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1話◆ハーレムルート確約ヒロインは真っ平御免!

突然ですが、わたしは生前プレイしていた乙女ゲームの世界に転生しております。


この世界に主人公であるヒロインとして転生させられたわたしは、まだクリアしていなかったこのゲームの世界を、ただがむしゃらに走りまくりました。


何が正しいルートなのか分からないけれど、乙女ゲーム要素を兼ねたRPGのこのゲームは、最終的には選んだパートナーと魔王を倒して平和になった世界で結ばれてハッピーエンドとなるハズです。


主人公のヒロイン、つまりわたしのステータスやスキルはパートナーの持つスキルや属性に影響を受けます。


だから強さを求め走り回った結果、ハーレムルートが確約されてしまいました。


そしてわたしは今、パートナー(?)となった5人と共に魔王討伐に向かう前に女神が与えた『最期の試練』を受けているのですが……。





『さぁ、未来よ!これが最期の試練です!

魔王の欠片である、そのドラゴンを倒して魔王を倒せる力を望むのです!』


何かキラッキラに光る女神様らしき人が、何か言ってます。


わたしは剣を手に持ち、目の前に居る巨大な漆黒のドラゴンと闘っているんですが……


「未来!さあ私の隣に!君を護るのは私の役目だ!」


「未来、大丈夫ですか?ああ小さな傷が…私が貴女を癒やします!」


「未来!俺が盾になるからヤツに近付くぞ!ついて来い!」


「はぁ!馬鹿じゃないの!?

未来をあんな危ない場所に近付かせるなんて!

僕が魔法を使うよ!」


「その通りだ。

未来、我々があやつを仕留めるまで君はそこで……

ただ、微笑んで居てくれれば良いのだ。」




━━………うっざ………━━



優しく微笑みながら愛しそうにわたしを見詰める美形男子5人の眼差しが……


ごめんなさい、今のわたしにはとても鬱陶しい。


わたしは、5人を無視して1人でドラゴンに突っ込みました。

レベル99のわたしには、レベル45のドラゴンなんて目じゃないですもの。


純粋に乙女ゲームをメインで楽しみたい人の為なのか、このゲームではヒロインのレベルが35もあればクリア出来るらしいし。


この世界がゲームの中では無く現実世界となった今、人や魔物のステータスが見れなくなったので、実際どれ程の力量の差があるのか分からないのだけれど。



杞憂だったわ。

わたしの一撃でドラゴンは破れ去りました。はい。

わたしの背後で、わたし至上主義のイケメン達の歓声があがります。


ハッキリ言って、うるさい。うざい。もうヤダ。

こいつらと結ばれる?5人ともと?どうやって?

結婚なんて無理じゃない?じゃあナニ。愛人?

冗談じゃないんですけど!


ドラゴンが断末魔をあげ身体が崩れていくのを見ているわたしの後ろで女神様が何か言ってるけど、それどころじゃないのよ!

もう、我慢の限界!


『今です!貴女の願いを唱えるのです!

魔王を倒す力が欲しいと……』


「あーッッ!!もう、ヒロインなんて、コリゴリだわ!!

こんなの、もう、やめたい!」



━━━━━━━━キィィン━━━━━━━━



耳をつんざく様な高い音が鳴った。

そして、世界が真っ黒に……ブラックアウト?


わたし…何かやらかしたのかしら?

真っ黒になった世界には、わたしとわたしに背を向けた女神様だけが残された。


「……あの……わたし、何かしちゃいました?」


剣を片手に持ったわたしが、ヘラっと誤魔化すように笑いを浮かべて首を傾げてみた。


『……………何かしちゃいました……だぁ?

この……腐れビッチが!!』


わたしに背を向けていた女神様が振り返った。


もう、その表情ったらコッワ!

その顔もう女神じゃない、鬼ババァだよ!!


『あそこはなぁ!!魔王を倒す力が欲しいの一択だったんだよ!

