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愛され美少年で悪役令嬢の弟の僕、前世はヒロインやってました  作者: DAKUNちょめ


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43話◆学園見学と四人の攻略対象者。

学園の校舎脇にある大木の枝の上で、空を翔けてゆくユニコーンの尻を見送った僕は、そのまま何事も無かったように姉様とシグレンの所に戻った。


戻ったら授業が終わり休憩時間になっており、義兄のクリストファー変態王太子と、ゲイムーア伯爵家子息のグラハムがおり………。


「「アヴニール!!!」」


「いやです。」


二人同時に両手を拡げて僕を抱き締めに来ようとしたので、ニッコリ笑って素早くシグレンを盾にして彼の後ろに隠れた。

シグレンも、僕達の関係をよく分かってくれているので、笑いながらも背後の僕を庇い、見事なディフェンスを見せてくれている。


「ハッハッハ、殿下もグラハム様も大概に。

アヴニール様はお疲れのようですので、お触りは禁止です。」


学園関係者ではなく、クリストファー義兄様の従者であるシグレンは本来なら学園の校舎には入れない。

今回はシグレンが王族に仕える者である事と、今日の見学が王太子殿下の婚約者と幼い少年である事から、特別に護衛も兼ねての僕達の校舎案内役となった。


いやぁ助かったよ。

シグレンって護衛が居てくれて。

シグレンの背に隠れている僕の背後から、突然明るい声で名を呼ばれた。


「アヴニール!!」


もう一人、厄介なのキタ。うへー。


「……様、ご機嫌麗しゅうございます……。」


リュースと、その後ろにニコラウスが居る。

リュースは僕の姿を見て喜びの余り、思わず普段のテンションで声を掛けたはいいが、貴族でも無いリュースが侯爵家子息の僕を呼び捨てには出来ない事を思い出して言い直した。

しおしおと花がしおれる様にテンションが下がり、素を隠した穏やかな司祭リュースの顔になってゆく。

つか、僕たちは面識が無い設定なハズだろう?

今さら取り繕ってもなぁ…。


リュースの後ろではニコラウスが額に手を当てている。

それ、あちゃ~って顔だよね。

ニコラウスはリュースに比べ、冷静でいられた様だ。


今日は侯爵家の者と、その縁ある者のみが学園を見学出来る日。

貴族ではないリュースは本来、今日ここには来れないのだがニコラウスの計らいにより来れたようだ。


まぁ一応は大聖堂の大司祭の息子だし、本人も司祭の肩書きあるし認められたのだろうけど…。


「リュース、ニコラウス、君たちも来ていたのか!」


クリストファー義兄様がパアッと明るい顔をして二人に歩み寄った。


ゲームでは、国王陛下と側近達は仲良し昔馴染み設定。

よって、息子達とゆーか学園内の攻略対象者たちも顔馴染み、幼馴染み設定。


よくよく考えたら、仲良しこよし的な顔馴染み同士に一人の女を奪い合わせるっつー事をやらせるこのゲームは、中々に愛憎ドロドロな内容ではないだろうか。


「殿下、お久しぶりでございます。」


リュースとニコラウスがクリストファー義兄様に同時に頭を下げて挨拶をする。

顔馴染みとはいえ、その辺は分をわきまえているようだ。

二人はグラハムにも軽く頭を下げ、グラハムは右手をスッと上げて挨拶を返した。

爵位は侯爵家のニコラウスの方が伯爵家のグラハムより上だが、グラハムの方が何だか偉そう。

ここはお兄ちゃんに頭の上がらない弟分みたいな感じなのだろうか。


まぁ…一番厄介な奴が、年齢的にも地位的にも一番偉い奴なワケで…。

その厄介な奴が微笑んでいるのがコワ。


「うん、二人とも元気そうで何よりだ。

久しぶりに会ったんだ。話したい事がたくさんある。

特に……なぜ、リュースが私の可愛い義弟と名を呼び捨てに出来る程の知り合いなのか。

その辺りを詳しく聞かせて貰いたい。」



うっわぁあ!!めんどくせぇ!!

クリストファー王太子、めんどくせぇ男だな!


深夜の大聖堂に毎週通ってるから仲良しだなんて言えん!

