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貯まった運で核兵器を  作者: レイジー
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緊急会議

 突然ドレッド頭の男に銃を突きつけた刑事の男ギム。

他4人は突拍子も無い展開に訳が分からないといった表情を見せた。


「思い出したぞ!そのドレッド頭、貴様は国際指名手配犯のゴーアン・イスパルスだな?」

「…」


 ドレッド頭の男は刑事の指示に従う様子は見せなかったが、沈黙というかたちで肯定を現した。


「クソポリ公が…」

「さっさと腹ばいになれ!!そして両手を頭の後ろで組むんだ!!」


 刑事の怒声が強みを増していったため、周りの客も何事かと周りに集まり始めた。

その様子に慌てたオットロが刑事の男に声を掛ける。


「あのぉ~、すみません、ここで争いごとは困ります~。その武器の様なものをしまって下さい~」

「オットロさん、こいつは我々の世界では大犯罪者です!世界中で麻薬を売り捌き、数え切れない人間を死に追いやった男なんです!!」

「あぁ~、そうなんですかぁ~?でもそれならそちらの女性も殺し屋さんの様ですけど~」

「な、何!?」


 刑事の男は拳銃をドレッド頭の男に向けたまま殺し屋の女へ視線を移した。

殺し屋の女は少し眉をひそめ刑事の男を睨んだ。


「とにかくっ、全員動くな!おい貴様!早くしないかっ!お前もだっ!」


 刑事の男は拳銃をドレッド頭男と殺し屋の女2人交互に向けながら大声で怒鳴り続けた。


「あのぉ~、ギムさんでしたよね?お願いします。それを下ろして下さい~」

「そういう訳にはいきません!邪魔立てするのなら貴方も公務執行妨害で逮捕します!!」


 聞く耳を持たない様子のギム刑事に対し、オットロは"仕方ない"といった表情を見せゆっくりとギム刑事の方向へ近付いて行く。


「う、動くな。撃つぞ!!?」


 オットロは至近距離まで近づくと同時にギム刑事が持つ拳銃を上から鷲掴みにした。

そして次の瞬間、オットロの握力により拳銃は粉々に粉砕破壊されてしまった。


「!!?」


 先程殺し屋女の刀をへし折った場面を既に見せ付けられていた5人であったが、今回のことにも同じ様に驚愕の表情を見せていた。


「は~い、揉め事はご自分達の世界に帰ってからお願いしますね~」


 やはりニッコリとそう告げたオットロに対し、5人は再び不気味さを感じていた。


「それでは皆さん、貴重な"運"を使ってのご購入、色々とお悩みなこともあるかと存じます。一度皆さんを地球にお送り致しまして、1週間後に再度お迎えに上がりますので、それまでにどちらの商品をお買い求めになられるかを決めておいてください~」

「待ってくれ、オットロさん、貴方方の世界には関係ないことかもしれないが、この男は麻薬犯だ。そこの女は殺し屋だと言ったな?こんな連中にこんな商品を渡してしまっては私達の世界はお終いだ!どうか考え直してくれ!」

「はぁ~、そういわれましてもぉ~…これも皆さんの権利なので~」

「だいたい"運"と言ったが、それはどんな概念なんだ?我々の共通思念では正しく生きたり人のために生きているものが"徳"という形で蓄積され、自身に恩恵として返ってくる様なものでは無いのか?」

「まぁ、一般的にはそういう捉え方ですね~」

「では何故こんな外道な連中がこんな商品を購入出来る"運"を持っているんだ?」

「そこは神のみぞ知るところですね~。我々の創始者は"運"という見えない要素を数値化に成功したというだけなので~」

「ではその数値化とやらに大きな誤りがあるのだ!」

「一般的に"正しい"や"正義"の基準は人や文化、時代や星等により大きく異なります。"運"を与える神には"神の基準"というものが存在する様です。大きくは今刑事さんが仰った様な基準に沿っていることが殆どですが、細かい部分までは解明されておりません~」

「…だからって」


”ボンッ”


「!!」


 ギム刑事の反論がひと息をついたタイミングで難民少女は元の少女の姿に戻った。


「あ!こ、効果が切れたんですね?」

「はーい。それではこの方の姿も元に戻ったことですし、そろそろ皆さんを元の地球へお送りさせていただきますね~」


 ギム刑事は納得がいかないという表情を浮かべながらも、他4人と共にオットロの誘導に渋々従い建物の外へ出て行った。


「はーい、それでは皆さん、私の背中に手を置いて下さい~」


 5人はオットロの指示に従い手を置いた。

オットロが"テレポート"の言葉を述べると6人を包む景色は一瞬にして5人が見慣れた景色に変貌した。


「はーい、地球に到着致しました~。本日はお付き合いいただき誠にありがとうございました~。それでは1週間後にまたお迎えに上がりますので、引き続き宜しくお願い致します~」