何でまったく関係ない願いを口にしちゃってるワケ!?アンタ!

大勢たらし込んだ、この腐れビッチが!!』


「腐れビッチって、ひどっ!!

魔王を倒す為に強くなりたいと行動した結果がコレです!

別にハーレムエンド目指していたワケでも無いですし!」


このゲームをクリアした事が無いから良く分からないのだけれど、ぶっちゃけると今の自分なら魔王も倒せてしまいそうな気がする。


『……こんな事になるなんて思わなかったわよ…。

ヒロインに魔王を倒す最期の力を受け取らせるのが私の役目だったのに…。』


わたしの目の前で鬼ババァ……

いえ、女神様が頭を抱えていらっしゃる。


ゲームならばリセットボタンを押して、セーブした所からやり直し出来るんだけどね。

いや、ゲームの世界なんだから出来たりしないのかな?


『そうリセット!アンタはね、リセットしちゃったのよ。

この世界の、アンタの人生を。』


わたしの考えを読み取ったのか、鬼ババァ女神がわたしを指差して言った。


『人の人生にセーブなんて、ある訳無いでしょ?

こうなったらもう、末端女神の私にもどうなるのか分からんわ。

私より上位の神がアンタの願いを聞き届けたみたいだし。

だからもう、私の手には負えないもの。』


「えっ!?ちょっと待って!人生をリセット?

じゃあ、わたし元の世界に帰れるの?」


『元の世界?

アンタが言う元の世界がどこだか知らないけど、もう私には何も分からないから。お達者で。』


年寄りみたいな口調の鬼ババァ女神が黒い世界から姿を消すと、わたしの身体が暗闇に浸食される様にジワジワと消えてゆく。


苦痛は全く無い。

無いんだけれど………ただただ


「気持ち悪いぃい!!わたしが消えるぅぅ!!!」



元の世界に戻れないなら、わたしは次に何処に向かうの?



「まぁ!可愛い!!これが、わたくしの弟ですの!?」


「そうよ、弟のアヴニールよ。可愛がってあげてね。」


視界が暗くて場所を把握出来ない。

目を開く事が出来ないし、話す事も出来ないんだけれど…。

わたしの前に居る、大人の女性と幼い女の子の会話が耳に入る。


この会話と、柔らかくて温かい布にくるまれて大事に扱われているらしい自分。


うん!確定!

わたし、アヴニールって名前の赤ん坊になってるわ!

しかも男だし!


「はい!お母様!たくさん可愛いがりますわ!」


見えないけど、小さな女の子がわたしの手に自分の指を握らせている。

キラキラとした、宝物を見詰める様な愛しさを含んだ眼差しを感じる。

生まれたばかりの赤ん坊の自分が思うのも何だけれど…。

何だか、すごく可愛いお姉さんなんだなぁ。ほっこり。

やがて母親が、少女の腕にわたしを渡して抱かせると、少女が弾んだ声で自己紹介を始めた。


「アヴニール、はじめまして!

わたくしシャルロット・ローズウッドがあなたのお姉様よ!」


━━なんだと!?━━


生まれたばかりだけど、めっちゃ無理矢理まぶた開いた。

わたしを抱く小さな少女、いや幼女をガン見した。


ああ……!何て、可愛らしい女の子なんだろう。

アヤメの様に濃い紫色の美しい髪に、空の様に澄んだ明るい青の瞳。


そうだ。間違い無い。わたしの姉である、この美少女は

前世ではヒロインだったわたしに何かと突っかかってきていた恋敵。

悪役令嬢シャルロットだ。


ゲームの中では主人公であるヒロインに嫌がらせやイベントの邪魔をしてきて…

ヒロインに転生した前世でも、何かとイチャモンつけて来ていたわね。軽くシカトしていたけど。


そうだ、彼女は攻略対象の1人であるクリストファー王太子の婚約者だった侯爵令嬢のシャルロット。


そう言えば、二人は幼い頃からの婚約者って設定だったけど…

この、ちんまい美少女シャルロットに婚約者なんて居るのだろうか?


