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飛べた魔女はただのコスプレ中

「ねえ。魔女集会ハロウィンに、何着ていくの?」

 今日も元気だ、パンケーキ旨い。

 ふかふかパンケーキをむしゃむしゃしていると、公爵令嬢がやってきて、パンケーキを一枚強奪された。まあ、いんですけどね。異界からお取り寄せしますから。ちなみに自分で作る案は却下だ。ここまでふわふわなのは素人ではうまく作れない。これぞ巧みの技だ。市販のホットケーキミックスも美味しいんだけど、それはそれだ。



「この格好で行こうかと」

「異界ではその服が流行りなのかもしれないけど明らかに集会で浮くからやめなさいよ」

 私のジャージはこちらの世界にはない衣服だ。そもそも女性がズボンを履くという習慣があまりない。

 これは異界の方が文明が進んでいる為に起こる流行の先取りといえよう。ただし先取り過ぎて、私以外はついて行けてない。流行を作るのは、一歩か二歩ぐらい先を進む人で、すすみ過ぎたらただの変人だというのは分かっているけれど、それはそれだ。私はジャージを愛している!!

 

「別に誰も気にしないと思いますけど。 そもそも、引きこもり専門魔女ですから。何か言われたら即刻引きこもります」

 なので悪口は言ってくれて構わない。言われたらちゃんと場を弁えて、豚小屋に帰るから。家での恰好を覗き見してまで咎める人はいないだろう。

「やめてあげなさいよ。会場が突っ込みたくても突っ込めない混沌と化すじゃない」

「私、悪い魔女なんで」

 周りの迷惑なんて気にしない。

 それに予言の一つや二つ出たぐらいで、手のひら返しが酷いと思うんですよね。やはり悪は、最期までその信念にのっとってこそだと思う。中途半端な悪は美しくない。

 元々皆私に対して色々言っていたのだ。別に今だって言ってくれて構わない。私が引きこもるなんて今更だ。


「面倒な悪い魔女ね。でも私は悪の華だからこそ、美しくなければいけないと思うの」

「えっ。そ、それは、ジャンルが違うと言いますか……。私は悪の華ではなく、悪の豚ですし」

 雲行きが怪しくなって、私はどもった。

 最近の悪役は美貌の主が多すぎて皆勘違いしている。待って。元々の悪役は見た目の美しさなんて求められていなかったはず。生きにくい世の中になったものだ。

「時代は変わったのよ。悪役も目立ってこそなの。美しい悪だからこそ、恐ろしさが際立つの! 異界は違うの?」

「いやー……どうでしょう」

 確かに悪役令嬢は大抵が美しい。でも悪い魔女はどうなのだ? 異界で有名な荒れ〇の魔女とか湯婆〇とか、とっても残念――いや、私よりの外見じゃなかったっけ? なら悪い魔女が子豚でも問題ないのでは?


「まあ、異界がどうでも私には関係ないけどね。というわけで、どういう服にする? 最近の流行りは、一部に自分の使い魔の特徴を盛り込んだものなのよね。でも【異界渡りの魔女】は使い魔がいないでしょ?」

「えっ。私の意見は?」

「貴方の意見、美しくないもの。とにかくその美しくも、可愛らしくもない服は却下よ、却下。でね、折角だから私とお揃いにする?」

「何が折角なのか分かりませんが、嫌です」

 私はNOが言える魔女だ。

 お揃いが嫌というよりも、使い魔の特徴を入れた服というのに抵抗がある。それが今の流行りだというのは分かる。使い魔と仲良くしていきたい魔女や魔法使いが考えた流行なのだから。


 しかし使い魔の特徴を入れた服というのはアレだ。猫耳付けたり、犬耳つけたり、ウサギ耳つけたり、背中に羽を付けたりするのだ。勘弁してほしい。

 ああいうのは似合う人がやるべきものだ。

 ちなみに、公爵令嬢の使い魔の特徴を入れると猫耳となる。……明らかに視界の暴力だ。猫耳豚なんて現れた日には、きっといたたまれない空気が漂う。笑ってはいけない魔女集会に参加する魔女が気の毒すぎる。

 それぐらいなら、まだジャージの方がいいのでは? 少なくとも奇抜ではあるが、お茶を吹きだすほどではない。


「そうなの? ちなみに王子はコルボックルとおそろいの民族服みたいなのを着るそうよ。王子とお揃いにする?」

「止めて下さい」

 可愛らしい子と美形と一緒にペアルックとか軽く死ねる。社会的に死ぬ。

「というか、王子、来るんですか?」

「ええ。餌が良すぎて、思いっきり釣られているわ」

 なんと。王子を釣る事ができる餌ってなんだろう。はっ。


「もしやとうとう、私もお役ごめん――」

「自分の中で誤魔化そうとしている所悪いけど、王子の餌なんて貴方に決まってるでしょ。飼い主なんだから」

「くっ。私の悪事を阻止しに来るのですね。流石は王子。しかし私は使い魔をぷっくぷくにするのを諦めたりしない!!」

「……まあ、いいわ。とにかくちゃんと服考えなさいよね。もう日にちもないんだから。考えておかないと、王子が自分好みの服を用意するわよ」

 ……それはマズイ。どんな嫌がらせの服を用意されるか分かったものではない。似合わなさすぎる服を用意されたら、地獄だ。私は悪い魔女だけれど、相手の視界を不快にするような悪事をする気はない。

 仕方がない。パンケーキもしゃもしゃしながら、私は小道具をどうするか真面目に考える事にした。

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