 そう言い残したオットロは再び"テレポート"の言葉を最後にその場から消え去った。

時間にしておよそ1時間程度の出来事ではあったが、その摩訶不思議な内容が5人から言葉を奪っていた。

数秒の沈黙が続いた後、ギム刑事が口を開いた。


「…取り合えず、一旦どこかに集まらないか?」


 ギム刑事提案の元、5人は喫茶店に集まっていた。ひとつのテーブル席を囲って座っている5人、ギム刑事と殺し屋の女、ドレッド頭の麻薬犯はアイスコーヒーを目の前に鋭い目つきで腕組みをしている。

小柄な自殺志願者の学生はオレンジジュースを目の前にしながら膝に手を置き肩をすくめていた。

その隣で難民の少女はオムライスをひたすらがっついている。


「…全く、何が何だか」


 ここでもはやり最初に口を開いたのはギム刑事だった。


「訳分かんねぇ話だが、あれだけ色々見せられちゃぁ、信じるしかねぇだろ…」

「あの女、私の業物の刀を指だけでへし折った、お前の拳銃も。手品やトリックで出来る芸当ではない」

「そ、そうですよね…。本当、色々びっくりしました」

「これ本当に美味しい~、オムライスっていうんだね!」


 1人能天気な難民少女の発言が少し場の空気をまろやかにした。


「よし、話をまとめよう。我々はどうやら多くの"運"を持っているらしい。その"運"を使ってあの"デパートアトランティス"という百貨店で持ち運に応じた商品が購入出来る」

「購入した商品は後に売却も可能。しかし購入時より安くたたかれるため"運"を消費する。慎重な選択が必要という訳だ」

「も、もし使いすぎちゃったらどうなるんでしょう?0になっちゃったら死んじゃうんですかね…?」

「さぁな。だがあの姉ちゃんの言い方からすると寿命やエネルギーを吸い取るもんじゃねぇみてぇだ。あくまで"不運体質になる"ってだけだろ」

「そ、そうか、そうですよね!」

「オイ小僧、お前試してみろよ。全部使い切ってどうなるかってよ」

「えぇぇ、そ、そんな、嫌ですよ!」

「テメェどうせ自殺しようとしてたんだろーが、なら構わねぇだろ!」

「いや、で、でも…」

「止めないか!貴様にそんなこと言う権利はない!」

「はっ」


 刑事の注意にドレッド頭の男は背もたれに腕をかけ首を後方にそらす悪態を見せ付けた。


「なぁ君、名前は?」

「えっ、ヨ、ヨシオです」

「ヨシオ君、どうして自殺なんてしようと思ったんだ?」

「…学校でいじめられてて」

「そうか。学校やご両親には相談したのかい?」

「…言ってません。もし誰かに言いつけたら妹を殺すって脅されてて」

「…そうか、ひどい連中だな」

「それに、いじめられてること、親に知られたくありません…」

「…そうか」


 ギム刑事は真剣で親身な眼差しをヨシオに向けどうしてあげるべきかを考えていたが、そこに殺し屋の女が口を挟み本題を促した。


「おい、今はカウンセリングをしている場合ではない。私達には片付けなければいけない問題があるだろ」

「むぅ…。すまないな、後でちゃんと相談には乗るから」

「い、いえ、大丈夫です。ありがとうございます…」

「取り合えずお互いの名前も知らないのでは話しづらい。まずはお互い自己紹介といこうじゃないか」

「…名前を教えるつもりはない」

「ならニックネームでもいい。私はギム。刑事だ」

「…ギルティ、とでも」


 ぼやくように自身のニックネームを伝える殺し屋の女。


「ふん、"罪"か」

「そうだなぁ~、じゃあ俺ぁ"ドレッド"とでも呼んでもらおうか」

「クズと呼んでやりたいところだがな…」


 麻薬犯の申告に睨みを利かせ言葉を被せるギム刑事。


「"ドレッド"?何それー?」

「このヘアースタイルさぁ、こいつには魂込めてるからなぁ」

「えー、変な頭ー」

「なっ、なんだとこのガキ!!ぶっ殺すぞ!!」

「止めないか!子供に向かって!」

「ちっ!」


 難民の少女にドレッド頭を茶化され激昂するも、再びギム刑事に止められるドレッドと名乗る男。


「あ、あの、僕はそのままヨシオでいいです」

「そうか、君はどうする?」

「んー。じゃあオムライス!」

「はは。よし、それじゃあ本題に入ろう」


 一旦和やかな表情を見せたギム刑事だったが、再び鋭い視線でドレッド、そして殺し屋のギルティを睨み始めた。


「お前達、一体なんの商品を買うつもりだ?」

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