✒ お墓参り 1
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── さちまの里
朝を向かえて朝食を済ませたら、弓弦さんが≪ さちまの里 ≫を案内してくれる事になった。
キノコン達は昨日から張り切って荒れた大地を開墾している。
葉茎野菜,根菜,果菜,香辛野菜,果実的野菜と区別して野菜を栽培するみたいだ。
長屋を建設しているキノコン達も居る。
マオ
「 弓弦さん……、今更だけど開墾させて良かったの? 」
厳蒔弓弦
「 あぁ、それに関しては構わない。
知識のない私1人では、荒れた土地を生き返らせる事は難しいだろうからな。
逆に有り難い 」
マオ
「 良かった~~(////)
セロが1人で勝手に決めちゃって御免なさい… 」
厳蒔弓弦
「 ははは、構わない。
それに決断力と行動力は大事だ。
妖魔に何時襲われるか分からない時代だから尚更だ。
生き抜く為には多少強引な方が良いんだ 」
マオ
「 セロの場合は多少を超えてるけどね… 」
厳蒔弓弦
「 …………不思議な光景だ。
茸の姿をした珍妙な生物が≪ さちまの里 ≫の土地を開墾してくれているなんてな。
こんな日が来るなんて思いもしていなかった… 」
マオ
「 普通は誰も思わないよ… 」
厳蒔弓弦
「 土を耕すだけじゃなく民家も建てられるとは恐れ入る 」
マオ
「 将来は人を住まわせる予定なのかな?
ずっとキノコンに管理を任せる訳じゃないと思うし。
弓弦さんは退魔師を引退したら、≪ さちまの里 ≫に戻って暮らすの? 」
厳蒔弓弦
「 …………どうだろうな。
未だ、分からない。
故郷で暮らすのも良いだろうが、退魔仲介所の運営に関わる道は視野に入れているかな 」
マオ
「 退魔仲介所の運営に関われるの? 」
厳蒔弓弦
「 あぁ。
退魔仲介所を運営しているのは、引退した退魔師達だからな。
妖魔絡みで問題が起きた時、直ぐ対処が出来るようになっているんだ 」
マオ
「 へぇ、知らなかった 」
厳蒔弓弦
「 退魔仲介所は各地にある。
≪ 平安京 ≫にある退魔仲介所は謂わば本部の役割を担っているんだ。
各地にある退魔仲介所は支部に当たるかな 」
マオ
「 そうなんだ… 」
厳蒔弓弦
「 受けた依頼の報告と報酬は、受けた退魔仲介所でしか出来ない事になっているから、依頼を解決させたら戻らないといけない。
その前に近くの退魔仲介所へ寄り、依頼を解決させた事と近日中に戻る事を文で出す決まりになっている。
何が起こるか分からないから、依頼を受けた際には退魔仲介所には必ず立ち寄り、自分の足取りを残す事も大事な役目だ 」
マオ
「 そうなんだ。
覚えておかなくちゃ! 」
──*──*──*── 墓地
厳蒔弓弦
「 ──此処が墓地だ 」
マオ
「 …………滅茶苦茶だね。
此処も妖魔に襲われたんだ… 」
厳蒔弓弦
「 これでも綺麗にした方なんだがな…。
遺体は全て妖魔に喰われてしまったから、遺骨はないんだ…。
石を重ねて墓に見えるようにしてみたいんだが…… 」
マオ
「 この手前のだね。
……後ろは土葬だよね?
土の中に遺骨が埋まってるんだよね… 」
厳蒔弓弦
「 そうだろうな。
掘った穴の中へ樽状の棺桶に入れて埋めていたのを見た事がある 」
マオ
「 じゃあ、棺桶は腐ってるだろうね。
遺骨も土に溶けちゃってるかも知れないね… 」
厳蒔弓弦
「 そうかも知れないな 」
マオ
「 墓地も綺麗にしないとだよね。
ちゃんとした墓石も建ててあげたいし、供養だって……。
セロに頼んでみるよ。
セロなら、土に溶けちゃった遺骨も元通りにして骨壺に入れてくれると思うし。
骨壺を納める納骨堂と慰霊碑も作ってもらおうよ 」
厳蒔弓弦
「 そんな事も出来るのか? 」
マオ
「 セロが直々にするわけじゃないよ。
そういう便利な魔法を使えるだけだよ 」
厳蒔弓弦
「 まほう…というのは凄いのだな 」
マオ
「 オレも手を合わせて参っても良いかな? 」
厳蒔弓弦
「 あぁ、勿論だ。
有り難う 」
弓弦さんと一緒に墓地で両手を合わせて参った後、弓弦さんとオレは墓地を後にした。
──*──*──*── 茶屋・建設途中
マオ
「 ──キノコン、忙しいのに有り難な 」
キノコン
「 とんでも御座いませんエリ。
ゆっくりと寛いでくださいませエリ 」
厳蒔弓弦
「 茶屋と書いてあるが、此処は何をする場所なんだ? 」
キノコン
「 宿泊の出来る飲食店にする予定ですエリ 」
厳蒔弓弦
「 宿泊? 」
マオ
「 食堂付きの宿屋みないな感じかな?
