✒ ようこそ、平安京 1
──*──*──*── 10日後
──*──*──*── 平安京
天狗山樹海を抜けて約10日間、歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて、漸く目的地の≪ 平安京 ≫へ到着した。
弓弦さん曰く、≪ 平安京 ≫は四角形をしている大きな都で、大きくて広いらしいらしい。
自分で描いて作らないといけない地図しか存在しないから、正確な≪ 平安京 ≫の地図は期待が出来ない。
そんな訳で──、後でこっそりとセロが≪ 平安京 ≫の地図を作ってくれる事になった。
取り敢えず到着した初日は、弓弦さんが宿泊する時に利用している宿屋へ向かう事になった。
食事は各自が外で済まさないといけないから、安い宿代で宿泊する事が出来るらしい。
一部屋を3人で使えば良いから、チェックインは弓弦さんに任せる事にした。
弓弦さんがチェックインしてくれた宿屋を後にして、初めての≪ 平安京 ≫の中を弓弦さんに案内してもらいながら歩き回る。
賑わっている場所ばかりじゃなくて、閑散としている場所もある。
人が寄り付かないような場所もあれば、平安貴族が住む屋敷が並んでいる場所もある。
≪ 平安京 ≫の中心には帝って呼ばれている偉い人が住まう屋敷があって、その屋敷を囲う形で護るように建てられている屋敷の全てが、実力があって有名な陰陽師達の屋敷らしい。
その前に建っている屋敷は陰陽師とは無関係の平安貴族達の屋敷が広がっている。
その前にも陰陽師達の屋敷が広がっていて、≪ 平安京 ≫で陰陽師が如何に高い位に位置している立場なのかが伺える。
帝から絶大な信頼を得ている陰陽師家は、安倍一族,賀茂一族,天路一族と呼ばれる御三家らしい。
その下にも多くの陰陽師家があるそうだ。
ド底辺ランクの陰陽師も、陰陽師だから当然のようにエリート扱いされているそうだ。
弓弦さん程の実力のある退魔師ですら、クズゴミ陰陽師からすれば、目クソで鼻クソな存在なんだかとか。
何故かと言うと、陰陽師は帝に認可されている職業であると同時に、帝から “ 絶大な信頼を得られている ” という揺るぎない事実があるからみたいだ。
退魔師も帝から認可されている正式な職業ではあるものの、帝から “ 信頼を得られていない ” という事が、陰陽師達から見下される原因になっているらしい。
それだけ帝の与える影響力って凄いみたいだ。
謂わば “ 陰陽師 ” という職業は、帝公認の国家公務員的な役職に該当していて、国家を支える手助けをしているから、国家権力や国家財産の恩恵を浴びるように受けられる超絶エリート集団って事だ。
陰陽師になれた事が既に凄い事になるから、陰陽師の資格を剥奪される迄はエリート扱いされるし、エリートらしい贅沢三昧な暮らしが許されているし、出来ちゃう訳だよ。
酷い話だ。
セロが “ 面白い事 ” を企んでしまいそうな要素が盛り沢山過ぎて心配でならない。
因みに退魔師は平民達が暮らしている《 平民地区 》って場所に身を寄せていて、長屋を借りて暮らしていたり、宿屋の一室を借りて滞在していたり、《 野営広場 》で寝泊まりしたりと色々らしい。
土地や屋敷を持っている退魔師は居ないみたいだ。
きらびやかで贅沢三昧な環境での暮らしよりも、基本的に質素で堅実的な暮らしを好む傾向が多いらしい。
「 贅沢は敵! 」みたいな感じで貧しい暮らしをしているように見えても、実は貯えがガッポリあって、懐がパンパンな退魔師は少なくないみたいだ。
「 貧乏なフリしてみすぼらしく生きてますけど、実は大金持ちなんです! 」ってパターンかな。
弓弦さんも相当貯め込んでるらしい。
マオ
「 セロ、住む場所は何処にするつもりなんだ?
《 平民地区 》の長屋か? 」
セロフィート
「 広い屋敷です。
廃屋が多い地区が在るのでしょう? 」
厳蒔弓弦
「 在るには在るが、『 “ 妖かし ” が出る 』と言われている呪われた地区だが?
鬼門や霊道が交わる不吉な場所として有名で、知らぬ者が居ない。
祟られる事を恐れ、強力な式神を使役する陰陽師ですら立ち寄らない地区だぞ 」
セロフィート
「 正にうってつけの場所です。
其処にしましょう 」
厳蒔弓弦
「 正気か?! 」
マオ
「 セロは正気だし、本気だよ。
呪いとか祟りとか、セロは気にしないんだ。
オレも気にしないし 」
セロフィート
「 鬼門も霊道もワタシには関係無いです。
弓弦さん、どうすれば噂の地区を買い取れますか? 」
厳蒔弓弦
「 …………帝に申請するだけだ。
帝が許可すれば地区一帯を買い取れるし、自由に出来るが…… 」
セロフィート
「 取り敢えず、申請はしましょう。
マオは今から陰陽師です 」
マオ
「 は──??
急に何を言い出すんだよ?
オレは退魔師になる為に≪ 平安京 ≫に来たんだぞ!
何で陰陽師なんだよ? 」
セロフィート
「 弓弦さんが教えてくれた事を忘れました?
退魔師試験は1人ずつ申し込みをして、別々に違う依頼を受ける必要があります 」
マオ
「 確かに… 」
セロフィート
「 退魔師試験の最中は弓弦さんと行動は出来ません。
妖魔を倒せないマオが、退魔師試験に合格する事が出来ると思います? 」
マオ
「 ……………あっ、そ……そうだった!!
オレ──、未だ妖魔を倒せないだ… 」
セロフィート
「 マオが妖魔を倒せなくても、ワタシが傍に居れば妖魔を倒す事が出来ます。
マオとワタシは2人1組──同行二人で行動する必要があります 」
マオ
「 そうだった……。
セロが居ないと…………。
でもさ、それと陰陽師になるのと、どう関係するんだよ? 」
セロフィート
「 ワタシがマオの式神になります。
マオはワタシを使役している陰陽師になってください 」
マオ
「 はぁぁぁぁぁぁあああん??!!
セロがオレの式神ぃ!?
だから、オレに陰陽師を演じろって言うのかよ! 」
セロフィート
「 はい♪ 」
マオ
「 『 はい♪ 』じゃ、ないよ…… 」




