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⭕ ようこそ、さちまの里 2


 セロにも手伝わせて、見るも無惨な廃墟と化しているづるさんの故郷の地をキャンプ地にしてテントを張って、簡易竈,簡易調理台,簡易流し台をアース魔法マジックで作った。

 づるさんさんに休んでもらっているあいだにセロと手分けをして今晩のゆうに食べる料理を作る作業に入った。






厳蒔弓弦

「 …………1年り…か。

  あの頃のままだ。

  なにもかも…………あの頃の…… 」


 セロフィートとマオがゆうの準備をしてくれているあいだげんじのづるは故郷の≪ 里 ≫いた(いた)しいのさまを見ながら歩いていた。

 

厳蒔弓弦

「 私は…………なにをしているのだろうな?

  …………今は亡き両親や里人達の命日に帰ってては……なにをしているんだ… 」


 ≪ 里 ≫のはずれには子供の頃、大人達から「 危ないから近付かないように! 」と言われていた崖があった。

 大人達に内緒でては、美しい夕日を今は亡き友人達と眺めていた。

 当時と同じ光景が、今でも変わらず見られる崖の上は、子供達のお気に入りの場所だった。

 から眺める星空も美しく時間が経つのも忘れ、地面に寝転がり星空を見ながら寝落ちしていた事もしば(しば)あり、子供達が両親から大目玉を食らった事も少なくない。


厳蒔弓弦

なつかしいな……。

  は当時と変わらず美しいな…… 」


 夕日が沈む様子を当時の自分達に重ねがからなつかしんだあと、崖に背中を向けて歩き出す。

 からみんなで≪ 里 ≫へ戻ろうとした時、≪ 里 ≫の方が赤く染まっており、火の手が回っている光景を子供達で目撃した事をづるは今でもハッキリと覚えていた。


 あの時、た誰もが「 尋常ではない事態が起きたのだろう 」と子供ながらに感じていた筈だ。

 「 戻っては、いけない! 」と誰もが思っていた筈だ。

 それでもづる達は≪ 里 ≫へ向かって走った。


 あか(あか)と燃える≪ 里 ≫では、叫び声や悲鳴を上げならが里人達が逃げ回っていた。

 大人の女達は子供を集めて逃がそうとしていた。

 大人の男達は農具を構えて “ なにか ” と対峙していた。

 “ なにか ” とは妖魔だった。


 ≪ さちまの里 ≫には妖魔を寄せ付けない結界が張られていて、特殊な鏡が祠の中に入っている。

 鏡が割れない限り、結界の力で≪ さちまの里 ≫は妖魔に襲われないようになっていた。

 それなのに≪ 里 ≫が妖魔に襲われている。

 祠の中に納められている鏡が、誰かの手に依って割られた──という事なのか。


 里人が祠の中にある鏡を割る筈がない。

 妖魔から≪ 里 ≫を隠して守る為の鏡だとみなが知っているからだ。

 自分も含め、子供達は誰も祠には近付こうとはしなかった。


厳蒔弓弦

「 ………………余所者など……助けるべきではなかったんだ…。

  そとの者には祠の大事さも鏡の必要性も分かるわけがなかった… 」


 ≪ 里 ≫に入るとテントの近くに明かりが見える。

 マオがセロフィートに生意気そうに小言を言いながらゆうの準備をしてくれている姿が見える。

 まるでほんとうの兄弟のように仲睦まじくみえ、楽しそうだ。


厳蒔弓弦

「 …………あんな事が起こらなければ──、私が退魔師となる事もなく、誰かと夫婦になり、両親のように子を育て、家庭を築いていたのかも知れないな…。

  仮にそうなら……さとがえちゅうに立ち寄った≪ 村 ≫で、セロとマオと出会う事もなかったのだろうな… 」


 かつては笑い声が絶えず、元気な子供達が走り回り、賑やかであり穏やかだった≪ 里 ≫の光景を思い出しながら、なつかしむ。


厳蒔弓弦

「 ああなる事が≪ 里 ≫の運命だったのか?

  誰にも……防ぐ事の出来ない事だったのか…… 」






マオ

づるさ~~~ん、料理が出来たよ~~! 」


 マオは元気に右手をブンブンと振りながら、立ちまって過去にふけっているげんじのづるの名前を呼ぶ。

 げんじのづるは沈んでいた気持ちを切り替えるとテントに向かって歩き出した。






厳蒔弓弦

なにも手伝えなくて済まないな 」


マオ

「 そんな事ないよ!

  今晩の料理は、づるさんの故郷に無事に到着出来た御祝いって事で、奮発したんだ~~!

  ジャッジャ~~~ン!

