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愛され美少年で悪役令嬢の弟の僕、前世はヒロインやってました  作者: DAKUNちょめ


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59話◆悪役令嬢シャルロット誕生秘話。

部屋の中が薄暗くて顔は良く見えないのだが、目の前の令嬢がアホンダラ……

いや、アフォンデル伯爵のご令嬢だと知った僕の心の中のアレがアレした。


堪忍袋の緒がブチ切れたって言うか。

だってこいつ等、格下の癖に侯爵家の令嬢に喧嘩を売ったんだよ?

ってゆーかモブ令嬢の分際で、美の権化たる姉様を舐めた上にバカにしやがった。

身の程もわきまえずに、この僕の姉様を!!

おぉ!?おぉん!?ッて…威嚇する猫か僕は。

いやでも本気(マジ)ガッデム。んなもん許せるか!



「…はぁー煩わしい。

わたくし、いつまで羽虫が飛び回る音を聞いてなければなりませんの。」



姉様の姿をした僕アヴロットは、長椅子からユラリと立ち上がった。

怒りの余り瞬きすら忘れた僕は、眼をカッ開いたまま令嬢達を凝視する。

薄暗い部屋のテーブルに置かれたランプの小さな灯りが、立ち上がった僕アヴロットの顔を下側からぼんやりと照らした。

下から光を当てられた僕は、よく怪談にも使われる定番の怖い顔になったっぽい。

普段穏やかな美女の顔は下からライトを当てられ、より恐ろしい形相に見えたのか、令嬢達がズザッと一歩後退った。



「羽虫の如き卑小なる貴女方の愚行を、わたくしが寛容なる心を持って目こぼししていた事に驕り、わたくしよりも自分の方が立場が上だと図々しくも増長。

思い上がりも甚だしい!」



怒りに身を任せ、ブワァっと無意識に威圧的な魔力を部屋全体に放った。

ランプの中の炎が揺らぎ、部屋の中にはチリチリと肌を刺激する魔力が立ち込める。

言い方を変えると、僕の怒気で部屋の中がサブイボが立ちそうな空間になった。



それにしても不便なのは僕が今、姉様の姿をしている為に、いつもの僕の言葉遣いで話せないコト。

本当は言いたかったよ!?


『小バエみたいなお前らの阿呆行為を、ちょっと大目に見てやってりゃ、いい気になりやがって。

マジでいい加減にしろよ!お前ら!!』


って。

でも姉様に、こんな台詞言わせらんないし。



「なっ…何よ、侯爵家だからって偉そうに!

わたくしの家だって、すぐ陞爵されて侯爵家に戻るわ!

貴女が殿下の許婚(いいなずけ)でいられて大きな顔をしていられるのも今の内よ!!」



僕の飛ばした魔力を帯びた強い怒気に二人の令嬢は怯えて身を竦めたが、アホンダラ令嬢だけは怯んだままではいなかった。

負けないとばかりに、僕を指さし強く言い放つ。



「黙れ。」



イラッとした僕は少し顎を上げ、怯んだままの二人の令嬢の前にズィと身を乗り出したアホンダラ令嬢に対して、感情の消えた見くだす様な冷たい視線を落とした。



「身の程をわきまえなさい。

国王陛下の覚え良きわたくしがその気になれば、貴女の家など即刻王都から消し去る事も可能なのです。

貴女がわたくしに、そのように大きな口を叩けるのは、わたくしの慈悲による安寧だと気付きなさい。」



翻訳

「身の程をわきまえろ。

国王陛下をバックに持つ僕がブチ切れしたら、お前の家なんざ、この世から消し去ってまうぞ。(物理的に)

更地にされたくなきゃ、これ以上僕を怒らせんじゃないよ。

僕がブチ切れたら平和な日常が送れると思うなよ。」



魔力をはらむ僕の怒気で部屋の中がいっぱいになった。

焦げ付く様でいて凍て付く様な、肌がチリチリと微量な痛みを訴え、圧倒的な力の差を前に早くその場を離れたいと肉体が警戒を告げる。

恐らく全身サブイボだらけに違いない。

危険を予知する動物的な本能に近いのかも知れない。

魔力を持つ者なら尚さら、この異様なほど強い魔力を感じる事が出来るはず。

ただ、人間には本能だけではどうにもならない、意地があったりするワケで。



「そ、そんなの…た、ただの虚仮威しだわ…!」



アホンダラ令嬢、なかなか怯まない。

僕はイライラのピークを越えて、何だかもう面倒くさくなっていた。



「では、虚仮威しではない事をお見せ致しましょう。

貴女のせいで今夜限り、貴女の家が無くなってもよろしいのですわね。

新年早々ご家族の皆様と邸に務める多くの方々。

寒空の下、凍えない事を祈りますわ。」



もう面倒臭いから、アヴニールに戻ったらビュンと飛んで、アホンダラ伯爵の邸ぶっ壊しに行こうかなと思った。

お城のパーティーから馬車で帰ったらウチが無く、かわりに瓦礫の山。

ついでに、お前らんチも……そうする?

と、アホンダラ令嬢の後ろでカタカタ震える二人の令嬢を見た。

この二人はもう反抗の意志など一切無く、僕と目が合ったら首をフルフル横に振って許しを請う眼差しを向けて来た。



「あ、アフォンデル様…!シャルロット様に許しを請いましょう!

