✒ 囲碁りまっしょい 4
セロフィート
「 ──碁盤から絲腥玄武さんの魂を抜き取り、弓弦さんが身に付けている結界鏡だった指輪に絲腥玄武さんの魂を定着させました。
弓弦さんの魔喰いの弓へ自在に憑依を出来るようにしました。
実体が無ければ碁を打てませんから、普段は魔喰いの弓を依り代として実体化を出来るようになります。
弓弦さんは魔喰いの弓を持ち歩く必要が無くなります。
妖魔との戦闘になった時には、絲腥玄武さんの魂は定着している指輪の中へ戻ります。
実体は無くなりますけど、弓弦さんの式神として戦闘のサポートを出来るようにもしました。
陰陽師だったなら、法力も法術も使える筈です。
肉体を失い、魂の存在となった絲腥玄武さんならば、法力を最大限に活用する事が出来る筈です 」
マオ
「 大サービスじゃないかよ、セロ!
何でだ? 」
セロフィート
「 戦力は多い方が良いでしょう?
退魔仲介所でも “ 妖魔も強くなっている ” と言ってました。
備えは必要です 」
厳蒔弓弦
「 確かに──、私の弓が無くなっているな 」
絲腥玄武
「 我が実体化している?! 」
セロフィート
「 先程まで絲腥玄武さんが憑依させられていた碁盤は其処にあります。
帝一族に陰陽師達は物体に魂を憑依させる事は出来ても、定着させたり、依り代にして実体化させる法術は使えなかったようです 」
絲腥玄武
「 再び肉体を得られるとはな…。
貴殿は凄腕の陰陽師のようだ 」
セロフィート
「 ワタシは陰陽師ではないです。
渡り人の吟遊大詩人です。
今は訳あってマオの式神のフリをしてます 」
絲腥玄武
「 そうなのか…。
吟遊大詩人とやらは、陰陽師よりも凄いのだな 」
マオ
「 自己紹介しないとだよね。
オレはマオ・ユーグナル。
セロと同じ渡り人だよ。
今は訳あって陰陽師の格好をしている。
陰陽師試験を受けてる最中なんだ 」
絲腥玄武
「 そうか、宜しく頼む。
我の事は気軽に “ 玄武 ” と呼んでくれ 」
マオ
「 オレの事も気軽に “ マオ ” って呼んでよ! 」
セロフィート
「 ワタシの事も “ セロ ” で構いません。
今から宜しくお願いします 」
マオ
「 玄武さん、宜しくね! 」
意外な形で新たな戦力──仲間が増える事になった。
帝になり損ねた本家本元の帝の長子──幻の皇子様だった絲腥玄武さん。
生き延びる為に身分を隠して陰陽師として生きていたけれど、父親の後妻が送った刺客に襲われて、暗殺された不運な形で人生を終えた──。
男が1人増える事になったけど、賑やかになりそうだな!
………………オレの今の格好はセロの所為で女の子に見えてる筈だから、“ 男を3人も侍らせてる女陰陽師 ” って風に見られてる可能性があるよな。
まぁ──、セロの美貌と吟遊詩人の衣装で式神だと思われてるかも知れないし、玄武さんも長い銀髪に紫瞳をしているから、人に依っては人間とは見られないかも知れない。
弓弦さんは退魔師として知られてると思うから、平民からも良く声を掛けられたりする。
玄武さんに、オレの状況を話しとかないとだよな!
マオ
「 えと、オレは今、陰陽師試験に受かる為に “ 厳蒔磨絽 ” として弓弦さんの弟として活動している最中だよ。
今日は陰陽院で実技試験に合格する事が出来たんだ。
1週間後には陰陽院で筆記試験を受ける予定になってるよ 」
絲腥玄武
「 ほう、陰陽院で…。
それは懐かしいな。
陰陽院の事で知りたい事があるなら我に聞くと良い。
伊達に陰陽院で暮らして訳ではないからな 」
マオ
「 有り難う、玄武さん!