  五穀米のオニギリと猪肉のジュ~シ~ステーキと白身魚と温野菜のクリーム煮込みだよ! 」 


セロフィート

「 五穀米以外はづるさんに馴染みのない料理になりますね。

  食べてみてください 」


マオ

「 ステーキは食べ易い一口サイズに切ったよ 」


厳蒔弓弦

「 食欲をい匂いだ… 」


 づるさんは、セロが用意してくれたもたれ付きの丸太椅子の上に腰を下ろして座る。

 テーブルカバーを敷いたテーブルの上には、木製のうつわにセロが盛り付けてくれたしそうな料理が並べられている。


厳蒔弓弦

「 ──いただきます 」


マオ

「 いただきま~~す♪ 」


セロフィート

「 いただきましょう 」


 胸の前で両手を合わせて合掌したづるさんとオレは食前の感謝の祈りをしてから料理に手を付けた。






マオ

「 はぁ~~~~♪

  食べたぁ~~~♥️

  今晩の料理もかったぁ♥️♥️ 」


セロフィート

「 ふふふ…。

  マオは安定の食いしん坊さんですね♪ 」


厳蒔弓弦

「 五穀米とは随分と奮発したのだな。

  上位貴族しか食べれぬ貴重な米を沢山べれるとは思わなかった 」


マオ

「 そうなの?

  米なら色んな種類を取り揃えてるよ。

  こくまいせきまい,白米,玄米,麦米,餅米──兎に角、色んな種類の米を好きなだけ食べられるよ 」


厳蒔弓弦

「 そうなのか?

  それは凄いな 」


セロフィート

「 お米を粉末状にすれば、お団子,麺,パンも作れます 」


マオ

「 粉末にしなかったら、餅,酒,油も作れるんだよな~ 」


厳蒔弓弦

「 米からそんなに作れるものなのか? 」


マオ

「 そうだよ。

  豆は米以上に凄いんだよ!

  豆で肉だって作れちゃうんだ! 」


厳蒔弓弦

「 は?

  豆で肉??

  …………想像が付かないんだが… 」


マオ

「 だよね。

  オレも驚いたぐらいだもん。

  魚の擂り身で蟹身そっくりな味のカニカマっていう凄い食べ物だって作れちゃうんだよ! 」


厳蒔弓弦

「 マオは色んな食材を知っているんだな。

  食いしん坊なのも頷ける 」


マオ

「 ちょっ、づるさん……。

  食いしん坊は関係無いんよ! 」


厳蒔弓弦

「 はははは… 」


 しい料理を食べたお蔭かな。

 づるさんに笑顔が戻った。

 悲しそうな表情をしていたからな……。

 なつかしい昔の事を思い出していたのかも知れない。


マオ

「 そう言えばさ、づるさんのとしを聞いてなかったよね。

  いくつなの? 」


厳蒔弓弦

「 うん?

  今年の11月で19歳になる 」


マオ

「 へっ?

  19歳??

  えぇと……だ11月になってないから……18歳? 」


厳蒔弓弦

「 そうだな 」


マオ

「 えぇっ?!

  落ち着いてるし、大人びてるから20歳は過ぎてると思ってた…… 」


厳蒔弓弦

「 それは五行軍にた時に兄弟きょうだい弟子や仲間達からもく言われていた…。

  どうやら私は実年齢より歳上に見えるらしい 」


マオ

「 ご…御免なさい…… 」


セロフィート

「 成人するのはなんさいごろですか? 」


厳蒔弓弦

「 11歳 ~ 15歳迄にげんぷくしきが行われる。

  私の時は12歳になったあと、年内の12月にげんぷくしきを行われた 」


マオ

「 12歳で成人って──、亜人種と同じじゃん。

  オレの故郷では一律に15歳で成人の儀式を受けたよ 」


厳蒔弓弦

「 15歳か。

  マオの故郷では遅いのだな。

  セロとマオのとしいくつなんだ? 」


マオ

「 オレは、はた── 」


セロフィート

「 マオは16歳です。

  ワタシは19歳なので、づるさんより7ヵ月お兄さんになりますね 」


 20歳(はたち)って言おうとしたのに、セロに言葉を遮られて “ 16歳 ” にされてしまった。

 酷いっ!!

 しかも、セロはオレよりサバを読みまくってる!!

 そりゃ、セロは美青年だから10代にも見えなくもないけど──。

 せめて21とか22とかさぁ……。


厳蒔弓弦

「 そうなのか?

  セロとマオととしが近かったのだな。

  マオはげんぷくしきまえだと思っていたのだが…… 」


マオ

「 ははは……。

  く言われるぅ~~~ 」


セロフィート

「 ふふふ。

  女の子にも間違えられますね 」


マオ

「 言うなよ! 」


厳蒔弓弦

「 はははは… 」


 づるさん、楽しんでくれてるみたいでかった。

 セロはづるさんを元気付ける為にワザと──、なわけないよな…。

 セロだもんな~~~。

 づるさんは≪ さちまの里 ≫になんにちぐらい滞在する予定なんだろうな?

◎ 訂正しました。

  なにをしているだろうな?─→ なにをしているのだろうな?

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