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愛され美少年で悪役令嬢の弟の僕、前世はヒロインやってました  作者: DAKUNちょめ


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52話◆僕らは恋を始める……???

ベッドに入り数時間。

朝食の時間だと侍女に起こされた僕が部屋を出て食堂に向かう際、廊下に立っていた僕を待っていたルイが朝の挨拶をした。



「おはようございます、アヴニール様。」



「う、うん、おはよう」



いつもと全く変わらないルイの態度。

ぎこちない態度を見せているのは僕だけだ。

……まさか、昨夜のアレ全てが夢オチとか無いよな?


ガチガチになって歩く僕の後ろにルイがついて来る。

僕も…僕も…!落ち着いて普段通りにしてないと!



「キョッ!今日の予定はドンなふぅ!?」



「試験も終わりましたしアヴニール様にも休養が必要でしょう。

今日一日は自由にお過ごし下さい。」



普段通りが中々難しい。

キョドって尚更おかしな事になる。

だけど、そっかあ…ここ最近、ルイと剣の稽古やら魔法の練習やらで大変だったからなあ。

あの、超超超微力をキープするの。大変だった。

面倒いし。

お勉強も稽古も無し。

久しぶりに丸一日自由になった。



「じゃあ夜は大聖堂に行きたい。

ルイ、もういい加減に蘭金剛石返して。

この僕でも作った事の無いとゆー最強の剣を作りたい。」



「では、夕方にお渡ししましょう。

ですが、剣を作るにはまだ材料が足りてないかと思いますよ。」



………言われてみれば、そうかも知れない。

ルイに教えて貰って採取した蘭金剛石自体が僕の知ってるゲームアイテムには無かった。

前回のヒロイン時代にコンプリートした筈のアイテム図鑑が、いきなり未入手アイテムが増えて歯抜け状態だし。



「そっか、じゃあ新しい武器は諦めるとして……

身代わりのオーナメントはたくさん作っておきたいんだよね。

でも(改)じゃない方。」



普通の身代わりのオーナメントは一度命を肩代わりするだけだ。

(改)は砕けた瞬間、それがスイッチとなり僕が現場に転移させられる。

姉様にはそれを渡した。

万が一姉様の命が奪われたらオーナメントが身代わりに砕け散り、僕が現場に駆け付けて相手をフルボッコ。

事故や天災なら即刻救出する。


まぁ国王のシーヤと違って、姉様が暗殺者に狙われるとかは無いだろうけど、どこにどんな危険が潜んでるか分からないしね。



「ならば、夜までの時間をどのようにお過ごしになられますか。」



「ここ最近、姉様と過ごす暇がなかったから、今こそ愛しの姉様とお茶をしたり、ダンスしたり、一緒にまったりと…」



「お嬢様は今日から本格的に入学に向けての準備をなさるそうです。

勉強、魔法、お嬢様にはダンスの課題もありますね。

邪魔は出来ませんよ。」



忘れてた……入学前の姉様にもクラス分けの為の実力テストがあるんだった。

それで、賢いヒロインと頭の悪そうな悪役令嬢が同じAクラスになっていて、ゲームをしながら「何でや」って思った記憶があるわ。

ゲームではアホそうだったけど、今の姉様を見てるとAクラスに入って当然な気がする。

そこには、リュースやニコラウスも居た。

彼らも頭はいいし魔法も使えるから分かる。


アカネちゃん…どうなるんだろな。


ゲームでは、もうクラス分けされてる所から始まるけれど、今は試験受ける所からだし。

こう言っちゃ何だけど、アカネちゃんて頭がよろしい様には見えない…。大丈夫だろうか。



「今日一日どうするかは、朝ごはん食べてから考えるよ。」