今日、私達がした事を陛下に告げられて、我が家が爵位を失ったりしたら…!私のせいで!」



ここに来て初めて僕は、彼女らの中にある「家を失う」の意味が、僕の言う「邸を破壊したる」とは違う事に気付いた。

どうも家名を失うって意味の様だ。

確かに貴族同士のいざこざで、邸を破壊って無いよな。


姉上を酔わせて陛下とのラストダンスに出れない様に仕組まれていたなんて知ったら、父上なら家名を失わせる事位、やってしまいそうな気がする。

貴族から平民に成り下がるって、結構キツいよな。

僕には、そんな残酷な事は出来ないな。



邸を破壊して真冬に家人諸とも外に放り出すのと残酷さで言えばどっちもどっちとか、そんな意見は聞かない。



「わたくしは、どちらでもよろしくてよ。

まだ、わたくしと敵対する気概を見せるならば容赦致しませんわ。」



これで折れなければ、アホンダラ令嬢含む3人の令嬢の邸のー…………

門位は手付け代わりに破壊しに行こう。とりあえず。



「私はもうシャルロット様に逆らったり致しませんわ!

どうか、お許し下さい!」



令嬢の1人がアフォンデル令嬢の前に出て来て、僕の前で膝を着いた。

つられた様にもう1人の令嬢も並んで膝をつく。



「私もです!私をお許し下さい!

どうか今宵、私達のした愚かな行為をお許し下さい!

ですからどうか陛下には…!」



僕が陛下にチクッたら、確かに大変な事になりそう。

陛下より、父上が今回の事を知れば本気で家を取り潰す位の何かはしそう。

アフォンデルは親も一枚噛んでそうだしともかく、二人の令嬢の家にしたらとばっちりだよな。

娘のせいで、没落貴族になるかも知れないなんて。



「あ、貴女達!わたくしを裏切る気なの!!」



アホンダラ令嬢が僕の前に膝をつく二人の令嬢の肩を背後から掴んで、キッと睨みつけた。

僕はアホンダラ令嬢の必死の形相が余りにも面白くて、思わず笑いが込み上げてきた。

あははは!と大声で笑いたいのを堪える。



「ホホホ、余りにも滑稽で見るに耐えませんわ。

貴女方も、ご友人はちゃんとした方をお選びになった方がよろしくてよ?」



大口を開けて笑いそうな口を、手の甲を当て隠した。

偶然の産物ではあるが、お嬢様らしかったのではないだろうか。

まぁ二人の令嬢はもう姉様を陥れようなんて真似はしないだろう。

アホンダラに関しては、父上も何か考えがあるかも知れないし…しばらく泳がせて…。

つか、冷静になって考えたらアフォンデル伯爵家が瓦礫の山になったら、父上には僕がやったって即バレするわ。

国王陛下や側近さん達にもな。


とりあえず、ルイに預けた姉様も気になるし帰ろう。



「お待ち下さい、シャルロット様!

私をシャルロット様のご友人の末席に加えて下さいませ!」



「わ、私も!シャルロット様のお役に立てるよう、働きますわ!ですから、どうか!」



二人の令嬢が、歓談室から出ようとした僕を引き止めた。

「裏切り者!」とヒステリックな声を上げるアフォンデル令嬢を完全に無視した二人は、僕に縋る様に懇願して来た。

よく考えたら、姉様自身は何も知らないワケだし……

令嬢達に脅しを掛けたなんて言われたりしたら困るし…



「わたくし今日は、「何も無かった」事に致しますわ。

ラストダンス前に、貴女方に飲み物を頂いただけ。

夜会が終わってからの事は、全て忘れますわね。

思い出して欲しいのであれば、いつでもお相手致しますけれど。

わたくしの友人となりたいのであれば、学園に入ってからお願いいたしますわ。」



「「はい!」」



二人の令嬢が声を揃えて、とても良い返事をした。

今回の行為を全て無かった事として許してやろうと言ってるんだ。

もう姉様に楯突く様な真似は出来ないだろう。

それと、何も知らない姉様が「なんの事?」って顔をしても、「無かった事にしてあげたのに自ら掘り返すつもり?」と解釈してそれ以上追及出来まい。



部屋から出る際、取り巻きを奪われたアフォンデル伯爵令嬢のギリッと歯噛みするような悔しげな表情が僅かに見えた。

薄暗い部屋ではあったがチラっと見えた口元だけで、その表情が見て取れた。

思わず、ワハハハハ!ザマァ見ろと声が出そうになるのを堪えて、静かにほくそ笑んでしまう。



「ホホホ、無様です事。」



蔑む台詞を言い残して歓談室を出た僕の後を、二人の令嬢が付き従う様について来た。

後ろを振り向かないままフロア前の廊下まで出て来たは良いが、僕は何処かで変身魔法を解いてアヴニールに戻らないと。二人について来られたら困る。

僕は別れを告げねばと、クルッと二人の方を向いた。



「今夜の事は無かった事とし、互いに忘れましょう。

貴女方も、お帰りになって…。」



アフォンデル伯爵令嬢の取り巻きをしていた二人の顔を、明るい場所でハッキリと見た。

名前は良く知らないが、二人とも顔を知っている。

ゲームでも、前世でも知っている。


悪役令嬢シャルロットの取り巻きをしていた令嬢二人が僕の顔を、キラキラな眼差しで見詰めていた。


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