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愛され美少年で悪役令嬢の弟の僕、前世はヒロインやってました  作者: DAKUNちょめ


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22/96

22話◆本来ならばイベントで入手、『あの指輪』。

「アヴニール、大変…申し訳ありません。」


深夜の大聖堂の地下研究所に数日ぶりに来た僕に、リュースがいきなり謝罪をしてきた。

いきなり何事?


「僕に謝る様な何かを、やらかしちゃったの?」


「許して貰えますでしょうか…。」


「まだ聞いてないけど、内容にもよる。

内容次第では、もうリュースとは友達やめる。」


僕は半分冗談のつもりで言ったのだが、リュースにはかなりこたえたらしく、この世の終わりみたいな顔になった。

真っ青になって、小刻みに震えて目が潤んでいる。


僕に絶交って言われた位でそんなん?

ちょっと…いや、かなり重いぞリュース。


僕の定位置の椅子の隣りの席で、魔法書を開いているニコラウスが片肘を机についてハァッと溜め息をついた。


「アヴニール、こいつアヴニールから貰った指輪を壊されて、こんな風になってんだよ。」


言い淀むリュースの代わりにニコラウスが言ってしまえば、リュースが焦った様に、指輪を外した自身の指を隠した。


「ニコラウス!勝手に言わないで下さい!まだ心の準備が!」


「ンなもん、いるか!鬱陶しいから、さっさと言ってしまえよ!

だいたい、ソレはお前に非があるんじゃないだろ!

アカネが無理矢理奪おうとして引きちぎられ掛けたんだから!」


「……引きちぎ……ええー?」


また出た。傍若無人のヒロイン、アカネ嬢。


アイテムを貢いで親密度を上げたいってのは分かるよ。

そういうゲームだったからね。

でも、リュースの私物を欲しがって奪おうとするなんて…リュース推し?


いや彼女はみんな大好き、ハーレム狙いなハズ。


僕はリュースから渡された壊れた指輪を手の上で転がしながら、ふと思い出した。


「………あ、そっか気付いたんだ。」


この指輪が、ゲーム中盤以降に少し難易度の高いイベントをクリアしたら手に入る『あの指輪』だと。

この指輪は、クリストファー王子にプレゼントとして渡せば、王子からの好感度をガン上げして、親密度がかなり高くなる。


クリストファー王子狙いでなかったら、やらなくてもいいイベントだし、ヒロインのレベルがかなり上がったら、後からいくらでも普通に自作で量産出来るっつー有り難いんだか、有り難くないんだかな指輪。


後々の話だが、ヒロインがこれを作れる様になる事は知ってるのだろうか?

知っていたら、自分以外に転生者がいると気付くかも知れない。

だって、既に2個あるしな。


僕が転生者とバレる。それはそれで面倒な話だ。


「ねぇ、リュース、ニコラウス。そのご令嬢に、この指輪の出所を聞かれても絶対に言わないでね。

言ったら絶交。」


「お前なぁ!イチイチ絶交なんて、聞きたくも無い言葉を言うんじゃねぇよ!性格悪いな!」


魔法書をバンっと閉じ、その表紙を手の平で強く叩いて椅子から立ち上がったニコラウスが苛立つように言った。


「性格悪い子供となら、絶交したって構わないとは思わないんだ?」


「「思わないよ!!アヴニールと絶交は絶対にイヤだ!!」」


リュースとニコラウスがキレイにハモった。

そんな必死の形相で訴えなくとも。冗談なんだから。





指輪は僕がチョチョイと簡単に直した。

簡単な造りに見えたのでリュースが修理を試みたが、全く手が出せなかったらしい。


よく考えたら、この指輪はこの世界ではアーティファクト扱いで、この時期には『世界に1つしかない』お宝なハズ。

だからこそ、イベントを経て入手してからの、クリストファー王子に渡すと好感度が上がるって事なんだけど。


その世界に1つしかないお宝は、魔王を倒せるまでになったヒロインなら作れる。


だから、前世ヒロインステータスを持ってる僕は作れるけど、アカネはまだ作れない。


「アカネ嬢が私の指輪を奪おうとした時に

『こんな時期に、その指輪があるなんて!それ、譲ってくれませんか!?』

と言ったのです。」


あ、やっぱり指輪がイベント絡みのアーティファクトだと気付いたんだな。

そこで、なぜリュースが今、持っている?と疑問に思う前に「くれ!」ってなったんだ。

考えるより先に行動って、どんだけガツガツしてんの。


つか入手出来たとして、今クリストファー王子に見せたって「はぁ?ナニソレ」で終わるんだけど。


「私はアカネ嬢が、アヴニールが作ったこの指輪の存在を知ってる事に驚きました。

しかもそれは今ではなく、未来でならば存在するかのような口ぶり。

そして、それを作れてしまえるアヴニール……神の御業に等しい…」


リュースが頬を染めて僕を見たので、ガン無視してやった。

ニコラウスも同じ様にリュースをガン無視している。

僕とニコラウスのリュースに対する共通の見解。


━━ハァハァ言ってるリュースはビョウキ持ちの可哀想なコなんです。━━




クリストファー義兄様とグラハム様が学園に入学して約4ヶ月。


学園は夏季休暇に入った。


クリストファー義兄様は、学園を出るなり王城より先にローズウッド侯爵邸に訪れた。

グラハムまで引き連れて。いや、纏わり付かれて。


予想内、想定内だったよ義兄様。誰の目からもな。


「クリストファー!!このバカ息子が!!」


「ちっ父上!?」


だもんで、我が家には国王陛下が、護衛のゲイムーア伯爵と共に先に来ていた。


「クリス!学園を出て迎えの馬車を振り切り、逃げる様に馬を駆らせて真っ直ぐローズウッド侯爵家に来るとは、どういう事だ!!」


「わ、私は愛しの婚約者シャルロットに会いたい一心で!」


「お前もだ!グラハム!!