心強いよ(////)」
絲腥玄武
「 陰陽師試験では筆記試験も始めたのか。
我の時は実技試験だけだったが──、時代が変われば試験のやり方も変わるのだな 」
マオ
「 玄武さんも陰陽師試験を受けたんだね 」
絲腥玄武
「 あぁ、陰陽師試験に合格しないと陰陽師を名乗れないからな。
まぁ、我の場合は結果が悪くとも合格するようになっていたようだが…… 」
マオ
「 出来レースだった──って事? 」
絲腥玄武
「 できれーす??
良く分からんが、試験と言うのは名前と形だけでな、当たり前に不正が罷り通っていたものだ。
陰陽師となれれば帝の政に関われる事が出来、贅沢な暮らしが約束されていたからな。
陰陽院の上層部の関係は派閥争いが激しくドロドロしていたものだ 」
マオ
「 そ、そうなんだ…… 」
絲腥玄武
「 今でも上層部の連中は甘い汁を啜って贅沢三昧な生活を送っているのではないか? 」
厳蒔弓弦
「 …………否定は出来ないな 」
絲腥玄武
「 陰陽院にスカウトをされても断固拒否する事だな。
陸でもない目に遭い苦労する事だけは保証出来る 」
マオ
「 そんな…自信満々に言っちゃうんだ… 」
絲腥玄武
「 我が生きていた頃だからな──、現代には多少は改善されている部分はあるかも知れんが──、期待はしない方が良いぞ。
何せ私利私欲の為に不正や悪事に手を染める事も厭わぬ陰陽院だからな。
陰陽院生になる事を進めたくはない 」
マオ
「 心配してくれて有り難う、玄武さん。
陰陽師になれたら、オレは退魔師試験を受けるつもりなんだ。
退魔師になって、魔具職人にオレ専用の魔具を作って貰うんだ!
実体のない妖魔を斬れて倒せる魔具を手に入れるのが、今のオレの目標なんだ! 」
絲腥玄武
「 ほう。
目標があるのは良い事だな。
目標があるから人は高見を目指し、己を成長させる事が出来る。
我もマオが目標を達成出来るよう、尽力しようではないか。
筆記試験を受けるなら、我が知っている事を教えよう 」
マオ
「 有り難う、玄武さん! 」
厳蒔弓弦
「 現役の陰陽師だった玄武は頼りになる。
良かったな、マオ 」
マオ
「 うん!
筆記試験は不安だけど、助けてくれる玄武さんが居てくれるから気持ちを切り替えて頑張るよ!! 」
セロフィート
「 明日から忙しくなりますね。
そろそろお暇して宿へ戻りましょう 」
マオ
「 そうだな~ 」
オレ達は新しい仲間を得て、玄武の間を出た。
遊廓亭を出ると、責任者が出て来て頭を下げられて謝られた。
「 謝るぐらいならするな! 」って文句を言いたい所だけど、玄武の間に変えられたお蔭で弓弦さんと囲碁をする流れになって、玄武さんと出会えたのだから、結局の所は結果オーライなんだよな。
御座敷を変えられた事に関して、責める気は何時の間にか失せていた。
まぁ、それでも御馳走の件は別問題だ!
食べ物の恨みを軽く見られたくはない。
何せ出された御馳走が、茶碗1杯の白米と焼きメザシ1匹だったんだからな!!
この不当で屈辱的な扱いには物申したいし、文句を言いたい。
「 心の狭い奴だ! 」とか「 食い意地の張ったガキだ! 」って言われたって構わない!!
オレは断固として文句を言ってやるんだ!!
──という訳で、オレは楽しみにしていた御馳走に白米と焼きメザシを出された事に対して、責任者に不満をぶつけてやった。
オレの御馳走の為に提供した食材を使わないで、白米と焼きメザシを出して来やがった事に対して、ネチネチと文句を言ってやったんだ!!
セロがオレの為にと遊廓亭に提供した食材が、どうなったのかは知らないけれど──、厨房を貸してくれた事に対しては、御礼を言っといた。
言う事だけ言ったら遊廓亭を後にして、宿泊している宿屋を目指して歩き出したんだ。
色々とあって疲れた1日だった気がする。
宿屋に着いたら、明日に備えて早く寝ちゃおうと思う。