あそこの研究所の存在は限られた者にしか知らされていない。

だから、クリス義兄様にも話すワケにはいかないし…

かと言って、普段は邸の外に出て自由に歩き回る事も出来ない貴族の坊っちゃんの僕が、一人で勝手に大聖堂に行ったってのも「どうやって?」ってなるし……。


もう、誰にどこまで僕の力の事をバラしたのかも分からなくなっている…。

僕、実は大司教サマの命の恩人なんでとか、下手な事は言えない…。


リュースもニコラウスもクリス義兄様に対しての上手い言い訳が浮かばず、後は任せた!風な顔をして僕を見ている。

しかたない…ここは中身が大人な僕がちゃんと理にかなった説明を……。


「ぼっ……くが……従者のルイを連れて……ローズウッド家御用達の菓子店に……行きました所……

街に来たついでにルイが大聖堂に立ち寄って女神様に祈りを捧げたいと……

従者のルイは、その…熱心な女神様の信者なので……

その際、リュース司祭と知り合いに……」


すまん…ルイ!!

とっさの言い訳とはいえ、魔王のお前を女神の信者にしてしまって!

しかも説明がグダグダだし!!


僕は自分の間の抜けた言い訳に自己嫌悪に陥った。

くっそ、今日一日なんて日だ!

ユニコーンにはバーカって言われたし、バカの義兄様にはワケの分からん説明をする羽目になるし!


「詮索はもう良いではありませんか、殿下。

あまり器の小さい所ばかり見せておりますと、アヴニールに嫌われてしまいますわよ。」


姉様が困ったような笑顔でクスクスと楽しそうに笑いながら言えば、クリストファー義兄様もハッ!と確認するように僕の方を見た。


「そ、そうだな…すまない、アヴニール。

そしてリュースもニコラウスも…久しぶりに会ったのに…。」


姉様の鶴の一声により、その場はとりあえず和んだ。


グラハムと姉様は既に文通相手としても仲が良く、その場を丸く収めた姉様にグラハムが「さすがだ!」と言わんばかりに頷いた。

確かに、姉様のお陰で助かった…。

さすがです、姉様!

もう、姉様がこの世の女神でいいんじゃない?



この時、王太子殿下の婚約者である姉様を一目見ようと、少し距離を置いて多くの在校生が集まり野次馬となっていたが、彼らには小さな僕の存在が謎のようだった。


来年度から学園に中等部が出来る事は知っていても、まさか小さい僕が入学するとは思ってもいないのだろう。


でもまぁ僕と姉様が、王太子であるクリストファー義兄様の身内とも言える関係だと印象付けられたのは良かったかも。







「で、その後はみんなで学園のカフェテリアに行き、軽くお茶をして解散したんだけど…

成り行きとはいえルイを女神の信者にしてしまって悪かったなぁと。」


邸に戻った僕は自室にて休憩用の大きな椅子に腰掛け、足をプラプラさせながら、愚痴るようにルイに今日一日の話を始めた。

ユニコーンの事はまだ言えてない…。


「女神の信者を名乗るくらい別に大した事ではない。

私はお前の父親と共に城へ行き、来年学園に従者として行くにあたっての確認作業をさせられた。」


僕の部屋の中でドアに背を寄り掛からせる様にして腕を組んで立つルイが僕の愚痴に返す様に、自分の今日一日を話し始めた。


「確認?何の」


「戸籍の確認や系譜、経歴、犯罪歴などを調べたようだな。

学園の敷地内に入れて良い者か判断するためらしい。」



魔王に戸籍確認とか犯罪歴とか聞くってなぁ。

まぁルイの事だから、父上がルイを遠い親戚だとか言って受け入れたように経歴詐称くらい全部上手くやっちゃったんだろう。


「とりあえずルイが

『魔王の我を倒すだと!愚かな人間どもめ!』

とか言ってお城で暴れなくて良かったよ。」


「そんな馬鹿な真似はせん。

だが、魔王を討つと言うからには王城では私の情報を集めるなり何かしらの準備をしているかもとは思っていたが…

特に何も無かったな。」


「うーん、この時期の魔王の存在って、あやふやなんだよね。

まだ魔王は復活してなかったし、一般の人達は魔王って存在すら知らない状態だし…。」


僕はポロッとゲームの内容を口にした。

ゲームでは、魔王の存在が確かなものとして現れて来るのはヒロインが学園から攻略対象者と共に旅に出る前あたり。

入学当初はヒロインも魔王の存在など知らず、


━━今日からドキドキワクワクの学園生活よ!