殿下を止める立場のお前が、一緒になってこんな愚行を!」


「いや、俺はシャルロット嬢に、エイミーの世話になった礼を言わなきゃと…。」


王都のローズウッド侯爵邸の庭は、山際にある本邸よりは手狭だが、それでも茶会を開けるだけの広い庭がある。


その庭のテーブルでは、姉様とエイミー嬢がお茶を飲みながらクリストファー王太子やグラハムが父親に叱られる姿を楽しそうに見ている。


「まあまあ…久しぶりに会えた親子ではありませんか。

陛下も、ゲイムーア様も、御茶をお飲みになって下さいまし。」


慈母の様な微笑みを浮かべて母様が侍女に言い、陛下達の分のカップに茶を用意した。


我が家の庭が、正式な先触れも無くいきなり高貴な方々のお茶会の場に……しかもグダグダでカオスな状態だ。


「私とてなぁ!婚約者のシャルロット嬢の事を愛しく思うあまり、城に帰るより先に婚約者に会いに来たと言えば、まぁ分からんでもないと思ったがなぁ!

なんで、お前は嫌がるアヴニールを無理矢理膝に座らせてるのか!お前の行動が分からん!いや、分かりたくない!」


陛下は茶の入ったカップを片手に、もう一方の手でテーブルをバンバン叩きながら突っ伏していた。


居酒屋で酔っ払ってくだを巻くオッサンみたいだ。

ですが、そんな陛下と僕も同意見でございます。

ここが居酒屋なら、ビールを注いで「分かる」と肩を叩いてやりたい位だ。



なぜ僕は、殿下の膝に座らされて逃げれなくなっちゃってんのか。

両腕がヘソの前でガッチリとロックされており、僕の肩にはクリストファー義兄様の顎が乗ってる。


息づかいが近っ。クンクンと犬みたいにニオイかぐなや。


「4ヶ月も我慢していたんですよ!?

アヴニール成分が枯渇しかけているんです!チャージが必要なんですよ!」


そんな事を力説すんなや。バカ王子め。



僕が前世でヒロインやっていた時の悪役令嬢姉様は嫉妬心が強いあまりに、殿下と二人きりになるだけで「キィー!」なんて、現実で初めて聞いた叫びを披露して下さって、二人の間に割って入って邪魔をしていたけど…。


今の姉様は、微笑ましい光景でも見る様にクスクス笑って僕達を見てるだけ。

むしろ、キィー!って割って入って僕達を離れさせて欲しい…。


「アヴニール…我慢してあげてね。」


姉様が苦笑して囁いた。


「………姉様が言うなら。」


この過剰スキンシップ…。ゾワゾワするけど我慢してやろう。

殿下は夏季休暇中も忙しい。


学園で学んだ魔法や剣の精度や練度を上げる復習、訓練は毎日欠かせないし、社交や外交も王太子殿下の仕事の一部だ。

王城に戻れば夏季休暇中とは言え、次期国王として学ぶ事も多い。


ゆっくり休んで楽しく遊んでなんて、実際には中々出来ないものなのだから。

だから、そんな大変な毎日を嫌な顔ひとつせずにこなしていく義兄様は立派だし、尊敬してる。

だから…ハグも我慢するよ。




数時間後、国王陛下一行がローズウッド侯爵邸から王城に帰る時間となった。

クリストファー義兄様は国王陛下の乗ってきた馬車に乗り、一緒に帰るとの事。


僕はクリストファー義兄様が馬車に乗り込む直前に、リュースとニコラウスに渡したのと同じ指輪をクリストファー義兄様に渡した。


「義兄様にプレゼントです。これ、僕が作った指輪です。

でも、僕が作った事は誰にも言わないで下さいね。」


「アヴニール……なぜ、これを私に?」


僕は…姉様にはクリストファー王子と添い遂げて、幸せになって欲しいと思っている。

そのためにはヒロインが邪魔で、ヒロインの手からこの指輪がクリストファー王子に渡されてヒロインへの好感度が上がるのは避けたい。

だから先に渡しておく事にした。

同じアイテム、2個目以降は効果が低くなるから。



と、言う説明をした所で分かりゃしないので


「なぜって、それは僕の大切な人の幸せの為です。

シャル……ぐぇ!!」


満面の笑みを浮かべて答えている途中の僕が、クリストファー義兄様に正面から強く抱き締められた。


「私も…私もアヴニールが大切だ!!大事にする…!君からの愛の証を…!!」


違うわ!!!!愛の証なワケねー!


ちょっ…ちょっと!!強く抱き締められ過ぎて言葉が出ない!

大切な人は姉様!シャルロット姉様だってば!!


「あらあら、うふふ。楽しそうね。」


ね、姉様!?なんで笑ってんの!?楽しいワケ無いじゃん!

そこはもう、かつての悪役令嬢らしく邪魔してくんないかな!


「アヴニール……たらし込むのはやめなさい。」


父様もボソッと文句言うだけで、止めてくんないの!?

不敬にあたるから殿下を引き剥がせないのかな!?


誰か助けてくれないかな!

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