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独立記念日その2

 翌日の総統府への攻撃は、日の出よりも早く決行された。作戦が功を奏したのか、総統府の兵は想像以上に少なく、抵抗らしい抵抗も見せないまま一方的に蹂躙されていった。

 事前の試算では三~四千程度と予想していたが、ベルデ平原での敗北と援軍の見込みのない状況が、彼らを絶望させ逃亡に走らせた事は想像に難くない。


「ラインクルズを探せ! 奴の首を取るまではこの戦いは終わらんぞ!」


 ホームズの言葉に、反乱軍たちは駆けまわる。そして……、


「ホームズ様! 奥の部屋にてラインクルズ総統らしき人物を発見しました!」

「そうか、どんな様子だ? もう仕留めたのか?」

「それが……」


 ホームズの問いに、兵士は言葉を詰まらせる。

 兵士の案内の元、セネトたちが現場で見たモノ。それは、無数の屍の中に立つラインクルズと、彼を遠巻きに牽制する反乱軍の兵士たちの姿であった。


「何をしている、さっさと畳み掛けろ」

「既に何度もやっています。弓による集中砲火、剣や槍による白兵戦。しかしその全てが総統には通用しないのです。確かに鎧の隙間に当たっているはずなのに、まるで皮膚そのものが岩か何かで出来ているかのように……」

「……魔導器か」


 魔導器にも色々ある。雷を発生させるもの、凍らせるもの、熱を操るもの。ラインクルズの操るそれは、守りに特化したものなのだろう。


「セネト、お前はどう思う?」

「……バリアを発生させているか、体そのものを硬化させているんだと思います。高火力の攻撃で一気に仕留めるのが最適解かと思いますが……」


ラインクルズの防御を突破出来そうなもの、あるにはあるが一つ問題があった。


「なるほど、では先ほどヴィラスさんに頂いた魔導器ならいけるかもしれませんね」


 言い淀む二人を後目に、セリカ本人が名乗りを上げる。


「それはダメだセリカ。君はハーノインが独立した後の君主になるんだから、そんな危険な事をやらせる訳にはいかない」

「でもこのままじゃ兵士さんたちが……」

「気持ちは分かるけどダメだ。セリカはもうセリカだけのものじゃないんだから。それに、たとえ攻撃が通らなくても所詮は一人。作戦を練れば何とかなるかもしれない」


 セネトは参謀。頭を使うのが彼の役目だ。


「こんな時、お姉ちゃんがいてくれたら……」


 セリカがぼそりと呟く。


「そうだね、レンがいれば……」


 言わずと知れた三兄妹の最高戦力。魔王と剣聖の二つの血を持つ彼女は、もはや強いというより規格外と言う方が相応しい。


(アイシャに居場所だけでも掴んでほしいと頼んでおいたんだけど、結局間に合わなかったな……)


 ラインクルズのような相手にこそ、白兵戦に強いレンの存在が光るのである。それ故に、今この場にレンがいない事が悔やまれる。そもそもベルデ平原からこの戦いまで、敵と状況に合わせて動いてきたに過ぎない。レンの捜索が間に合わなくても仕方のないことであった。


「呼んだか?」


 不意に、二人のすぐ側からそんな声が届く。忘れようはずもない、しばらく会っていなかったとはいえ、ずっと一緒に過ごしてきたのだ。


「レン!? どうしてここに」

「こんな楽しそうな祭りにわてが参加しない訳がないだろう。それに、あいつは母たちとも因縁のある相手だからな。できるならわての手で始末をつけたいのだ」


 まあ本当の所は、アイシャの連絡を受けて慌てて駆け付けただけなんだがな、何て言って少しおどけて見せる所は、いかにも二人のよく知るレンであった。


「さてと、再会を悦ぶのは後にして、早速行ってくる。今の内に挨拶でも交わしておけ」

「……えっ?」


 謎の言葉を残してラインクルズに近寄っていくレン。言葉の意味はすぐに分かった。おそらく最初からレンと共に来ていたのだろう。やや小柄な体格とは不釣り合いなメイスを持った少女がそこにいた。


「ああレン様、なんと凛々しいお姿……。貴女に比べたらおいらなんて、まるで大地にのたうつミミズのよう……」

(うわぁ……)


 レンとの関係は不明だが、とりあえずレンを崇拝している事は確かなようだ。正直あまり関わり合いたいタイプの人種ではない。


「セネト、あの黒髪の少女は?」

「僕のいも……幼馴染です。にわかには信じられないでしょうが、物凄く強いです」

「ふむ……」


 確かににわかには信じられないが、セネトがそう言うのであれば本当なのかもしれない。そんな二律背反がホームズの視線を釘付けにした。

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