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飛べた魔女はただの優しい魔女

「か、金と権力?!」

「……間違ってないわね」

「そうだな」

 公爵令嬢の言葉に、魔女は驚きの表情をし、【予言の魔女】と王子は納得といった様子で頷いた。……ここに綺麗な大人はいないらしい。

 まあ私も納得だけど。とりあえず、金と権力がある人達がここにいるし。彼らはある意味自由だ。


「だから私も、商業の才がある人を落として、公爵家の婿養子になってもらう事になしたの。平民だけど事業を成功させて男爵の位を貰った方の息子だから貴族の世情には疎いけれど、そこは私がサポートすればいいし、商人としての嗅覚は素晴らしいわ。あ、というわけで、結婚祝いは奮発してね」

 へぇ。結局あの結婚相談はそう言う形になったのか。にしても結婚祝いをねだるって、強気だなぁ。まあ【予言の魔女】も王子も金持ちだけど――。んん?

 【予言の魔女】とか王子に言っていると思ったら、公爵令嬢は私の方をじっと見ていた。……えっ。私?!

「えっ。ぶ、豚から何か巻き上げるって、心が痛まないんですか?」

 私、金も、権力もない豚なんですけど。

 ぶひぶひと鳴くしか能がないですブヒよ? 


「全然。これっぽっちも。だって【異界渡りの魔女】から何か貰ったって情報だけで一気に箔が付くもの。いつも異界の食べ物くれるじゃない。それでいいわ」

「貴金属やドレスじゃなくて、食べ物で良いんですか?」

 いや食べ物なら別に欲しいと言われれば上げるけど。そんなのでいいのだろうか? 私は食べるのが好きだからいいけど、公爵令嬢はそうではないと思う。……まあ、おやつの強奪がよくあるけど。そう思うと、結構食べるの好きなのか。


「十分よ。それにお金はね、旦那がたんまり持っているもの。でね、後はこの先、【異界渡りの魔女】にはアドバイサーになってもらって、色々な事業展開をしていくといいと思うのよね」

「また勝手に、とらぬ狸の皮算用ですか?!」

 アドバイサーってなんだ。私は保証人とか絶対ならないから。

 豚が人に教えられる事なんてない。

「既にアドバイス貰ってるわよ。締め付けない服の案とか、使い魔で癒される使い魔喫茶とか。ポテチなら再現できそうだから、しょっぱいお菓子を売るのもありね。この間焼き芋にした芋とかも種芋にして芋革命するのもいいわ。ああ。失敗しても、責任なんて取らせないから大丈夫だし、堅苦しい何かをさせるつもりもないわ。ただ、今まで通りお茶会を開いて雑談をしてくれれば十分よ」

 公爵令嬢……恐ろしい子。

 一体いつの間にそんな案がポンポン浮かんでいたのか。私はてっきり公爵令嬢も、没落? したから、やけになって食いしん坊キャラに向かっているのかと思っていた。

 ……あれかな。頭を使うと太りにくいとかあるのかな? だとしたら、私は無理だな。


「幸い魔女や魔法使いは、今は貴族よ。貴族だから権力がまだある。今のうちに色々お金を得るの。ただし平民から絞り上げるのは愚策よ。それこそ更に文明が進めば恨まれて革命が起きるわ。平民だって馬鹿じゃない。だからちゃんと還元もするの。事業を起こしたなら従業員として雇うとかね。それから、ハロウィンを魔女だけのものにするのも時代遅れね。魔女だから偉いの時代は終わったの。特別感なんてゴミ箱に捨ててちょうだい。これからはお祭りでもてなしをして……いいえ、魔女以外の人とも一緒に盛り上げるとかいいわ。魔女が異物だと思われなければ迫害なんてされない。一緒に何かを成し遂げた大切な友人に剣を向けるようなキチガイは、魔女や魔法使いじゃない人からも非難されるものよ」

 金を持ち、権力は手放さない。でも平民にも還元して共感を得ていき、彼らの中に混ざる。……凄いプランだ。すぐにそれを全部達成するのは難しいけれど。でも予言とは違う未来が見える。

 公爵令嬢は……本当に強い。


「というわけで、私だけで全部の事業をするのは無理だから、他の魔女とか、魔法使いにも声をかけて賛同者を増やすわよ。さあ、――。行くわよ! 貴女は魔女の中では顔が広くて、皆の代表としてこういう事をしたんでしょ。だったらその力を私に貸して、違う方向に頑張りなさいよ」

「……貴方は、私の名前知ってるのね」

 どうやら公爵令嬢は魔女の事を知っていたらしい。いや、そう言えば、最初から知り合いの様な感じではあった。

「そりゃね。私も貴女と同類だから。この三人が別格なだけだし、そもそも【異界渡りの魔女】は問題外。王子の名前すら言えない女なんだから」

 それは悪い気もするが、どうしても名前を聞き取れないのだから仕方がない。頑張ればどうにかできるものではないし。そもそも頑張る気もない。でも……あれ? 私は今、公爵令嬢が魔女の名前を言ったという事は認識できたなぁ。珍しい。


「ないものをねだっても仕方がないわ。それよりもこの先どうするかを考える方が大切だと思わない? というわけで、この件はお咎めなしにしてもらえませんか? 王子も【予言の魔女】も、魔女や魔法使いと対立したいわけではないですよね?」

 ……そして私には聞かれないこの仕様。いや。私、この場では一番権力ないんだけどね。

「【異界渡りの魔女】は絶対対立なんて望んでませんよ?」

「いや。なんで私の代弁をするの?!」

 すごく勝手に決めつけられているのが釈然としない。いや、罰を与えろって言われても困るんだけどね。……もしもやるなら、うーん。使い魔お菓子配布所で、無償労働させるぐらいかな? 後はできれば関わりたくない。


「貴方が優しい魔女だって、知ってるからよ」

「私は悪い魔女です」

「悪い魔女が優しい魔女ではいけない理由はないじゃない」

 うーん。そう言われると、そうなのか? どうなんだ?

 良く分からないが、【予言の魔女】も王子も、私が望んでないから、なかったことにすると言っていた。いや。だから、私何も言ってないんだけど。

 皆勝手だなぁ。

 でもこうして、ハロウィンの騒動は決着を迎えた。

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