恋も魔法も勉強も頑張っちゃう!━━


と、ごくごく普通の少女的なスタンスだった。

それが段々と魔王の存在が明らかになり、倒せるのは伝説の乙女、その乙女は自分でした━━がゲームの本筋。


前世でヒロインに転生した僕はゲームの内容を知っていたので、転生した当初から魔王との最終決戦が控えている事も知っており、それに備えてレベルも攻撃手段も最初からガン上げしたワケだが…。


この世界の今の時点では、僕とアカネちゃんを除けば魔王復活の兆しを知っているのは国王陛下とその側近、その他ごく僅かな協力者のみ。

とはいえ、魔王を倒す為に国が兵器を作るとか強い魔法を編み出すとか、具体的に何かをしていたって設定は無かったような…。



「そうか。人間どもは存在が不確かな魔王の事はさておき、こちらを魔王より先に倒すべき敵だと認識したのか。

王城は今、魔王よりもこちらの情報を集めるのに躍起になっていたぞ。


邪神━━と呼ばれるものを。」



魔王の口から邪神なんて名前を聞く事になるとは思わなかった。

て言うか……そもそも邪神なんてモンは、ゲームの中にも前世でヒロインだった時代にも、まったく出なかった存在で、僕もアヴニールとして生まれた今生で初めて聞いたのだが。


「最近聞くようになったんだよ、ソレ。

ルイは…邪神てのが何か知ってる?」


「いや……知らん。知らんが放ってはおけまい。

魔王を凌駕する悪神とまで言われているようだからな。」


そうなんだけど……その邪神てのが本当に存在するかすら分からないんだよな。

そういうモノを崇める邪神教団らしきものが悪さをしてるってのが今の現状。

結局、今この世で一番悪い奴を探したら、その教団のトップって事になるし…。


「でもさーこれで、暫くは魔王様も安泰じゃないの?

討伐される心配なさげだし、アカネちゃんの事も気にしなくていっ…。」


僕が深く腰掛け足をプラプラさせている椅子の肘掛け部分に両手を置いたルイが、上から僕を覗き込む様にズイっと身を乗り出して来た。

小さな僕は椅子の檻に閉じ込められた状態になり、ルイを見上げたまま身動きが取れなくなる。


「ルイ!近い!近過ぎる!何なんだ!ウザいぞ!」


意識し過ぎてルイを相手に騒ぎまくる僕は、壁の隅に追いやられた子猫が大型犬に向かってシャー!とか威嚇しているような絵面になってるっぽい。


ルイの顔が下りるように近付いて来る。

ま、ま、まさか、またキスとか無いよな!?

いや、あれは救命措置だったからキスではないし!

人口呼吸みたいなモノだもん。



とか女主人公特有の、鈍感カマトト少女のフリをしていたけどさ!!

尻ユニコーンの態度から分かったよ。

口付けでの解呪はアリだけど、数回口付けする必要はナシとかさ!

だから僕、怖くて好感度のステータス見れてないんだよね。

ヤダよ、元ヒロインとはいえ現在は少年の僕に対して魔王の好感度がMAXだとか!


「ちょ…!待て!ル、ルイ!ちかっ離れ………!」


ルイの顔が僕の顔の間近まで降りて来た。


僕は目をつむり口をギュッと結んで、ルイからの攻撃から防御するようにうつむいた。


頬にルイの唇が触れそうな程に近付き、スッと耳元で囁かれる。


「ジェノのニオイが残っている。奴に会ったのか?」


「……ジェノ?白い人……?……あ…会った……。」


僕の答えを聞いたルイは、スッと僕から身体を離して椅子の前に立った。

檻から解放されたが、椅子の上の僕は汗だくでグッタリしている。

腰が抜けるかと思った……。


「奴は私の忠実なる部下だが、私を尊び過ぎるがゆえにお前を敵対視している。

危険な目に合わされるかも知れん。奴には近付くな。

……隙だらけじゃないか。

……そんな獣のニオイが残る程に奴を近付かせるとは。」


部下の説明が説教になり、最後は不満を口にしたルイの表情が段々と不機嫌になっていく。

いやぁ…いやぁ〜…それ、僕が悪いの?


「し、仕方ないじゃん、人型の魔物だと思っていたら、いきなりユニコーンになってて……

処女のいいニオイがするとかキモい事を言われて…。」


ルイがあからさまにピクッと反応した。

久しぶりに魔王の圧を僕に向かって出して来やがる。


「だから隙だらけだと言ってるんだ!

どんな強者でも一瞬の気の緩みから命を落とす事だってあるのだと教えたであろうが!

匂いを嗅がせ、奴のニオイが残るほど距離を詰めさせるとは何事だと言っている!」


あああ!ルイが魔王モード……

いや、これは鬼師匠モードに!

それに…ひょっとしたら…いや、ひょっとしなくても…


嫉妬……されてます?


「たるんでいるようだなアヴニール…。

学園に入る迄に、さらに厳しく教えねばならん様だ。」


「ぼ、僕、これでもルイ以外には敗けない位に強いんだけど!人類最強なんだけど!」


ねえ!聞いてる!?魔王サマ!!




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