僕はルイと共に食堂に到着し、ルイがドアを開いた。




朝食の時間は、いつもと同じ平和な時間だった。

姉様と母上の、優しい笑顔と柔らかな声。

父上も、愛しい妻と愛娘に優しい笑顔を向ける。

「まぁ…うふふ…」

「あら、そうなのね、クスクス」

「ハハハ、そうなんだよ」

楽しそうな家族団らんの中に僕が入れないのは、父上が僕にだけ笑顔のままで怒気を飛ばして来るからだ。



「アヴニール、後から私の書斎に来なさい。」



ニコニコ笑いながらおっそろしい事を言う。

僕は、朝食の後にお説教される事になってしまった。


……せっかくの貴重な休日がァ……。






コンコン━━部屋のドアがノックされる。



「アヴニール、父親の説教は済んだのだな。」



ベッドの上で壁に寄りかかって黒い猫のイワンを抱き締めながらボンヤリしている僕の所へ、茶とカットしたフルーツを持ったルイが来た。



「試験の事であろう。

学園の方から王城に連絡が行き、王城から父親に連絡が来ていた。

まぁ、やり過ぎだって事だろうな。」



ルイがサイドテーブルに茶とフルーツを置き、ベッド脇の椅子に腰掛けた。



「あれでやり過ぎだなんて…。

力はかなり抑えたハズなんだよ…。

炎の試験だって、弱めにするの割と成功したんだ。

的を破壊したのだって、僕じゃ無かったよ…。」



そうだよ、破壊衝動の強い12歳位のガキが出て来て、楽しそうに的を破壊したんだ。

で、自慢げに偉そうにしていた…だから反省しろって意味を込めて鳥かごを…



「その自慢げなガキを、氷魔法で作った巨大な鳥かごに閉じ込めた上に、巨大な鳥かごスタンドまで氷魔法で作って吊り下げたと聞いたが。

それは、やり過ぎではないのか?」



ルイが僕の思考の断片を読み取って突っ込んで来た。

地上5メートル位の高さに吊り下げたらギャン泣きしたもんな。

確かにアレはやり過ぎた。

試験官の先生方も顎が外れそうなほど驚いていたし…。



「かなり魔力のある者でなければ、氷魔法で巨大な造形物など作れん。

しかも、中に人間を入れて吊り下げるだけの強度を保つ檻など人間離れした魔力だ。

お前の力は敵には脅威となる。隠しておくべきだ。

すぐに学園内に箝口令が敷かれたそうだ。」



ああ、誰にも言ったらアカンてヤツね…。

敵って…魔王ルイや、魔王軍?



「父上にも、力を隠しとけって言ったのに何をやってんだって叱られた……。

学園側でも限られた人にしか僕の事を話す気はなかったらしいし。」



ルイが呆れた様に、それはそうだろうって顔をする。



「お前の試験準備で忘れていたが……邪神と、邪神教の事もまだ何も分かっていない。

その辺に対しても調べてゆかねばならないのだろう。」



「そっかあ…そいつらが敵…」



そいつらが新しい敵なら、魔王ルイとは戦わないで済むのかな。

僕は黒猫イワンを抱っこしたままベッドの上にコテンと倒れた。

何か叱られたせいでテンション下がっちゃったし、今から何かをする気力が起きない。

夜は、大聖堂に行くつもりだから昼はもう寝て過ごそうかな。



「今日は大聖堂に行くまでゴロゴロして過ごすのか。

それも良いだろう。

私も今日一日はのんびりとして過ごすか。」



魔王様がのんびりして過ごすだって。

頭の中に、チビキャラになった魔王がクレヨン画みたいなお花に水やって、芝生でゴロゴロする絵面が浮かんだ。何かウケる。



「………それも悪くないかも知れん。」



「ちょ……!!見たの!?僕のおかしな妄想!!」



覗かれたの!?何か恥ずかしいんだけど!

あんなギャグマンガみたいな絵面を!

僕はベッドから起き上がり、ベッドに両手をついてルイの方にズイっと顔を寄せた。



「そんなおかしな姿を妄想をしたのか?

