⭕ モンスターを倒せない! 2
──*──*──*── 村の手前
マオ
「 ──セロ、見ろよ!
人が居る!
山を抜けたよ!
やっとだぁ~~~~♪♪♪ 」
セロフィート
「 それにしてもやけに騒がしいです。
何か起きているようです 」
マオ
「 マジかぁ~~。
此方は下山後でヘトヘトだってのにぃ…… 」
セロフィート
「 行きます? 」
マオ
「 宿泊したいし、村人に恩を売っとこう!
宿泊料金をまけてもらえるかも知れないしな! 」
セロフィート
「 ふふふ。
頼もしくなりましたね、マオ♪ 」
マオ
「 セロのお蔭でな! 」
セロフィート
「 どう致しまして♪ 」
マオ
「 嫌味だよ──、い・や・み・ぃ!! 」
セロは走らないから、先にオレが走って現場へ向かう。
向かう場所は悲鳴が聞こえてる所だな。
──*──*──*── 村の中
悲鳴が聞こえる場所には大勢の人間──村人達が居た。
鍬やら鋤やら武器のつもりなのか農具を構えて果敢に “ 何か ” を相手にしているみたいだ。
村人達が対峙しているのは、山中で相手をした怪物だった。
5体も居るじゃんかよ!
駄目だ……助けに入りたいけど、今のオレは無力だ。
オレには村人達を助けるだけの力が無い。
だけど、怪物の攻撃は結構な威力があって重かった。
戦闘経験が豊富なオレですら防ぐのがやっとなのに、戦い慣れしてない村人がまともに食らったりでもしたら────。
被害者を出さない為にも逃がさないと駄目だ。
オレは愛刀を構えると覚悟を決めて、農具を構えている村人達の前に出る事にした。
マオ
「 コイツと戦ったら駄目だ!
死ぬぞ!
安全な場所に逃げるんだ! 」
こんな時に何だけど、オレの言葉って村人達に通じてるのかな?
この≪ 島国 ≫の言語をオレは知らなかった!!
まぁ、村人達の前に立ち塞がって怪物と対峙する姿を見たら、背後から農具でグサッ──とか、されない……と思いたい。
村人:A
「 アンタは誰だぁ!?
何処から来たぁ!!
出て行けぇ、余所者がぁ!! 」
あっ、言葉は通じるみたいだ。
それにしたって怪物を前にして「 余所者は出てけ! 」は、幾らなんでも酷いんじゃないか?
オレ、助けに入ってるんだけどぉ!!
マオ
「 ──兎に角、コイツの居ない場所へ逃げろ!!
避難場所ぐらいあるだろっ!! 」
村人:B
「 見た事のねぇ格好しとるぞ! 」
村人:C
「 陰陽師様じゃないか?
陰陽師様も “ けったいな格好しとる ” とか言われとるし 」
村人:A
「 な…成る程!
陰陽師様が村に来てくれたんか! 」
村人:B
「 もう安心だぁ~~!
有り難や~~有り難や~~ 」
村人達は急に両手を合わせるとオレの背中を拝み始めた。
“ 陰陽師様 ” って何だよ??
拝んでないでさっさと此処から避難してほしい。
マオ
「 拝んでないで此処から離れろぉ!!
死にたいのかよ!! 」
村人達:C
「 そ…そうだべな!
妖魔は陰陽師様にお任せして、俺らは逃げよう! 」
村人達は漸く逃げてくれるみたいだ。
なんてのんびりした村人達なんだ…。
オレは怪物が繰り出す攻撃を受け流したり、防ぐしか出来ない。
此方の攻撃が通用しなくても、怪物の攻撃を食い止めたり、防げるのは良かった。
だけど──、何時迄も持たないぞ!
マオ
「 セロぉ~~~~!
早く来てくれよぉ~~!! 」
1人で5体の怪物から繰り出される攻撃を防いで何れだけの時間が経っただろう。
オレの左横を素早く “ 何か ” 通り過ぎた。
ヒュッ──っと音を出して横切ったのは矢だ。
オレの背後から数本の矢がビュンビュンと飛んで来る。
矢は怪物の体に突き刺さっている。
つ・き・さ・さ・っ・て・い・る──だと!?
マオ
「 ──オレの刀は透けるのに、何で矢は刺さってるんだよ!! 」
?
「 離れろ!
