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使い魔は見た!の視聴中1

 使い魔の目を借りて情景を見るときは、まるで異界の動画を見るような仕様となる。見たい使い魔が居るならば、その使い魔を思い浮かべればその視界になり、特になければ画面をスクロールする度に違う使い魔の視界になった。

 使い魔の視点なので、見たいものが見れるとも限らないし、場合によっては異界のテレビのような砂嵐になり繋がらない時もある。録画機能も過去にさかのぼる機能もない。王子達は何故かとんでもない能力のように勝手に思っているけど、実をいえばあまり便利ではない能力だと思う。たぶん、暇つぶしとかにしか使い道なんてないんじゃないかな。


「とりあえず誰の視界を借りるのがいいかな」

 ピンポイントで私の危険を探し出すのは難しい。というか、まず無理だと思う。そもそもどんな危険が迫っているのか、そこから分からないのだ。

 王子や公爵令嬢は確実に情報を握っていそうだけれど……うーん。この二人は私がのぞき見できることを知っているので、対策をとられてる可能性が高い。教えてもいいと思っているなら、最初から教えてくれているはずだ。

「とりあえず、【癒しの魔女】の使い魔の視界を借りてみよう」

 【癒しの魔女】は王太子の婚約者で、王子達とは少しだけ立ち位置が違うと私は思っている。彼女が何か情報持っているかどうかは分からないけれど、【癒しの魔女】を追っていれば、王太子も出てくると思うし、二人のプライベートな会話なら、ポロっと何かヒントが出てくるかもしれない。後は、美男美女カップルなので、見ていて私が楽しい。


 早速と視界を繋いだ瞬間、画面の至近距離でドサッと人が倒れた。

「ひっ」

 顔を覆った指の隙間から私は画面を覗く。まさかいきなり、こんな場面に遭遇するとは思わなかった。

 視界が低いので、倒れた人の顔が良く見える。……王太子だ。

 突然のサスペンス劇場にぞわっと鳥肌が立つ。頭をぶつけたのか、たんこぶのようになっているけれど……生きているよね?

 病人のように顔色が悪いのはいつものことなので、死んでいるとも生きているとも判別がつきにくい。血は流れていなさそうだけれど……。

 そんな中、王太子の顔の近くに、真っ赤なヒールが見えた。血色のようなその色の靴を映し出した使い魔は、そのまま顔を持ち上げる。すると王太子を見下ろす【癒しの魔女】が映った。シャンデリアの光の所為で逆光となり彼女の表情は見えない。……ものすごい、サスペンスな空気だ。


「だ、大丈夫だよね?」

 【癒しの魔女】が慌てふためいた様子がないのが、なお怖い。

 何故彼女は無言なのか。きっとそれは、怯えているからではなく、王太子がここに倒れるのを理解しているからなのだろう。

 そんな。まさかの反逆? 下剋上? それとも痴情のもつれによる、殺人事件?! 

 幸いにもCMなどは入らないので、そのまま使い魔の目は王宮で起きたとんでもない事件を映し続ける。

 これは流石に王子に急いで伝えなければいけない案件なのでは? そんな事を考えていると、ドレスを折りたたむようにして、【癒しの魔女】はしゃがみこんだ。そしてまるで脈を診るように王太子の手を握る。


 次の瞬間シャランラ―と王太子の体が光りに包まれ、頭のたんこぶがへっこんだ。

「では、ベッドに移動させて下さいませ」

 【癒しの魔女】が言うと、さっさっと二人の男が王太子を担ぎ上げた。服装を見る限り、王宮で働いている人っぽい。

「ありがとうございます。我々では警戒されてしまい、王太子を昏倒させることができないので。本当に化け物のような体力です」


 王太子を癒した事ではなく昏倒させたことへの礼を言われる【癒しの魔女】に私は呆然とする。……まさか、本当にクーデタ?!

「いえいえ。五撤しても、仕事に齧りついているこの人が悪いのですから、気にしないで下さい。踵落としは令嬢のたしなみですわ」

 踵落としを嗜むのが令嬢の当たり前だなんて初めて聞いた。うん。私は絶対令嬢にはなれない。豚にそんな運動神経はない。


「王太子の能力は本当にえげつないので助かりました」

「【○○しないと出られない部屋】に入れられるとか、本当に怖い」

「以前入れられた同僚が、出てきた後さめざめと泣いていたし。人格というか性癖変わる奴もいるし」

 王太子の能力って、そんなに恐ろしい能力だったのか。というか、性癖……何故、それが変わったことを知ったし。逆に何が彼と同僚の間に起こったか気になる。


 以前【○○しないと出られない部屋】には、王子と入れられた事があるけれど、出る条件が優しくて良かった。

 ……いやいや、そういう話ではなかった。これは見ても問題ない映像なのだろうか? 何だかほのぼのと【癒しの魔女】達が語り合い過ぎて、いまいち状況が分からない。

 【癒しの魔女】が王太子に踵落としをして、癒したという自作自演的な事をしているのだけは分かったけれど。

「まったく。部下をこんなに心配させるとは、困った王子様ですわ。五撤しても仕事とか……過労死は、癒せないというのに」

 あっ。なるほど。これは王太子の寝かしつけのシーンか。

 心配して損した。

 

 でも言っても王太子が聞き入れないが為の結果なのだろうけれど、そこはせめて膝枕で寝かしつけるとか、そういう甘いのが良かったな。

 しかし現実はショッパイ。私は不憫な王太子から目をそらすように、私はそっと使い魔チャンネルを変えた。

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