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✒ 騒ぎの原因 1


──*──*──*── 宿泊室


絲腥玄武

「 おんせん…にも入らず、まっさーじ…とらやもだなのに寝付きが早いな 」


厳蒔弓弦

「 それだけ疲れていたのかも知れないな 」


セロフィート

睡眠スリープ魔法マジックです。

  途中で起きる事なく朝迄ぐっすり眠れます 」


絲腥玄武

「 ほう、まほう…とな?

  さっきも言っていたな。

  セロは面白いじゅつを使うのだな。

  じつに興味深いのうりょくだ 」


厳蒔弓弦

げん、さっき “ いやな空気 ” と言っていたが──、妖魔の事か? 」


絲腥玄武

づるも気付いていたか 」


厳蒔弓弦

「 これでも退魔師だからな。

  妖魔の気配なら多少は分かる 」


セロフィート

づるさん、きょうみやないに妖魔が出る事は、あります? 」


厳蒔弓弦

「 まぁ…、あるにはあるが、検非違使と陰陽師がきょうみやを毎晩巡回しているから、大きな騒ぎにはならないな 」


絲腥玄武

たしかにな。

  検非違使と陰陽師が対処した案件に関しては、なにが起きたのか巡回日誌に書き残されている筈だ。

  現在も続いているかは分からんが… 」


セロフィート

「 筆記試験に影響しては困りますし、なにが起きているのか偵察に向かわせましょう 」


厳蒔弓弦

なにに偵察へ行かせる気だ? 」


セロフィート

「 キノコンです。

  〈 うつわ()にん(ニン)ぎょう() 〉では実体のない妖魔を倒せません。

  キノコンは妖魔を倒せる技を身に付けましたから、妖魔退治はキノコンに任せます。

  〈 うつわ()にん(ニン)ぎょう() 〉には避難民の対応を任せます。

  避難する程の事が起きていれば──ですけど 」


厳蒔弓弦

「 キノコンか…。

  きょうみやないを走らせて大丈夫なのか? 」


セロフィート

「 大丈夫です。

  “ げんじのまおの式神 ” でとおせば疑われないでしょう。

  妖魔を倒し、たみを助ける式神を敵視をする程、たみも馬鹿ではないでしょう? 」


厳蒔弓弦

「 …………そうであってほしいものだな… 」


絲腥玄武

「 きのこん…とやらがなにかは知らんが、今から面白そうな事をするのだな 」


セロフィート

「 そうです。

  ワタシ達は特等席で高見の見物を決め込むとしましょう 」


絲腥玄武

「 賛成だな 」


厳蒔弓弦

「 私もなにが起きているか気になっているんだ。

  見物が出来るなら参加したい 」


セロフィート

「 決まりですね。

  ──では、キノコンを呼び出します 」


 そういうと、セロフィートは魔法マジカルサークルを出現させると1体のキノコンを召喚させた。


キノコン

「 ──セロ様ぁ!

  御用をなんなりとお申し付けくださいませエリ! 」


 魔法マジカルサークルから召喚されたキノコンは、セロフィートに向かって規則正しい敬礼をビシッと決める。


セロフィート

に伝達用としてミニキノコンを1体残し、きょうみやないで起きている騒ぎを偵察してなさい 」


キノコン

かしこまりましたエリ!