「奥様、クリストファー王太子殿下が、奥様のお見舞いをなさりたいとおっしゃっておいでです。」


「まぁ、殿下が。いいわ、お通しして。」


わたしは小さなシャルロットの手から、ベッドに居る美しい女性の腕に渡された。

シャルロットと同じく紫色の髪の美女。

ゲームでは存在さえ語られなかったけど悪役令嬢の母で、ローズウッド侯爵夫人。


そして、侍女に案内されて部屋に入って来た銀髪に青い瞳の紳士が父のローズウッド侯爵。


「よく頑張ってくれた、ありがとうエリー。

さぁ殿下、こちらがシャルロットの弟で、やがて殿下の義弟となりますアヴニールにございます。」


義弟…やはりシャルロットとクリストファーは婚約済みなんだ。

この、母の腕に抱かれているわたしをガン見している金髪に青い瞳の幼い美少年が………


クリストファー王太子だ。

わたしの記憶では、つい数時間前まで女神の試練に一緒に居たのよね…。


「未来!さあ、私の隣に!君を護るのは私の役目だ!」


ってドラゴンの前で言ってた。

ごめん、ウザかったんで無視して早々に倒しちゃったけど。



「クリストファー殿下、わたくしの弟のアヴニールですわ。」


可愛い弟を誇らしげに紹介する小さなシャルロットと、生まれたばかりの赤ん坊のわたしを興味津々に見詰める幼い美少年のクリストファーは、中身が25歳のわたしにとってはただただ可愛い子供だ。

微笑ましくて思わず笑みが込み上げる。



「侯爵、この子を僕にくれないか!」



突然のクリストファーの発言に、部屋に居る全員が固まった。


「……殿下、アヴニール様はローズウッド侯爵様の嫡男に御座います。

可愛らしいからと言って、手に入るものでは御座いません。」


クリストファーのお付きの方がやんわりとした言い方で止めたけど、本当ならば犬や猫と一緒にすんなと言いたいんだろうな。

侯爵に対しても失礼になるから言えないだろうけど。


「はは…殿下、我が息子を気に入って戴き誠に光栄ではありますが、アヴニールは大切な家族です。

お譲りする事は出来ないのですよ。」


少し戸惑いがちに侯爵がクリストファーに優しく言えば、クリストファーはベッドに張り付いたまま侯爵を見上げた。


「僕は将来、この子を妻に迎えたいと思う。」


「何を言ってますの!!わたくしの大切な弟ですのよ!

殿下なんかには、お渡し出来ませんわ!!」


ちょっと、ちょっと待て!

わたし、弟って言われてたよね!?男児だよね!?


何で、いきなり妻扱いなの!?

そいで、お姉ちゃん婚約者の殿下の事を、殿下なんかって言っちゃってる!


「と、とりあえず本日はこれにて、失礼させて戴きましょう!

さぁ殿下!帰りますよ!」


クリストファーをベッドから引き剥がそうとする殿下の付き人。


「イヤだ!アヴニールと一緒に居るんだ!」


「殿下、ごきげんよう!」


早く帰れとばかりに、早々と帰りの挨拶をするシャルロットお姉様。

愛娘の不敬な態度に、侯爵が慌ててオロオロし出す。

わたしを抱いた母は微笑んだまま段々顔が青くなっていく。


生まれて間もない赤ん坊のわたしに、このカオスな状況はツラいわ!処理出来んわ!

文句も言えんし、わたしがダッシュで逃げ去る事も出来んし!


「ぁあんぎゃぁぁ!んぎゃぁあん!ぁぁあんぎゃぁ!」


とりあえず泣いてみる。


一旦、解散しろ!!お前ら!!!


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