巻き込まれるぞ! 」
背後から声がする。
声の正体は分からないけど、「 巻き込まれるぞ! 」は穏やかじゃない。
オレは正体不明の声に素直に従う事にした。
迷わず怪物から離れると距離を取る。
オレは理解力の乏しい村人達とは違うんだ!
オレが怪物から離れると、矢が燃え始める。
突き刺さっている矢が怪物にも効いているみたいで、次々に倒されて行く。
怪物の姿が消えると燃えていた筈の矢が地面にカラン…と音を立てて落ちた。
誰かがオレの背後から現れて、地面に落ちている矢を拾っている。
使用済みの矢を回収してるって事は、矢を射った人物かも知れない。
言葉が通じてて良かったぁ~~~。
オレまで燃やされる所だったよ。
マオ
「 あの──、有り難う!
怪物を倒してくれて助かったよ 」
?
「 もんすたー??
それよりも君は怪我をしてないか? 」
マオ
「 うん、何とかね。
丈夫なのが取り柄だから── 」
?
「 そうか。
怪我が無くて何よりだ。
今の妖魔はかなり強敵だったからな。
君は──随分と変わった格好をしているが……同業者か? 」
マオ
「 同業者??
えぇと……オレは旅人だよ 」
?
「 旅人だと?
妖魔が活発化する時期に旅をしているのか?
…………怖い物知らずだな… 」
マオ
「 えぇと……オレはマオ・ユーグナル。
守護衛士で剣士をしてるよ。
海を渡って別の≪ 島国 ≫から来たんだ。
だから、この≪ 島国 ≫の事は詳しく知らなくて…… 」
?
「 そうなのか?
この時期に渡り人とは珍しいな 」
マオ
「 渡り人?? 」
?
「 台風が過ぎ去った後に時々現れるそうだ 」
マオ
「 台風だと海が荒れるから、船が難破したのかも知れないかな? 」
?
「 私は厳蒔弓弦だ。
退魔師をしている 」
マオ
「 退魔師??
村の人達が言ってた “ 陰陽師様 ” とは違うの? 」
厳蒔弓弦
「 陰陽師?
──陰陽師は妖魔を倒す祓い屋の事を言う。
陰陽師は使役した式神で妖魔を倒す。
退魔師は魔具を用いて妖魔を倒す退治屋の事を言う 」
マオ
「 ふぅん?
どっちも妖魔…ってのを倒すのに祓い屋と退治屋って言い方が違うんだ? 」
厳蒔弓弦
「 陰陽師は術師,術者と呼ばれる類いだからな。
魔具を用いて妖魔を祓う者達は祓魔師と呼ぶ 」
マオ
「 ふぅん……。
魔具ってのを使って倒すか倒さないかの違いって事か。
ところで魔具って何かな? 」
セロフィート
「 弓弦さんとやらが使った弓矢の事です 」
マオ
「 ──セロ!
来るのが遅いだろが!!
何してたんだよ! 」
セロフィート
「 村人に囲まれて拝まれてました。
マオ、騒ぎの原因は何でした? 」
マオ
「 怪物だったよ。
──っていうか、此処では “ 妖魔 ” って言うみたいだ。
避難した村人達が “ 妖魔 ” って言ってたし、弓弦さんも言ってるし 」
セロフィート
「 そうですか。
妖魔とやらは無事に倒せたのですね 」
マオ
「 弓弦さんが倒してくれたよ!
5体の妖魔を1人で倒しちゃったんだぞ!
凄くないか? 」
セロフィート
「 ははぁ…そうでしたか。
弓弦さん、ワタシのマオを助けてくださって有り難う御座います 」
厳蒔弓弦
「 あ……いや…。
大した事はしていない。
退魔師としての役目を果たしただけだ 」
セロフィート
「 例えそうでも心から感謝致します。
マオの刀では妖魔を斬る事は出来ませんし 」
厳蒔弓弦
「 その刀は魔具ではないのか!? 」
マオ
「 えっ?
うん、違うよ。
“ 魔具 ” って言葉は弓弦さんから聞いて初めて知ったから。
何か問題でもあるの? 」
厳蒔弓弦
「 …………魔具ではない刀で妖魔の攻撃を防いでいた──。
それは有り得ない事だ… 」
マオ
「 へ?
有り得ない?
どゆこと?? 」
セロフィート
「 このまま立ち話もなんですし、場所を変えましょう 」
マオ
「 それもそうだな。
どうせなら座って話せる場所が良いよな? 」