  原因が分かり次第、御連絡させて頂きますエリ! 」


セロフィート

「 指示は追って出します。

  ほかのキノコン達をきょうみやないへ転移させます。

  でも行動が起こせるよう配置させなさい 」


キノコン

かしこまりましたエリ! 」


セロフィート

「 キノコンは “ げんじのおろの式神 ” として行動しなさい 」


キノコン

かしこまりましたエリ! 」


 キノコンは伝達用に1体のミニキノコンを宿泊室に残すと宿屋の窓から外へ出て行った。






絲腥玄武

「 ほう……これが、きのこん…とやらか。

  可愛らしいキノコだな。

  喋るとは驚いた 」


厳蒔弓弦

「 私の産まれ故郷にもキノコンが沢山るんだ。

  妖魔に襲われ荒れ放題だった故郷を住める土地に開拓してくれているんだ 」


絲腥玄武

「 ほう……、きのこん…とやらは凄いのだな 」


ミニキノコン

づる様、お久し振りですエリ。

  セロ様、此方こちらの初めましての御方は、どちら様ですかエリ? 」


セロフィート

せいげんさんです。

  づるさんの式神ですよ 」


ミニキノコン

せいげん様、初めましてエリ。

  キノコンですエリ。

  これからも宜しくお願いしますエリ 」


絲腥玄武

「 礼儀正しいのだな。

  此方こちらこそ宜しくな 」






 暫くすると、ミニキノコンは本体と分身体から情報をる。

 伝達された情報を纏めたミニキノコンはセロフィート,げんじのづるせいげんに報告をする。


ミニキノコン

「 ──というのが現在の状況ですエリ 」


セロフィート

なか(なか)大変な事態になってますね 」


厳蒔弓弦

「 ──井戸から妖魔が出てるとはな。

  こんな事は初めてなのではないか? 」


絲腥玄武

「 いや、そうでもない。

  井戸から妖魔が出てた事は過去にもある。

  井戸から妖魔が出てるなら、井戸に蓋をすればい。

  井戸に結界を張れば、妖魔は出てれなくなる 」


厳蒔弓弦

「 井戸に蓋か。

  肝心の蓋は有るのか? 」


絲腥玄武

「 さてな。

  われにも分からん。

  たが、古い蓋では長持ちはしまい。

  神聖なしんぼくを使い蓋を作る必要がある。

  出来上がる迄が問題だな 」


厳蒔弓弦

しんぼくで井戸の蓋か。

  たしかに神聖なしんぼくで作った蓋ならば、妖魔もいやがるだろう。

  しかし、しんぼくは現在、陰陽院にしか生えていない筈だ。

  しんぼくを切り倒し、井戸の蓋を作らせるだろうか… 」


絲腥玄武

「 期待は出来ないな。

  きょうみやないには井戸が多くある。

  すべての井戸に蓋を作るにしてもしんぼくの本数がりないだろうな 」


厳蒔弓弦

たしかに…。

  井戸の蓋を作るには職人の人数もりないだろうしな 」


セロフィート

「 神聖なしんぼくを使い作った井戸用の蓋なら、1つあれば十分です。

  井戸の数だけワタシが〈 (原質)(みなもと) 〉で構成します。

  神聖なしんぼくもワタシが〈 (原質)(みなもと) 〉で構成します。

  井戸の蓋はキノコンに作らせましょう 」


厳蒔弓弦

たしかにな。

  キノコンが作れば早いな!

  しんぼくもセロが出してくれるなら、陰陽院のしんぼくを切り倒す手間がはぶける 」


絲腥玄武

「 てふ…だの構成…だのく分からない単語が多いが──、時間の短縮にはなるな 」


セロフィート

「 蓋をした井戸に結界を張るのは、陰陽院の陰陽師達にさせましょう。

  結界ぐらいは張れるでしょうし 」


絲腥玄武

「 それがい。

  コキ使ってやらなければな 」


厳蒔弓弦

たみを井戸から離れさせ、妖魔から避難させる必要があるな。

  に避難させればいんだ?

  安全な場所はあるのか? 」


絲腥玄武

「 避難場所に適してる場所なら、陰陽院と寺子屋だな。

  寺子屋には訓練場がある。

  たみは訓練場に集めればいだろう。

  陰陽院にも試験場がある。

  妖魔に襲われないよう、陰陽院と寺子屋には結界を張る必要があるが、陰陽師にさせせればい 」


セロフィート

「 陰陽院と寺子屋への避難誘導はキノコン達にさせましょう。

  妖魔が出ている井戸へもキノコン達を向かわせます。

  井戸から出てる妖魔退治はキノコンに任せましょう 」


厳蒔弓弦

「 避難所は決まったが、避難したたみはどうするんだ?

  放置する訳にはいかないだろう 」


セロフィート

「 避難民達の支援とケアは〈 うつわ()にん(ニン)ぎょう() 〉に一任します。

  子守りはキノコンにさせます。

  必要な物資と食材は〈 (原質)(みなもと) 〉で構成した物を転送します 」


厳蒔弓弦

「 セロは手慣れているな 」


セロフィート

魔法マジックを使えるからです。

  魔法マジックを使えなければ、ワタシにはなにも出来ません 」


絲腥玄武

「 マオは今夜、起きている事を知らずに朝を迎えるのか。

  は寺子屋へ行くのだろう?

