さんは呪覘導孳の孫になります。
大勢の中の1人でしょうけど。
弓弦さんの血液から呪覘導孳と一致するDNAが見付かりました。
覆せない事実です 」
天女:ミカト
「 でぃえぬえー??
何よ……それはぁーーー!! 」
セロフィート
「 ミカトさんが倒したいと思っている呪覘導孳の孫である弓弦さんと本当に子作りをしたいです?
弓弦さんの妻となる事は、呪覘導孳と身内になる事を意味します。
それでもミカトさんは弓弦さんの妻になります? 」
天女:ミカト
「 あ゛……あぁ゛……あぅ…………い゛ゃだ…………。
呪覘導孳と…………身内……になる??
…………天女から天の羽衣を奪い取って…………妖魔を産ませ続けた……呪覘導孳と…………嫌だ……そんなの……無理だよぉ…… 」
セロフィート
「 良かったですね、ミカトさん。
弓弦さんを諦められる立派な理由が判明して。
これで悔いなく、弓弦さんから手を引けますね♪ 」
天女:ミカト
「 ……………………………… 」
セロフィートの話を聞いたミカトは、茫然としたまま地面に両膝を付いて項垂れていた。
セロフィート
「 ──マオが戻って来ましたね。
ミカトさん、今話した内容はミカトさんとワタシだけの秘密にしましょう。
他言無用です。
誰かに話したら──、ミカトさんの命の次に大切な羽衣は “ 2度と戻らない ” と覚悟してください 」
セロフィートは楽しそうに微笑みながら、炊き出しで貰った料理を持って戻って来るマオを笑顔で迎えるのだった。