時代劇で見た事があるよ! 」
厳蒔弓弦
「 時代劇?? 」
マオ
「 旅人が一息吐ける休憩所みたいな感じだよ。
お茶を飲んだり、お団子を食べて空腹を満たしたりする場所だよ。
誰でも気軽に立ち寄れる休憩所だよ 」
厳蒔弓弦
「 そうなのか。
それは旅人には助かる休憩所だな 」
キノコン
「 今は未だ、お茶しか出せませんエリ…。
でもでも、作物が育てば美味しい料理を提供する事も出来るようになりますエリ! 」
マオ
「 楽しみだよ。
茶葉も育てるのか? 」
キノコン
「 行く行くは栽培したいですエリ。
今、飲んでいただいているのは、その辺に生えていた野草で作った野草茶ですエリ 」
マオ
「 野草……。
普通に美味しいから言われないと気付かないよ 」
キノコン
「 有り難う御座いますエリ♥️
マオ様に気に入っていただけて嬉しいですエリ 」
厳蒔弓弦
「 野草で茶が作れるとは知らなかった。
他にも野草の使い道はあるのだろうか? 」
キノコン
「 勿論ですエリ!
人間にとっては邪魔で要らない雑草でも工夫次第で薬になりますエリ。
すててしまうのは勿体無いですエリ 」
厳蒔弓弦
「 そうなのか?
……雑草も工夫すれば薬になる… 」
キノコン
「 効力を補ったり、強めたりする事もありますエリ。
無駄な草なんて1本も無いですエリ。
セロ様は雑草から回復薬を作れる偉大な御方ですエリ! 」
然り気無くセロの株を上げに来るキノコンの忠誠心には感心するよ。
薬学にも精通しているセロが凄いのはオレも認めてるけど、本音は「 実験したい 」だからな~~。
雑草で回復薬を作っちゃうセロは確かに凄いし、尊敬するけど……、完成させる迄に犠牲となったモルモットの事を考えるとなぁ……。
一体何れだけ実験台の屍が積まれた事か。
オレには分からないけど、1000人は超えてるんじゃないのか~~??
マオ
「 弓弦さんは薬にも興味があるの? 」
厳蒔弓弦
「 私は回復の出来る法力を使えないからな。
回復は主に傷薬を使用しているんだ。
質が良くて効果の高い薬は貴族にしか買えない。
貧しい者は自分で作り、用意するしかないんだ 」
マオ
「 じゃあ、弓弦さんも自分で作ってるんだ? 」
厳蒔弓弦
「 道具さえあれば作れる。
五行軍に居た時は兄弟弟子に作って持たせていた事もある。
薬膳料理も多少は作れるんだが……、味が不評でな 」
マオ
「 薬膳料理って味付けが難しいんだ? 」
厳蒔弓弦
「 薬も薬膳料理も師匠から教わったが、“ 良薬口に苦し ” と言うそうで、何れも苦い物ばかりだった。
苦さを弱めようと工夫するが中々難しくてな…… 」
キノコン
「 弓弦様が作れる薬と薬膳料理を僕に教えてくださいませエリ。
お役に立てるかも知れませんエリ 」
厳蒔弓弦
「 そうか?
苦さを和らげるのは今後の課題でもあるんだ。
手伝ってもらえるなら有り難い。
マオ──、済まないが… 」
マオ
「 良いよ。
オレは墓地の事をセロに頼んでみる。
キノコン、弓弦さんを宜しくな 」
キノコン
「 お任せくださいませエリ! 」
野草茶を飲み終えたオレは、弓弦さんと別れてキャンプ地へ戻る事にした。
──*──*──*── キャンプ地
キャンプ地にはセロが居て、椅子に座った状態のセロがキノコン達を集めて何かを話している。
妖魔の事かな?
邪魔したら悪いだろうから、話が終わるまで離れた場所にいようかな。
オレはキャンプ地から少し離れた場所で、剣術の素振りをする事にした。
“ エアー斬り ” ってヤツだな!