  驚くのではないか。

  筆記試験の勉強どころではなくなりそうだな 」


厳蒔弓弦

「 それは有り得るな… 」


セロフィート

「 ──きょうみやないにある寺子屋の訓練場へ、〈 うつわ()にん(ニン)ぎょう() 〉とキノコンを転移させました。

  物資と食材も転送しました。

  きょうみやないに配置しているキノコン達がたみの避難誘導を始めてます。

  井戸周辺と妖魔はキノコンに任せればいでしょう 」


厳蒔弓弦

しかし、これは凄いな。

  離れた場所の様子が見れるとは 」


絲腥玄武

「 これも、まほう…とやらの力なのだな。

  音が聞こえないのは残念だが、凄まじい光景だな。

  ──きのこん…とやらは口からなにを出している? 」


ミニキノコン

「 あれはキノコン砲ですエリ!

  キノコン砲を使えば、実体のない妖魔を倒せますエリ! 」


厳蒔弓弦

「 迫力があるな。

  あんなに簡単に妖魔を倒せてしまうとは── 」


 げんじのづるせいげんは、セロフィートが壁に映し出した無音の映像を観賞している。

 映像は今まさに、≪ 平安京 ≫に降り掛かっている災厄の光景──、突如井戸の中から妖魔が溢れ出て、きょうみやないにて容赦なくひと(びと)を襲っている光景だった。


 井戸の中から妖魔が溢れ出てた原因は、現場にないセロフィート達には分からない。

 今も妖魔は井戸の中から溢れ出たり、這い出てたりしている。

 陰陽師達がいんを切りながら式神に指示を出し、妖魔を倒させているのが妖魔の数が多過ぎて式神の攻撃が追い付いていないように見える。


 上空を飛んでいる妖魔に向かって、光の光線が走る。

 光の光線を出しているのはキノコン達だ。

 予想以上に妖魔が強いのだろう。

 怪我をして負傷している陰陽師達を手のいているキノコン達が手当てをしている。

 手当て──とは言っても、キノコンじるを掛けているだけなのだが、怪我が治った陰陽師はキノコンに感謝すると、妖魔を倒す為に再び戦場に立ち、式神を召喚しては懸命にいんを切っている。


絲腥玄武

「 きのこん…とやらが大活躍しているな 」


厳蒔弓弦

「 そうだな…。

  …………昔から井戸は…“ とこや冥界と繋がっている ” と言われているが、ほんとうなのか?

  げんが生きていた頃も言われていたのか? 」


絲腥玄武

「 いや、そんな言い伝えは聞いた事がない。

  われが暗殺されたあとに、誰かが言い出したのかも知れないな。

  井戸から妖魔が出てるのだから、“ とこ世や冥界と繋がっている ” と思われてもないだろう。

  井戸の下は空洞で繋がっていると聞いた事がある。

  井戸の中へ入り、妖魔がからるのかさぐる事は出来るだろうな 」


セロフィート

「 それはいですね。

  それ(ぞれ)の井戸の中へ分身体を1体、入れさせましょう。

  妖魔を倒しながら妖魔の発生地を見付けさせます 」


厳蒔弓弦

「 キノコンは水の中も大丈夫なのか? 」


ミニキノコン

「 御心配には及びませんエリ。

  キノコンは水中でも活動が出来ますエリ。

  妖魔がからているのか突き止めてみせますエリ! 」


厳蒔弓弦

「 頼もしいな 」


──*──*──*── 1時間後


厳蒔弓弦

「 ──続きは気になるが、もそろそろ私も寝るとしよう 」


絲腥玄武

「 そうか。

  ならば、映像は消した方がいな 」


セロフィート

「 ワタシ達は現場へ行きましょう。

  姿を見えなくすれば誰にも知られず、傍観が出来ます 」


絲腥玄武

「 それはいな 」


ミニキノコン

「 マオ様とづる様は、ボクが全身全霊でお守りしますエリ 」


セロフィート

「 頼みましたよ 」


厳蒔弓弦

なにが起こるか分からない。

  気を付けてな 」


絲腥玄武

「 行ってる 」


 セロフィートとせいげんは宿泊室の窓から外へ出て行った。

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