✒ 遊廓亭で合格祝い 2
マオ
「 ………………………… 」
厳蒔弓弦
「 ………………………… 」
マオ
「 …………………………なぁ、セロさん… 」
セロフィート
「 どうしました? 」
マオ
「 ……………………これが……御馳走??
これが…………とっておきの美味しい御馳走?? 」
セロフィート
「 そのようですね 」
厳蒔弓弦
「 …………………………御馳走か…。
これは…………随分と質素な御馳走……だな? 」
マオ
「 ~~~~~~~~違うっ!!
こんなのが御馳走なわけないっ!!
こんな……こんな……こんなっっっ………………、白米と焼きメザシ1匹なんて──!!
こんなの出されて、喜べるかぁぁぁぁああああああああーーーーーーーーっっっ!!!! 」
厳蒔弓弦
「 …………白米と焼きメザシも “ ある意味 ” では御馳走だがな… 」
マオ
「 セロぉ!!
こりゃ、どういう事だよ!
ちゃんと食材は渡してるんだよな?
米とメザシを渡した訳じゃないよな?? 」
セロフィート
「 ワタシがそんな事をすると思います?
そうですね? 」
器人形
「 はい!
セロフィート様に言われました通り、確かに食材をお渡し致しました。
此方は遊廓亭が食材を受け取った事を認めた証明書になります。
偽物ではなく、正真正銘の本物です 」
セロフィート
「 座敷を横取りしただけではなく、御馳走の食材までも横取りされるとは予想外ですね 」
マオ
「 …………御祝いの御馳走だって言われるから、ウキウキして待ってたのにぃ!!
出されたのは白米と焼きメザシ1匹……。
御祝いの席で食べる料理じゃないのは明らかだよ!!
これはぁっ、遊廓亭からの嫌がらせなのか?
なぁ、セロ、どうなんだよ!! 」
セロフィート
「 ワタシに聞かないでください。
確かな事は、遊廓亭が自ら信頼を放棄した事です。
1度ならず2度迄も、です。
御灸を据えるだけでは足りません 」
マオ
「 責任者を呼んで事情を聞こう! 」
セロフィート
「 正直に話すと思えませんけど? 」
マオ
「 だって、事情が分からないんじゃ徹底的に責めれないじゃんかよ! 」
厳蒔弓弦
「 責めるつもりなのか?
陰陽師試験は未だ終わっていない。
筆記試験が無事に終わる迄は騒ぎを起こさない方が得策だと思うが… 」
マオ
「 それは……そうかも知れないけど……。
だけど……弓弦さんっ!! 」
厳蒔弓弦
「 マオ、良く考えるんだ。
今回の陰陽師試験に合格が出来なければ、1年待たなければいけないんだぞ。
1年間、退魔師試験も受けられないし、目的の魔具も手に入れられなくなる。
此処で要らぬ騒ぎを起こし、陰陽院の審査官達の耳に入れば、1年間のお預けを食らうことになるんだぞ。
それでも構わないのだな? 」
マオ
「 ……………………1年……お預け……。
それは……嫌だよ……。
だけど……こんな酷い侮辱を受けるような扱いをされないといけない理由も知りたいんだ…… 」
セロフィート
「 マオは何もしなくて良いです。
全てワタシに任せてください。
ワタシに一任してくれますね? 」
マオ
「 セロぉ~~~~。
…………一寸待て、一体何する気だよ? 」
セロフィート
「 秘密です♪
御馳走は用意させます。
小1時間程時間をください。
それ迄は──、そうですね。
其処にある碁盤で弓弦さんと遊んでいてください 」
マオ
「 碁盤?
…………4つの足の付いてる? 」
セロフィート
「 それしか無い筈です 」
マオ
「 随分と古汚ない碁盤だけど……。
抑、使って良いのかよ?
良く良く見たら黒いシミが付いてるっぽいし…… 」
セロフィート
「 多少小汚なくてもシミが付いていても使えます。
碁石もありますし 」
マオ
「 えぇ~~~~。
黒と白しかないじゃん。
オレ、オセロしか出来ないよ…… 」
厳蒔弓弦
「 囲碁なら師匠に付き合わされて打たされた事が何度もある。
良い機会だ、囲碁を教えよう。
寺子屋では囲碁は習わないだろうが、陰陽院では囲碁を習うそうだからな。
打てて損はない。
陰陽師の嗜みだと思って気楽に覚えれば良い 」
マオ
「 マジかよ……。
…………頭は使わない? 」
厳蒔弓弦
「 いや、使うな。
“ ボケ防止になる ” と師匠の口癖だったぐらいだ 」
セロフィート
「 マオ、オセロも頭を使います。
頭を使わない遊びは無いですよ 」
マオ
「 分かってるしぃ!!
言ってみただけだよ! 」
セロフィート
「 弓弦さん、マオをお願いします。
お前は御座敷の外で見張りをなさい。
ワタシが戻る迄、何人足りとも座敷には入れぬように。
殺さず、気絶させるだけで良いです 」
器人形
「 畏まりました。
お任せくださいませ 」
マオ
「 セロは何処へ行くんだ? 」
セロフィート
「 厨房です。
御馳走を作るには厨房が必要でしょう? 」
マオ
「 それはそうだけど…… 」
セロフィート
「 囲碁でも打ちながら待っていてください 」
そう言うとセロは玄武の間を出て行った。
器人形
「 マオ様、アチは御座敷の外で見張りを致します 」
オレに一礼をした〈 器人形 〉も玄武の間を出て行った。
座敷内に残ったオレは、弓弦さんから囲碁を教わる事になった。
何が悲しくて、シミが付いてる小汚ない碁盤で囲碁を打たなきゃならないんだか。
陰陽師の嗜みぃ??
陰陽師って色々と面倒なんだな……。
退魔師試験に合格して退魔師になれたら、陰陽師の格好なんか直ぐに止めてやるんだからなっ!!