私は、花に水をやる魔王って言葉を拾っただけだが。」



「ッ……そっ……そっか……!」



ルイは頭に浮かんだ単語を不意に拾う事があるとだけ言っていた。

映像は見られてなかった………けど僕、勢いで、こんなにルイに顔を近付けてしまった。

うわぁ…うわぁ!顔ちっか!昨日の今日でコレは……



「無防備過ぎだな。アヴニール。」



「だよね!僕もそー思った!」



顔を赤くした僕は、慌ててガバッと身を引いてルイから距離を取った。

身を引いてから、僕の左手がルイに掴まれる。

強く引き寄せられるかと思った手はそのままに、捕われた僕の手の甲にルイの唇が優しく触れた。

緊張のあまり、ガチガチに身体を強張らせた僕の手からルイの唇が離れる。



「ルイ……?」



椅子に座ったルイが、両膝に両肘を置いて深く項垂れた。

ハァーっと大きな溜め息を漏らすのが聞こえる。

僕は、ルイの唇が触れた左手を右手で覆う様に握りながら、ドクドクと動悸の激しくなった胸を押さえた。



「やたらと愛らしさを振り撒くんじゃない!!

お前を狙っている輩が、どれだけ居ると思ってるんだ!

今夜の事にしたってだな、私は大聖堂に行くのは反対なんだ!

お前を狙う小僧二人が居るからな!!」



まさかの説教かい!!何だこりゃ。

嫉妬か?それとも、ウチの娘は誰にもやらん!的なおとんか?



「ルイさんや、そりゃ嫉妬ってやつかな?

言っとくけど、狙われた所で僕に手を出すなんて誰にも出来やしないんだよね!

そもそも、彼らにはそんな感情一切湧かないし!」



「お前は強いが間が抜けている!スキだらけだ!

その隙を突かれたらどうする気だ!

第一彼らには湧かない、そんな感情って、どんな感情だ!!」



ルイがさりげに僕をディスった。僕を馬鹿にした。

喧嘩を売られたら、買うしか無いだろう。

間が抜けているなんて、丁寧な言い回しされたけどな



「マヌケで悪かったなぁ!!

隙を突かれた所で何もさせやしないよ!

そんな感情ってどんなって!!

好きって感情しか無いじゃん…………!……よ」




はー………………うん。

ルイよ……さすがは魔族を統べ頂点に立つ器の男。

……お前は正しい。



僕は大マヌケでしたー!!

あああああ!!簡単に口車に乗せられて!

何で自ら告ったみたいになってんの!!

ルイにだけ隙を見せて気を許して、ルイにだけ好きって感情を持っているって暴露したみたいな…!

違う、違うんだ!



「間が抜けているし、やはり隙だらけだな。」



ハイ、ですよね!ですよね!

両手で顔を覆った僕は、ぷるぷるしながらベッドの上でダンゴムシみたいに身体を小さく丸めて転がった。

恥ずかし過ぎて、手をどかせん!



「先にお前を好きだと言ったのは私だ。

…………受け入れてくれたと思って良いのか?」



「いやっ、駄目じゃん!僕、オスのワッパだよ!?

人間の男で、ガキは無理だって……」



僕の両手がルイに持たれて覆っていた顔から剥がされた。

真っ赤になった僕の顔が、ルイの前に晒される。



「受け入れない理由はそれだけか。

お前自身が私を拒まないのであれば、何の障害にもならん。」



「ぅ…わ………ま………」



ルイの顔が近付く。

明るい部屋の中、昨夜よりはっきりと近付くルイの顔が見える。

優しく細められたルイの、深紅の瞳に映る僕の情けない顔が見える程に。

顔を傾け、ルイの唇が僕の唇に重ねられた。

触れる様に重ねられた昨夜より、少しだけ強く押し付ける様に。

ルイに握られた両手の指に力が入って、ルイの手にクンと爪を立てた。

ルイの手が呼応するように、強く僕の手を握り返して唇が離れる。



「っは……は…ぁ……はぁ………」



止めていた呼吸を始める。

脱力してふにゃふにゃになった僕の身体をルイがベッドに寝かせた。



「私も……身体の芯が震えている。

お前の隣で温もりを感じながら横になりたい位だが、そうはいくまい。

夜に備えて夕方まで休むが良いだろう。」



ルイは、ぐったりした僕を残して部屋を出て行った。

……な……な…………な…………!


感情がぐちゃぐちゃで追い付かない!

何なんだよ!もう!!


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